東京・お台場エリアにある都市型EVカート場『シティサーキット東京ベイ』。開業から1年半が経ったが、既に様々なモータースポーツイベントに活用されているだけでなく、都心で気軽に楽しめるアクティビティとして一般のメディアにも取り上げられるようになっている。
サーキットの企画・運営を手掛けているのは、トヨタ系のレーシングチーム、そして市販車チューナーとして知られるトムスだが、メーカーの垣根を越えて様々なチームや企業が参画している。同社が共同オーガナイザーを務める全日本カート選手権EV部門には、昨年はARTA、今年はNAKAJIMA RACINGと、ホンダ系チームも参戦。トムスの名前を前面に出していないのも、それを狙ってのことだ。
■キーワードは”映え”? レース好きじゃなくても楽しめるEVカート・サーキットを目指して……パレットタウン跡地に誕生したシティサーキットが見据える戦略
トムスがEVカートとEVカート場を使ってモータースポーツ振興に取り組むのには、いくつかの理由がある。
まずモータースポーツ業界においてカートは、プロのレーシングドライバーになるための登竜門であり、子供から大人までモータースポーツの魅力を手軽に体験できるものでもある。そのため、モータースポーツのすそ野を広げる上ではカートを盛り上げることが最適と言える。
ただカートの競技人口は、バブル期のF1ブームに乗じて増加したものの、現在ではピークの30年前(1995年)と比べてライセンス発行数が約半減。それに伴って競技会の数も激減してしまっている。
そこに歯止めをかけるべく、トムスは都市型のEVカート場を通して、これまで以上に多くの層が気軽にカートを楽しめる環境を整えている。またカートレース参戦、そして4輪レースステップアップを目指す上での障壁の高さにもアプローチしており、全日本カートEV部門には54万円(エントリーフィーとスーツ作成代)+諸経費でフル参戦できる上、チャンピオンは通常であれば年間2500万円ほどかかると言われるFIA F4への参戦サポートも受けられるようになっている。
■EVカート場拡大計画は進行中
現状トムスのEVカート場は東京ベイ1拠点のみとなっているが、これを全国に拡大する計画も着々と進んでいる。
2027年春には、広島市・広島湾沿いの観音新町に、トムス関連会社が手掛ける『ひろしまモビリティワールド』が開業予定。約11ヘクタール(東京ドーム2.3個分)の広大な土地には、クルマ好き・バイク好きが集えるディーラー・ショップ、ホテル・レストラン・温浴施設といった憩いの場、さらにエンタメ施設などが作られ、そこにEVカート場も併設される予定だ。
「ひろしまモビリティワールドは、広さがシティサーキット東京ベイの11倍ほどになります。ですから開業時には日本最大のEVカート場、屋根付きカート場になると思います」
そう語るのは、トムスの谷本勲社長。ひろしまモビリティワールドはシティサーキットの第2弾という位置付けになるのかと尋ねると、「正直もういくつか計画がある」として、広島以外で別のサーキットが先に開業する可能性もほのめかした。なお、大阪・森之宮では2025年10月までの期間限定ではあるが、『e METRO MOBILITY TOWN』というテーマパークがオープンしており、そこでもトムスが手掛けるEVカートが楽しめるようになっている。
■進める新規開拓
このように拠点拡大の話も出てきているが、トムスはそれと並行してシティサーキット東京でカートを楽しむ層の新規開拓に取り組んでいる。既にインバウンド客や貸切利用など多くの需要を集めているというシティサーキットだが、TV番組に登場したり、人気YouTuberとコラボしたりと、外向けの発信を行なっている。
最近では、主に料理動画などを投稿するチャンネル登録者171万人(5月6日時点)のYouTubeチャンネル『ひみつ基地。』とコラボ。彼らがカートを楽しむ動画がアップされただけではなく、シティサーキットの敷地内で行なわれたキッチンカーイベントには800人ほどのひみつ基地。ファンが集まり、その中の1割程度はその流れでカートを初体験したのだという。
「ひみつ基地。のおふたりが『面白いよ』と言ってくださったこともあり、モータースポーツを知らない人たちがこうやって初めてカートに乗ってくれた……これはすごくありがたいことでした」と谷本社長は目を細める。
当然トムスとしても各所にアプローチをかけているというが、谷本社長曰く最近では先方からオファーが来るケースもあるという。
「認知が広がっておりますので、先方側から『番組で使わせてほしい』といった引き合いも確実に増えています」
そして今トムスが特にターゲットとしている顧客層は、10代・20代の若者。「例えば学生の遊び場のひとつとして、放課後や休日にボウリング場やカラオケに行くのと同じノリになれば」と谷本社長は言う。
「ですから、滑るカートを使ってカートサッカーをするといった、新しいアクティビティも考えています」
他にも、2025年秋にはBリーグに参戦するアルバルク東京の新アリーナ『トヨタアリーナ東京』がシティサーキットのすぐ近くにオープンするため、バスケットボールファンを取り込むチャンスでもある。既にトヨタとも、連携に関する話し合いが進んでいるという。
■公道レース開催にはハードルも「障壁は下がってきている」
シティサーキットで5月初めに行なわれた全日本カートEV部門の体制発表会では、将来的な公道でのレース開催を模索していることも語られた。既にいくつかの自治体が関心を示しているようだが、開催に向けてハードルがあるのは確かだろう。
ネックとなっているのは警察との交渉かと尋ねると、谷本社長は「その手前の段階ですね」と語る。
「皆さんから『こういうことを公道で出来ればいいよね』というお話をふんわりといただくことがあるのですが、例えば主催を誰がするのかといったことや、競技会にするのか、全日本選手権の冠をつけるのか、はたまたエキシビションにするのか、会場設営などの費用はどこが負担するのか……そういったところはまだ詰まっていかないですね」
「コンテンツとしては見て面白いと思っています。ですから私たちが望むのは、何か大きいイベントの目玉コンテンツのひとつとして(EVカートを)位置付けしてもらえることです。そうするとお金も回りやすいのかなと思っています」
ただその一方で、公道レースの開催する上での障壁は以前よりも下がっている実感があると谷本社長は言う。
「私がJAFの委員をやっていて感じたのは、最近はフォーミュラEやラリーしかり、公道レースの障壁がだいぶ下がったということです」
「要するに手順をちゃんと踏めば、関係者の同意も得られやすいということです。他カテゴリーでも実績が増えていますので、一時代前から比べるとものすごく障壁が下がってきていると思います」
モータースポーツの次世代を築き上げる上で非常に重要な役割を果たしてくれそうなEVカート。シティサーキットの施策には引き続き注目していきたい。
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