欧州では2035年以降、内燃機関による新車販売の原則禁止を打ち出し、日本政府も2035年までに新車販売で電動車100%化の実現を目指している。もはやクルマの電動化は避けられないものとなったが、一方実現への課題も多い。そんな中、いま注目されているのPHEV車だ。そこでプロのレーシングドライバーとしてクルマを知り尽くした中谷明彦氏が、PHEVにいま必要とされることを語ってくれた!
文:中谷明彦/画像:ステランティス、三菱、ベストカーWeb編集部
【画像ギャラリー】ジープ・ラングラーのPHEVモデル4xeがなにげにスゴイ!! PHEV車はこれからのクルマ界における最終解になるか!? (17枚)
過渡期の技術かと思いきや最終解!?
自動車業界は電動化の大波に飲み込まれ、各メーカーはこぞってBEV(バッテリー電気自動車)を市場投入している。欧州では2035年以降、内燃機関の新車販売を原則禁止とする方針が打ち出され、政治的にも「EVシフト」は不可避の道筋とされつつある。
だが、多くのユーザーは、それを単純に歓迎していない。 理由は明快だ。EVは確かに走行中にCO2を排出しないが、その航続距離、充電インフラ、バッテリーの製造・廃棄の環境負荷など、課題が山積しているのは誰の目にも明らかだからだ。
特に乗用車のように行き先が一定でなく、長距離・多用途の使用をも前提とするカテゴリーにおいては、BEV一本槍では本質的な解決に至らない。そこで浮上するのがPHEVである。PHEVはしばしば「過渡期の技術」と位置づけられるが、内燃機関と電動化の利点を高次元で融合させた最終解となり得る資質がある。
しかし「発展途上」な部分も……
実は現在、ジープ・ラングラー4xe(フォー・バイ・イー)を愛車として日常的に走らせている。伝統的なラダーフレームに基づく本格的オフローダーに、PHEVシステムを組み合わせるという大胆な試みは、初めて試乗した時から好印象を受けていた。 電動モーターの瞬発力は、低速域でのトラクション確保に驚くほど有効である。
急坂での発進や、岩場を這い上がるようなオフロード走破において、従来の内燃機関単体では難しかった「瞬時のトルクピックアップレスポンス」を、モーターが見事に補完する。加えて、街中ではEV走行が大半を担い、静粛性と滑らかさを享受できる。
しかし一方で、PHEVというシステムがまだ「発展途上」であることも理解している。例えば、EV航続距離は国産や欧州勢のPHEV最新モデルが100km超えを実現している一方で、ラングラーPHEVは40km前後と、やや物足りない。
バッテリー容量を増やせば確かに航続距離は延びるが、その代償として重量増加とスペース効率の低下、コストアップは避けられない。オフロード性能を犠牲にせず、効率的にEV走行を実現するには、単なる容量増大とは別のアプローチが必要だ。
目指すべきは「小型化」!?
欧州では、ボルボやBMW、メルセデスといったプレミアムブランドがPHEVの航続距離拡大を進めている。日本勢では三菱アウトランダーPHEVが先駆者として知られるが、こちらもバッテリー容量を増やし、効率を高めながら進化してきた。「数値上のEV距離」を伸ばすことはマーケティング的に有効だ。
しかし、それが必ずしもユーザーの支持率を向上させるわけではない。航続距離よりも効率性やドライバビリティ、実用性の最適化が優先されるべきだということだ。特にSUVやクロスカントリー車のように多用途なジャンルにおいては、単純なEV走行距離の長短以上に、必要な時に必要な駆動力をどう取り出せるかが本質となる。
そこで望むべき次世代PHEVは、まずバッテリーの小型・高効率化を出発点とする。容量をいたずらに増やすのではなく、セル効率の向上や熱マネジメントの進化によって、現状の半分程度の容量でも実用に耐え得る設計を目指すべきだ。
重要なのは制御の熟練度向上にあり
モーターは出力を増大し、これに組み合わせる内燃機関は2リッター級のディーゼルターボが理想的だ。低回転から高トルクを発生し、モーターとの相乗効果でSUVに求められる牽引力や悪路走破力を確保する。
さらに、パワートレーンは縦置きレイアウトとし、メカニカル4WDを組み合わせる。電子制御によるオンデマンドAWDも制御次第では悪くないが、本格クロカン系SUVには伝統的な機械式が持つ信頼性とダイレクト感が不可欠だ。
そこにモーターの緻密な制御を重ねれば、従来の内燃SUVを凌駕する駆動力特性が得られるはずである。
現行ラングラーPHEVで特筆すべきは、ZF製8速ATとの絶妙な組み合わせだ。ガソリンターボエンジンながらモーターのトルクを滑らかに繋ぎ、加減速に違和感がない。Dレンジで流していると、内燃機関とモーターの切り替わりに気づかないほど自然だ。
これは、単なるスペック以上にキャリブレーション技術の高さを物語っている。次世代機においても、こうした制御の熟成度をさらに高めることが重要だ。トルクの繋がりにわずかな段差が残る領域を消し込み、回生制御との調和を図ることで走行フィールは飛躍的に向上する。
PHEVに高価な急速充電は果たして必要か?
