「温故知新」の逆というわけではないが、最新のプジョー車に乗りながら、古(いにしえ)のプジョー車に思いを馳せてみたい。今回は、プジョー 508SWに乗りながら、フランスの公用車にもなった大型高級車たち、を振りかえってみたい。(タイトル写真は、上が現行型の508SW、下が1975年に発表された604)
セダン以上にスタイルが魅力的な508SW
現行型のプジョー 508は従来モデルと同様にセダンタイプとステーションワゴンタイプ、ふたつのボディラインアップを持つ。現行型のセダンは長めに設計されたボンネットフードと流麗なルーフラインを持つファストバックで、ルーフの傾斜も合わせるとクーペとも言いたくなる流麗さで、スペシャルティカーのようにも見える。
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一方のSWは、実用性を演出されていることからもより立派に見える。ルーフを後方へ長く伸ばすことで一般的に伸びやかなデザインとなり、カッコよく見える傾向はあるものの、508の基本デザインがSWの良さを助長しているように見える。つまり、より実用性の高いステーションワゴン「508SW」の存在意義が高まったように思う。
508SWはセダンと同じホイールベース(2800mm)であるが、リアオーバーハングを40mm長くしたことで全長は4790mmに、車両重量も40kgほど重くなっている。
今回試乗した2L直4ディーゼルターボ(177ps/400Nm)搭載のGTグレードは、508と508SWの両方に設定され、セダンの場合エンジンの重さと足まわりの設定などから乗り味を「硬い」と指摘されることもある。しかし508SWはより落ち着いた印象で、感激するほどのしなやかさを感じられた。活発な走りを好むならばセダンも良いが、508の車格に合った走り方ならば、SWがより適しているとも言えそうだ。
現在のフランス大統領専用車はSUVの5008!
セダンの場合、ルーフ形状のために後席ヘッドルームが少し犠牲になっている。そのことで、じつは前々から気になっていたことがある。プジョーの上級セダンは昔からエリゼ宮(大統領官邸)をはじめ、公用車に使われてきたが、そういったニーズにどう対応するのか、ということだ。
運転好きのオーナードライバーならばそれでも良いとしても、お偉い方々を後席で運ぶことをメインとする公用車や社用車では、508セダンの後席居住性能はちょっと心許ない気もする。その点、508SWの長所は後席の居住性とラゲッジスペースの広さだ。ひょっとして、こうした用途に使われるのは508SWの方ではないだろうかと、ちょっと思ったのだ。
しかし現実には違った。現在マクロン大統領の移動用車両として採用されているのはSUVの5008だ。近年、アメリカ大統領の警護用車両にSUVがよく使われており、さらに大統領リムジンでさえ中身はSUVをベースにしていることもあるらしいから、フランス大統領だって5008のほうがクールなのだろう。
ちなみに、エリゼ宮中庭に並んだ5008の大統領専用車と508セダンの写真が、プジョーの公式ツイッターのトップ写真に使われていたこともあった。これに関連するフランスの記事で、大統領の車両として508セダンが採用されることはないと断言されているが、公用車としては今後も採用される可能性はあるとのことだ。
過去を振り返ってプジョーの大統領専用車として知られているのは、ジスカール・デスタン大統領(在任期間:1974~1981年)の604リムジンであるが、実はこのほかに大統領専用車として使われた例は多くない。
プジョーと同じくフランスのブランドで、第1次世界大戦で戦車や航空機を生産して勝利に貢献したルノーは、第2次世界大戦前まで大統領専用車に多く使われた。また、シトロエンは第2次世界大戦でレジスタンス寄りの立場をとり、レジスタンスの英雄だったシャルル・ド・ゴール大統領(在任期間:1959~1969年)に贔屓にされ、戦後に多く採用されてきた。
では、なぜプジョーモデルの採用例が少ないのか、これは大型高級車をあまりつくってこなかったからだ。
約40年ぶりに復活した大型高級車の604
この連載でも何度か書いたように、プジョーは決して庶民派ブランドではない。どちらかというとブルジョア(都市住民)的な品格のあるブランドなのだが、堅実さを信条にクルマづくりの営みを続けてきた歴史がある。
第二次世界大戦より前であれば上級クラスとして601をラインアップしていたものの、大戦で受けた損害もあって戦後は中級クラスの開発に専念。1960年代に入ると小型クラスへの拡張をはじめたのだが、上級クラスは手つかずのままだった。そんななか、1975年にようやく600番台の604が登場した。このクラスへの復帰は実に約40年ぶりである。
同時期のライバルであるルノー R30やシトロエン CXの駆動方式はFFで、ボディスタイルはいずれもファストバックだったのに対し、604はFRでクラシカルな3BOXセダンを採用。ふつうに、より高級車らしさがあった。開発段階で想定されていたライバルは同国モデルたちではなく、むしろ高級車の国際的代表格であるメルセデス・ベンツだったともいわれるモデルだ。
ただ、スタイリングからプジョーの信条である堅実さが現れているように見える。「大げさなフロントグリルなど無用だ」と言わんばかりに押し出しの強さが小さい。いかにも趣味の良いオーソドックスなスタイリングだったのである。
しかし、クルマの出来ばえは高級車らしい上質さを持ち、これも高く評価された部分だった。それでもプジョーは長い間このクラスで不在だったため、ブランドイメージを新たにつくり、市場を開拓する必要があった。さらに、この時期に襲った石油危機も不利に働いたといわれ、販売面で目覚ましい実績を残せなかった。
604のあとの600番台のモデルは、1989年にFFへ転換した605が、さらに1999年に後継となる607が登場している。しかし607が2010年でフェードアウトしたあとは、500番台の508が「最上級」を引き継いでいる。本来高級品づくりに長けているフランスのブランドでありながら、高級車分野で確固たる地位を築けずにいるのは、残念なことである。(文:武田 隆)
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みんなのコメント
プジョーというより、かつての25やサフランのイメージに近づいてるような気がする。