この記事をまとめると
■BMW Individualは豊富な特別仕様を用意するオーダーメイドプログラム
【衝撃】高級車の超高額オプションはクルマが買えるほどの価格!
■500色超のカラーなど内外装は素材やステッチまで細かくオーダーできる
■仕様を決める時間そのものもブランド体験として提供する狙いだ
単なるオーダーメイドを超えたスペシャルプログラム
BMWといえばモータースポーツを原点とする高性能車メーカーというイメージが強いが、じつはいくつもの顔をもっている。1992年から展開する「BMW Individual」プログラムもそのひとつだ。
これは一般的な意味での「オプション選択」ではない。カタログには載っていない特別なボディカラーや、ワンランク上の本革素材など、工場の生産ラインで対応できる範囲で顧客ひとりひとりの希望を形にするプログラムだ。その規模は、BMW公式サイトのスペシャル・ペイント・ビジュアライザーサイトで確認すると一目瞭然で、500色を超えるカラーバリエーションが用意されている。
驚くべきはその品質管理で、これだけのカラー数があるにもかかわらず、すべての色が量産カタログ車とまったく同じ耐候性・耐久性の基準をクリア。「特別な色だから保証は限定的」ではなく、あくまでもBMWとしての品質水準を全色で維持している。
外装でとくに興味深いのが「デュアルフィニッシュ」と呼ばれる2色塗装だ。たとえば7シリーズのルーフ部分をメタリック(タンザナイトブルーなど)、ボディ下部をフローズン(つや消し)に塗りわけるような仕上げが可能で、このデュアルフィニッシュの工程だけで約3日間を要するという。
内装の自由度も高い。本革シートの色やランクを選べるのは当然として、縫い目となるステッチの糸のカラーまで個別指定ができる。極端な話、「赤いシートに黄色のステッチ」といった純正ではありえない組み合わせも可能だ。素材面では従来の革だけでなく、かつては車内への採用が難しかったカシミアやウールといった天然素材も選択肢に加わっている。ウッドパネルには印刷ではなく本物の木材が使われており、同じ木目は世界に2枚と存在しない。光沢のあるラッカー仕上げから木の風合いをそのまま活かした「オープンポア」仕上げまで質感も選べる。
そして、Individualのさらに上に位置するのが「BMW Individual Manufaktur(マニュファクチュア)」だ。ミュンヘン近郊のガーヒングに構えた本国工房で、既存の選択肢にない要望にも本国と直接相談・調整を重ねながら1台ずつ仕上げていく。たとえばヘッドレストへのロゴの刺繍、サイドシルへのイニシャルの刻印といった個別対応が可能だが、もちろんこれらはほんの一例に過ぎない。
ここで日本国内で実際にあったという依頼をひとつ紹介しよう。M3の純正オプションでゴールド塗装が施されているブレーキキャリパーを、「目立たせたくないから黒く塗ってほしい」というオーダーだ。あえて「標準の派手さを抑える」という逆方向の要望も、本国生産ラインとの調整の末に実現されたという。カスタマイズの方向性に正解はない、ということをBMWが体現した事例である。
量産メーカーがすべての要望にコーチビルダーのように応じることはビジネス的に難しい。しかし、BMWはこのプログラムを、単なる車両カスタマイズの手段ではなく、「メーカー、ディーラー、顧客が三位一体となって時間をかけてお気に入りの1台を築き上げていく贅沢なコミュニケーションツール」と位置づけている。選択肢が豊富すぎて仕様決定に悩む。それ自体をBMWは「楽しいプロセス」として設計しているのだ。
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