ルイ・ヴィトンにグッチも! サーキットを席巻するラグジュアリー資本
先日開催されたF1(フォーミュラワン)のモナコGP。F1カレンダーで最も華やかとされるこの1戦は、レースの緊張感とはまた別の熱気に包まれていました。目を惹いたのは、マシンやドライバーだけではありません。コースサイドに掲げられるルイ・ヴィトンのロゴ、表彰台に置かれたトロフィートランク、表彰式で繰り広げられるドライバーたちによるシャンパンシャワー……そこには、世界で最も洗練された社交場の姿がありました。
【画像】超カッコいい! ハイブランドが続々と進出しているF1の熱き戦いを写真で見る(20枚)
ここへきて、世界最高峰のハイブランドが次々とF1へ本格参入しているのをご存じでしょうか? これまでF1といえば、そのスポンサーは自動車やIT、エネルギー関連中心でした。そんなスポンサー図式を塗り替えるラグジュアリー資本の台頭は、現代のグローバル・マーケティングにおいてどのような意味を持っているのでしょう? 高級ブランドがF1というプラットフォームを選ぶビジネス的な側面に迫ります。
モータースポーツの最高峰であるF1のパドックが、これまで以上に洗練された“ファッションのキャットウォーク”へと変貌を遂げつつあります。
近年、F1におけるハイブランドの存在感は目を見張るものがあります。LVMH(モエ・ヘネシー・ルイ・ヴィトン)グループがF1と10年間のグローバルパートナーシップを締結。その規模は総額10億ドル(現在のレートで約1600億円)級とウワサされています。これにより、ルイ・ヴィトン、タグ・ホイヤー、モエ・エ・シャンドンなどがサーキットをジャック。表彰式では特製のトロフィートランクが贈られるなど、ブランドの世界観をレースの各シーンにシンクロさせています。
さらに、ケリング・グループを代表するブランドのグッチがアルピーヌチームのタイトルスポンサーに名乗りを上げ、2027年シーズンから「グッチ・レーシング・アルピーヌ」として参戦することが発表されたことも記憶に新しいところです。
アルピーヌのエグゼクティブ・アドバイザーであるフラビオ・ブリアトーレ氏は「このクラスのブランドとタイトルパートナーを組めて誇りに思う」と話していますが、ハイブランドがチームのタイトルスポンサーに就任するのはF1のステータスが上がった証拠でしょう。このように、F1はいまや、最高峰のラグジュアリー・エンターテインメントとしての地位を確固たるものにしています。
オイルの匂いが漂うモータースポーツの世界に、なぜパリやミラノの洗練されたハイブランドがこぞって巨費を投じるのでしょうか? そこには現代のライフスタイルに合わせた明確な戦略が存在します。
かつてのF1は、コアなレースファンが楽しむ専門的なスポーツという側面が強かったのに対し、近年、そのイメージが激変しています。きっかけは、Netflixのドキュメンタリー番組『Drive to Survive(栄光のグランプリ)』の世界的ヒットです。
これにより、これまでレースに興味のなかった若年層や女性ファンが爆発的に増加。F1自体が単なるレースではなく、ファッション、音楽、エンターテインメントが融合した世界最大のポップカルチャーイベントとなったのです。いつの時代もトレンドセッターでありたいハイブランドにとって、F1が最高の舞台となったことは間違いありません。
また、アメリカ市場の開拓と若年層への圧倒的なアプローチ力も現代F1の見逃せない要素です。
ラグジュアリーブランドにとって、購買力の高い若年層(Z世代やミレニアルズの富裕層予備軍)の新規開拓は最重要課題。その点、現在のF1は、マイアミ、ラスベガス、オースティンとアメリカ国内で3レースが開催されるほど、北米での人気が上昇しています。
アメリカの若者やセレブリティたちの間でF1が“クールなステータス”となった今、ブランド側はF1を通じて、一気にターゲット層へアプローチできるようになったのです。
そして、クラフトマンシップとテクノロジーが融合したF1グランプリは、ハイブランドの世界観と好相性であることも見逃せません。
ハイブランドがパートナーシップを結ぶ際、最も重視するのがブランドの“格”やストーリーとの親和性。F1が持つ「1000分の1秒を競う精密さ」や「最先端のテクノロジー」、「技術者たちの飽くなきこだわり」は、高級時計のムーブメントや最高級バッグの仕立て、最高峰のワインづくりに共通する職人技(サヴォアフェール)やエクセレンス(卓越性)とシンクロします。ストーリーに説得力があるからこそ、F1へのハイブランド進出をファンも自然に受け入れられるのです。
SNS時代の新しいエンタメ! パドックを舞台にした最先端プロモーション
ここへきて、F1の公式SNSや各チームのアカウント、そして著名なインフルエンサーたちの投稿において、サーキットのピットやパドックを舞台とするスタイリッシュな写真やショート動画を目にする機会が増えています。
一見すると、これまでのモータースポーツの常識からはかけ離れたプロモーションですが、これが現代のデジタルマーケティングにおける、最も効率的な正解となっているのです。
現在、ラグジュアリーブランドが展開するデジタル戦略では、数百万人のフォロワーを持つファッション系インフルエンサーやセレブリティが発信する15秒のショート動画や写真が、従来のテレビCMや看板広告を上回る爆発的なインプレッション(閲覧数)をマークしています。
インフルエンサーがサーキットのパドックを歩き、チームのガレージでヘッドホンを着用してレースの緊迫感を体感する姿をスタイリッシュに切り取ることで、「F1は今、世界で最もオシャレでエキサイティングな場所」というイメージが世界中に瞬時に拡散されます。
これにより、レースのレギュレーションを詳しく知らないライト層に対しても、「あの華やかな世界に触れてみたい」、「あのブランドを身にまとってみたい」という憧れを強力に植えつけることに成功しているのです。
現在、F1グランプリを運営するリバティ・メディア、そして各チームの首脳陣たちは、F1を純粋なスポーツから、世界中の人々が熱狂する巨大なエンターテインメント・プラットフォームへと意識的にアップデートしています。
新たに流入してきたファンたちは、現在のレースをとてもエキサイティングに楽しんでいる模様。マクラーレンチームのCEOであるザク・ブラウンも、そうした状況を歓迎するなど、より広い大衆を巻き込むことでビジネスを拡大するサイクルに入っています。
目の肥えたコアなファンが楽しむテクノロジー戦や、ヒリヒリするような戦略の面白さはそのままに、ハイブランドの持つ華やかさやエンタメ性を掛け合わせることで、現代のF1は他のスポーツにはないオンリーワンのラグジュアリー・スポーツとしての地位を確立したのです。
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命がけで戦うドライバーの凄みや最先端テクノロジーといった、F1本来の魅力があるからこそ、ハイブランドの華やかな世界観やインフルエンサーを起用したSNSプロモーションも、うわべの広告に終わらず本物ならではの輝きを放ちます。
伝統的なモータースポーツの魅力と、最先端のグローバル・マーケティングが融合した現代のF1。サーキットが世界で最も華やかな社交場であり続ける限り、ハイブランドとの蜜月関係は今後も進化を遂げていきそうです。(VAGUE編集部)
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