電動ファン付き「最速」EV 公道向けに生産決定
英国の新興自動車メーカー、マクマートリー・オートモーティブが、1人乗りEV「スピアリング」の公道向けモデルを発売することが明らかになった。
【画像】小さくても速さは衝撃的!電動ファンカー【マクマートリー・スピアリングを他の高速EVと写真で比較】 全86枚
このスピアリングは、強制的にダウンフォースを発生させる電動ファンと、地面に密着するようなボディスカートが特徴的なスポーツカーだ。コンパクトながら、0-97km/h加速1.5秒、サーキットの記録タイムを塗り替える(後述)ほどのパフォーマンスを秘めている。
AUTOCARの独占インタビューに応じたマクマートリーのマネージング・ディレクター、トーマス・イェーツは、これと同等のパワーを持つ公道モデルを生産すると明かした。
「ロンドンの中心部を運転し、そのままサーキットに持ち込めるクルマを提供したいのです」とイェーツは話す。
「スピードバンプ(クルマを減速させる段差)を超えるときなどは決して快適ではありませんが、そこは重要なポイントではありません。重要なのは、この刺激的でコンパクトなクルマが、どんなサーキットでも最速になれるということです」
「いくつかの点ではまだ初期段階ですが、プロトタイプは完全に動作します。このサーキットモデルを公道向けモデルにするうえで、どんな微調整が必要かを検討しているところですが、できる限り多くの部分を残しておきたいと考えています」
イェーツによると、非常に限られた台数のみが販売される限定生産モデルとなり、価格も「1億円以上」になるという。
驚異的なダウンフォース 無駄のないデザイン
スピアリングに搭載されている電動ファンは、1978年のブラバムのF1マシン「BT46」からインスピレーションを得ている。ファンを使用すると、停止状態でも2000kgのダウンフォースを発生するという。これは、240km/hで走行するF1マシンよりも大きい数値だ。ファンは公道向けモデルにも搭載される見込みだが、サーキット走行モードでのみ使用できるようだ。
性能諸元は明らかにされていないが、パワーウェイトレシオ(出力重量比)は1トンあたり1014psとされている。コックピットに60kWhのバッテリーを積み、複数の電気モーターを駆動するとのことだ。
公道モデルではエアロパーツを減らし、ヘッドライトやワイパーを追加するなど、法律に適合するようさまざまな改良が施されるという。
イェーツはまた、次のモデルについても言及し、スピアリングと同様のスピード重視のデザインになると語った。
「次はもっと小さくなります。このクルマ(スピアリング)では、無駄なものが一切ない、コンパクトで軽量なドライビング・エクスペリエンスを実現することが目的でした。この方向性はずっと守っていきたいですね」
「多くの人に『2シーターは作るのか』と訊かれますが、2シーターは世の中にたくさんあります。今のところ、当社は余分なスペースがない素晴らしいクルマを作っていくつもりです」
スピアリングの公道向けモデルの発売日は未定だが、すでに予約は可能とのこと。
ヒルクライム記録更新 わずか9.0秒で300km/hに
マクマートリー・スピアリングは6月26日、英国のグッドウッド・サーキットにおけるヒルクライムで39秒08というタイムを叩き出し、最速記録を更新した。これは、2019年のフォルクスワーゲンID.Rより0.8秒短いタイムである。
元F1ドライバーのマックス・チルトンがハンドルを握り、26日午後に行われた公式タイムアタックに挑んだ。グッドウッド・サーキットでは、23日から26日にかけて英国最大級の自動車イベント「グッドウッド・フェスティバル・オブ・スピード」が開催されていた。
マクマートリーは前週、スピアリングで記録更新を目指すと発表。全長わずか3200mm、全幅1500mmというサイズは、グッドウッドのタイトなコースで優位に働いた。同日のタイムアタックでは、最高出力2000psのフォード・スーパーバン4、ポルシェGT4 Eパフォーマンス(同1087ps)も出走したが、最終的にスピアリングがトップに立つことになった。
マクマートリーは、スペアリングの詳細をまだ明らかにしていないが、1000kgを下回る車重に1000ps以上のパワーを実現し、ブガッティ・シロンよりも40%優れたパワーウエイトレシオを実現すると述べている。その結果、0-300km/hをわずか9.0秒で駆け抜けるという。
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