一般的な乗用車は1日の大半を駐車場で過ごしている。その事実に着目したシャープが、EV(電気自動車)コンセプトカー「LDK+」を提案する。これまで家電メーカーとして培った技術を駆使し、止まっている時間を豊かな生活空間へと変える。モビリティの新たな価値を創造する画期的なプロジェクトとは?
SHARP LDK+|シャープ エルディーケープラス
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一般的な乗用車は1日の大半を駐車場で過ごしている。その事実に着目したシャープが、EV(電気自動車)コンセプトカー「LDK+」を提案する。これまで家電メーカーとして培った技術を駆使し、止まっている時間を豊かな生活空間へと変える。モビリティの新たな価値を創造する画期的なプロジェクトとは?
Text by YAMAGU Koichi
リビングルームの拡張空間としてのクルマ
私たちは長らく、クルマを移動手段として捉えてきた。加速力、ハンドリング性能、快適性──。自動車メーカーが競い合ってきた価値基準は、常に「走る」という機能を中心に据えていた。
平均的な乗用車が実際に走行している時間は、1日のうちわずか5%程度だというデータがある。残りの95%の時間、クルマは駐車場や車庫で「止まっている」時間なのだ。
この「止まっている時間」に着目し、クルマの価値の転換を図る興味深い提案が登場した。家電メーカーのシャープが発表したBEV(電気自動車)のコンセプトモデル「LDK+」(エルディーケープラス)は、クルマの可能性を広げる意欲的な提案として注目を集めている。
「LDK+」の最大の特徴は、その名が示す通り、クルマを「リビングルームの拡張空間」として捉え直したことにある。後部座席は後ろ向きに回転し、両サイドの窓には液晶シャッターを搭載。ドアを閉めた瞬間、車内は落ち着いたプライベート空間へと生まれ変わる。
65V型の大型ディスプレイと格納式テーブルを備えた車内は、シアタールームやリモートワークスペース、子どもの遊び場など、多彩な用途に対応する。まさに「もう一室」を手に入れるような体験を提供するのだ。
SHARP LDK+|シャープ エルディーケープラスvia Web Magazine OPENERS
注目すべきは、単なる空間の転用にとどまらない点だ。シャープは独自のAI技術「CE-LLM(Communication Edge-LLM)」を活用し、住空間、人、エネルギーの3つの要素を有機的につなぐことで、より豊かな暮らしの実現を目指している。
家電を通じて学習したユーザーの好みに応じて、空調や照明を自動調節する機能や、家族とのシームレスなコミュニケーションを可能にする大画面インターフェース。さらに、車載のバッテリーと太陽光発電システムを家全体のエネルギーマネジメントと連携させることで、環境に配慮しながら快適な暮らしを実現する。
「LDK+」の開発には、シャープの親会社である台湾のフォックスコンが持つEVプラットフォームの技術が活用されている。しかし、シャープが目指すのは、既存の自動車メーカーとの性能競争ではない。
同社の沖津雅浩社長は「シャープは人々の生活空間を主な事業領域としており、モビリティもひとつの生活空間としてとらえ、シャープらしい新たな価値創出に挑戦していく」と語る。この言葉には、クルマという存在を「移動手段」から「生活空間」へと転換させようとする、明確な意思が込められている。
主なターゲットは戸建て住宅のオーナー。開発チームは社内モニタリングを通じて「もう一室あったら」という潜在的なニーズを丹念に拾い上げ、その解決策として「LDK+」を構想したという。
95%の「止まっている時間」に着目し、そこに新しい価値を見出そうとするシャープの試みは、モビリティの未来に対する私たちの想像力を大きく広げる。それは同時に、テクノロジーの進化が既存の常識をいかに塗り替えていくのかを示す、象徴的な例となるだろう。
移動手段としてのクルマから、暮らしを豊かにする空間としてのクルマへ。シャープが投げかけたこの大胆な価値転換は、これからのモビリティのあり方を考える上で、重要な示唆を与えてくれる。
EV(電気自動車)コンセプトモデル「LDK+」紹介動画:シャープvia www.youtube.com
シャープ
sharp_ev@mail.sharp
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みんなのコメント
自宅で使う前提みたいだけど、車通勤だと今でも昼休み・車の中で過ごす人います。
車通勤の人が休憩時間等に使う需要あると思います。車通勤だと事故等により渋滞の恐れがあるので早め出勤当たり前。会社の駐車場で出勤時間まで過ごす人もいるのでは?
テスラはロボタクシーにも搭載する自動運転ソフトが完成すると、この使っていない時間に自動運転ソフトを導入したテスラ車がロボタクシーとして、自らの購入金の一部を稼ぐことができるようになるといっていますね。