ホンダN-BOXが他社車を圧倒して爆売れしているなか、その派生車である「N-BOXスラッシュ」が、2020年2月をもって生産終了となった。
初代N-BOXのルーフを下げた独特なデザインに加え、インテリアにもこだわったスペシャリティ―カーとして登場し、デビュー当時は大いに話題となったクルマだ。
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クルマとしての出来も良く、もっと売れてもおかしくないクルマであるN-BOXスラッシュだが、なぜ消滅することになってしまったのだろうか。
文:吉川賢一、写真:ホンダ
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N-BOXスラッシュはどんなクルマだった?
N-BOXスラッシュ(ツートンカラー/ミラノレッド&ホワイト)
N-BOXスラッシュが登場したのは2014年12月。すでに人気モデルへ成長していた初代N-BOX(2012年~)を、スタイリッシュかつ高級志向にふったモデルとして登場した。
フロントバンパーまわりは初代N-BOXそのものであったが、N-BOXよりも110mm全高を下げ、リアドアはスライドドアではなくヒンジ式とし、ドアノブをガラス側に配置してブラックアウト化。
なだらかに後ろへ傾斜していくルーフのラインによって、軽トールワゴンでありながら、クーペのような雰囲気をもっていた。
インテリアにもこだわっていた。メーカーオプションで設定されていたインテリアカラーパッケージが特徴的で、アメリカンな「ダイナースタイル」、開放感あふれるサーフスタイルの「グライドスタイル」、落ち着いた風合いの「セッションスタイル」など、こだわりの強い複数のモチーフが用意されていた。
グライドスタイル(水色とベージュで彩られたデザイン)
インテリアやシート表皮、ステアリングのグリップ部分のカラーを変えたり、模様を足すなどして、世界観を作り上げていた。
まるでアフターマーケットのカスタマイズオーナーが、趣味で作り込んだようなスタイルであった。
他にも、8スピーカー+サブウーファーの重低音を利かせた迫力のあるサウンドをもたらす、メーカーオプションの「サウンドマッピングシステム」なども魅力的だった。
ホンダの商品企画担当者は、友人や恋人たちがステキな音楽を流しながら、夜の街をドライブするような使い方をイメージしていたのだろう。
N-BOXスラッシュ コンセプトスケッチ
失速した最大敗因はホンダの愛情不足?
後席の窓の狭さや、信号待ちの際に信号機が見えにくいルーフ、ホンダセンシングといった最新の先進運転支援系がない、などの弱点はあったものの、N-BOXスラッシュにはそれらの弱点を十分にカバーしてくれる魅力があり、このクルマでしか得られない独特の雰囲気をもったクルマであった。
ではなぜ、失速したのであろうか。その理由は2つある。
まず一つ目。N-BOXスラッシュは、生涯で2度のマイナーチェンジを行った。1度目はデビュー後1年目の2015年12月、2度目は2018年1月。
この他にも、装備の小変更や、ボディカラーを変えた特別仕様車を、割と最近まで用意しており、良く面倒をかけられたクルマのようにも思える。
特別仕様車 INDIE ROCK STYLE(2018.7)
しかし、N-BOXスラッシュは、N-BOXが2代目へとモデルチェンジをした2017年8月以降も、初代N-BOXをベースのまま、2020年2月まで販売継続されていた。つまり、クルマの大切なフロントマスクが初代のまま継続されていたのだ。
本来ならば、派生車であるN-BOXスラッシュも、ベースモデル更新に合わせて更新されるところだが、N-BOXスラッシュのボディは専用設計であるため、設計や金型製作など、何もかもが新設となる。
ホンダとしては、さほど売れていないクルマへの新規投資はできなかったのであろう。軽自動車の平均モデルチェンジサイクルは6年ちょっとと、極めて早い。
モデルチェンジされず、登場からすでに6年経過しようとしているN-BOXスラッシュは、賞味期限切れであったのだ。
N-BOXは2011年に誕生し、2017年にフルモデルチェンジした。(写真は現行型N-BOX)
2つ目の理由は、N-BOXスラッシュを購入したいと思う顧客に、一通り行き渡ってしまった、ということにあると考えられる。癖の強いクルマであるため、限られた客層となることは容易に想像つく。
2014年ごろに購入したN-BOXスラッシュユーザーが、また全く同じ型のクルマに買い替える、なんてことは、考えにくい。
せめて、フロントマスクやヘッドライト周りだけでも変更ができていれば、買い替え需要にミートしたかもしれないが、先述したように、変更には莫大なコストがかかる。
顧客層を増やすことができず、買い替え需要にも対応できない。N-BOXスラッシュに残された道はなかったのだ。
まとめ
N-BOXスラッシュは、クルマのコンセプトやクルマの作りは素晴らしく、大変魅力的なクルマであった。
文中でご紹介したような魅力的なオプションパッケージを足していくと、軽々200万を超えるほどにやや割高なクルマであったが、実際、購入者の殆どが、インテリアカラーパッケージを選択している。
台数が多くないことも、希少価値のあるクルマとして、むしろ好ましく感じられるだろう。一代限りで消えてしまうのは、非常に惜しいクルマだ。
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