充電に関していうと、PHEV車に急速充電システムを搭載する必要性があるのか懐疑的である。SUVユーザーが長距離移動を頻繁に行うとはいえ、現実的には家庭用200Vでの充電が大半を占める。むしろ重要なのは、エンジンによるチャージモードの進化だ。
具体的には、3リッター程度の燃料消費で走行中に短時間でフルチャージを可能とするシステムを構築したい。これにより、EV走行モードの実用性、汎用性は大幅に向上する。現行のほとんどのPHEV車はチャージモードを備えているので、高価な急速充電機能を搭載する必要が本当にあるのか。
山岳地、山奥など僻地に急速充電施設が満遍なく設置されない限りその必要性は特にクロカンSUVのPHEVには必要ない。実際、ラングラーPHEVは未装備でコスト高騰を抑え、トラブル回避にも貢献させる。
さらに、バッテリー充放電サイクルを最適化することでバッテリー劣化を抑制し、寿命を延ばすことがコストのかさむバッテリー交換頻度を減らし、ユーザーだけでなくメーカーにとっても大きなメリットとなるのはBEVと同様だ。
走りを自在にドライバーが選べるならなおよし
もう一つ重要なのは、ドライバーインターフェースの在り方である。現行PHEVの多くは、モード切り替えがコンソール上のボタンに限られている。理想的にはステアリング上でEVモード、バッテリーセーブ、チャージモードを瞬時に切り替えられる操作系が備わる事を望む。
同様に、回生ブレーキの強度やコースティング領域もパドルやステアリングで調整できれば理想的だ。
これにより、ワインディングでワンペダルによりペダル踏み替え時間をなくし瞬時で減速回生することで積極的に荷重移動を使いこなす走り、高速巡航でコースティングさせ効率を重視する走り、街中で快適なトルク特性を引き出し信号のストップ&ゴーでもストレスを感じさせない走り、などを自在にドライバーが選び取れる。
効率・制御・ドライバビリティの三位一体こそ求められる
PHEVの進化は「バッテリー容量競争」ではない。重要なのは、効率性、制御の自由度、ドライバビリティである。SUVとしての本分を守りながら、電動化の恩恵を最大限に引き出す。そのためには、小さく効率の良いバッテリー、高出力モーター、ディーゼルターボとの縦置きパワートレイン、メカニカル4WDという組み合わせが最適解になる。
そして忘れてはならないのは、ユーザーが自らの意思でエネルギーマネジメントを操る「主体性」である。PHEVが真に完成するのは、クルマが電気に縛られるのではなく、ドライバーが電気を自在に使いこなせる段階に達した時だ。
ラングラーPHEVに乗ることでPHEVが単なる過渡的技術ではなく、車の未来を切り拓く可能性を持つことに気付かされる。EV航続距離という単一の数値に縛られることなく、効率・制御・ドライバビリティの三位一体を実現すること。
そして地球温暖化や大気汚染につながる物質を排出させない新燃料による内燃機関と組み合わせることこそが、次世代PHEVに課せられる使命であると言える。 PHEVはEVか内燃機関かという二項対立を超え、両者の利点を調和させる「真の解答」となり得る。
その理想像を追い求めることが自動車メーカーに求められているのではないだろうか。
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みんなのコメント
トヨタの最初のPHEVは、「充電させるために」モーター距離が20数キロしかなかったはず。が、EUがCO2排出量計算に、PHEVに下駄を履かせる計算式を作ったのでおかしくなった。モーター走行距離を長いほうが有利になってしまった。
PHEVには、ユーザーにもっと頻繁に充電させる技術的対策が必要だろう。でないと、何のための電動化となってしまう。
ただ、carviewのコメントなんかだと、日本のユーザーは真面目に頻繁に充電をしているみたいだけど。