■アレコレ盛り込んだら至極のモダンカスタムに!? 走りが楽しいスクランブラー
トライアンフモーターサイクルズ(以下、トライアンフ)の「Scrambler 1200 XE(スクランブラー1200XE)」は、ストリートからオフロードまで、圧倒的なパフォーマンス発揮するモダンクラシックなスタイリングのスクランブラーモデルです。
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斜めのグリーンライン入った丸みを帯びた燃料タンクは、中央を走る金属ベルトで車体に固定されているかのようで、アルミ製のタンクキャップは60年代のムードを高める意匠……タンクだけでも見応えの塊です。
エンジンは車体左側に大柄なクランクケース、上から見ると6角形の冷却フィンは伝統のトライアンフらしいものだが、その空冷的な意匠ながら、エンジンは水冷になっています。丸みや逆三角形をモチーフにしたカバー類のデザインも、トライアンフを主張するものです。
トライアンフのモデル群の中でも、展開機種が多いのが「モダン・クラシック」ファミリーです。「スクランブラー1200XE」は、その中の「スクランブラー」シリーズで最上位モデルになります。
特徴としては、前後にストロークを250mmに伸ばしたサスペンションを持ち、前輪21インチ、後輪17インチと本格的なオフロードモデルのような足まわりを持っていることです。
それだけに股下(グランドクリアランス)はたっぷりあり、荒れ地に分け入っても“亀の子”状態になる可能性は低そうですし、シリンダー位置の高さで後方までまとめられたエキゾーストは60年代、70年代のスクランブラールックをなぞるモノ。まるで一流にして定番商品になっているアウトドアグッズにも通じる「良さ」を持っています。
シリーズには前後のサスペンションストロークが200mm、シート高が840mmの「スクランブラー1200XC」もありますが、サスペンションだけではなく、スイングアームの長さを両モデルで換えるなど、しっかりとオンロードとオフロード、その両方で性能を愉しむためのこだわりも詰まっているのです。
跨がると、さすがにシートが高い! それでも、車体がスリムなので足はまっすぐ下ろせるので足つき感に不満はありません。スペック的にはシート高870mmとなりますが、世のアドベンチャーバイクのローシート装着モデルにありがちな、シート高は下げられているけど、シート幅が広がり、股関節が開いて足つき感が悪くなるケースよりは全然マシです。
ここは体格により印象が変わる部分ですが、走りの性能を突き詰めた頂点モデルとしての「XE」、少々マイルド仕立ての「XC」という選択も可能です。
ワイドなハンドルルバーやTFTモニターながら、単眼メーター風のシンプルさを持つインパネまわり。スクランブラーという言葉から想起させるネオクラシック感がここにも詰まっています。
しかし「XE」には、6つから選択できるライディングモードに(レイン、ロード、スポーツ、オフロード、オフロードプロ、ユーザー)、オフロードを強く意識したプロモードが含まれます。左スイッチボックスにあるジョイスティックで様々な選択、設定が可能なことや、スマホ連動の通信機能を持つコトなど、最新の装備を持っています。
並列2気筒エンジンは90度位相のクランクシャフトにより、不等間隔爆発のファイアリングオーダーを持っています。サウンドも後輪の“蹴り感”もVツインエンジンのように感じるのはそのため。1200という排気量から想像するより、鼓動感やトルク感はマイルド。回転のスムーズさが乗りやすさにつながる印象です。アシストスリッパークラッチを装備するため左手の操作力も軽く、発進、シフトチェンジ時の操作も苦になりません。
サスペンションストロークが長く、結果的に車体の高い位置に大きなエンジンが載っているため、市街地での低速コーナリングでは車体の重みを感じます。それは速度が20km/h以上になると次第に軽快感へと変わり、長いサスペンションを活かしつつアクセルとブレーキでリズムを取り、走り回ると程なくこのバイクがもつ運動性がけっして鈍重で無いことが解ります。
ワインディングルートでハンドルをグイっとこじるとやや重さが顔を出しますが、自然な旋回性に任せるか、むしろ思い切ってリーンアウトでリズムをとって走るとこれが楽しい! タイヤもしっかりと路面を掴みます。サスペンションも無駄なピッチングがなく安心感があるもので、設計者がしっかりとバランスをとった印象が伝わる出来映えでした。
ブレーキに関してはダートでの使い勝手も意識した印象で、舗装路では初期の制動力はマイルド仕立て。そこから力を入れて制動力を調整するスタイルです。ABSの介入も自然で、このキャラクターに見事に馴染んでいるのです。
最後にダートでの印象を少し。1200ながら開けやすいパワー特性の助けもあり、砂利道でも扱いやすさは抜群です。「オフロードプロ」モードを選択するとリアのABSがカットされ、ロックやハーフロックさせてコーナリング中の向き替えのキッカケを掴むことも簡単。ノーマルタイヤよりもグリップの高いダートタイヤに履き替えてトライしたいな、とも思いました。
左カーブの時、リーンアウトでバイクを寝かし、ニーグリップをするとややふくらはぎにマフラーの熱を感じましたが、ライディングポジションや体格でその印象は変わりそうです。これだけ大きなバイクが狭い林道でも楽しめるなんて! というのが発見でした。
帰り道、舗装路の移動が楽しく、高速道路ではゆとりがある。遠地のダートまで走るとなればこうしたバイクのパッケージは楽しさを拡げてくれる部分です。オフロードを走らなくても、カジュアルなアドベンチャーバイクとして、キャンプエクスプレスとしても、きっと良い仕事をしてくれるに違いありません。
※ ※ ※
トライアンフ「Scrambler 1200 XE」(2019年型)の価格(消費税10%込み)は205万6400円です。2021年7月には新型が登場予定となっています。
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