■止まり木にヒョイっと腰掛けるようなライトな感覚で乗ることができる
ホンダ本社の地下にあるバイク置き場で、見慣れぬスクーターが目に止まりました。聞けば「若者のバイク離れの救世主かも」というではありませんか。その言葉が僕の興味をかき立てたんです。それではその救世主とは何を持って救世主なのか。それを探るべく「Dunk(ダンク)」を試乗することにしたのです。
ヤマハ新型「NOZZA GRANDE」ハイブリッドシステム搭載の125ccスクーター
試乗に先立ち、カタログを眺めて予習をすると、意外な事実を知ることになりました。時計や12V充電ソケットだけでなく、500ccのペットボトルを収納できることを声高にアピールしていたのです。それには驚かされました。
というのも、僕にとっては、バイクはそんな基本的なアイテムすら備わっていなかったことを再認識したからなのです。僕は16歳の誕生日から18歳までに濃密なバイク生活を過ごしました。しかし、そのあと生活の基盤をクルマに移してしまいました。大学時代に大型750ccを約1年間乗っただけで、いまでは小さなモンキーを乗り回しているに過ぎません。そんなバイク素人の僕には、時計も充電ソケットもないことがあらためて不思議に思えたのです。
ダンクのことをバイク離れの救世主というのは、この点を指していたのかもしれません。昨今の草食系の若者がスマホの充電も喉を潤すこともできないのでは、さすがにバイクから背を向けますよね。ストイックなバイクライフが楽しくて仕方がないのは、病的な(いい意味で)なバイク乗りに限られますからね。
ライディングスタイルは、みかん箱に腰掛けているような感覚です。背筋をピンと伸ばして、股をあわせた姿勢を強いられます。ですから、乗り降りがとても簡単です。止まり木にヒョイっと腰掛けるようなライトな感覚なのです。これならバイクに身構える必要はありません。
しかも、「原動機付きのみかん箱」などと侮れない走り方をします。エンジンは水冷4サイクル単気筒OHCで排気量は49cc、最高出力は4.5PS、最大トルク4.1Nmです。これがかなり鋭い加速を示しますし、最高速度も驚くほどに達するのです。
アイドリングストップをするのも現代的です。しかも、再始動はセルモーターが作動するようなキュルキュルはありません。スロットルを捻るだけで瞬時に発進ができます。それでいて加速が鋭いのですから素晴らしいですね。
■現代の原付は、心配なく楽に乗れる時代になっていた
僕が所有するモンキーは最高出力が2.5PS、最大トルク3.4Nmですが、それと比較してはもちろん、数字以上のダッシュ力を披露するのですから驚きです。クローズドコースで確認したところ、60km/hまで記された速度計を軽々と超えてしまいました。見掛けからは想像できないパワーなのです。
実はこれも、救世主と呼ばれるひとつなのかもしれません。というのも、原付バイクで通行の流れに乗るのは、なかなかシンドイものです。法定速度が30km/hに定められていますから、幹線道路の40km/h~60km/hの波には乗るのは容易ではありません。トラックや乗用車がかすめるときに、恐怖を感じます。ですが、ダンクは加速が素晴らしいので。路上駐車のクルマを避けるのも容易です。そんなストレスがダンクにはありません。
直進安定性も問題ありません。それでいて小回りもききます。とっても楽に乗れる原付スクーターなのです。
みかん箱などと、舐めてかかったことを後悔しています。たしかにダンクが、若者のバイク離れに救世主になってくれれば嬉しいですね。
「Dunk(ダンク)」の価格(税込)は、21万4920円からとなっています。
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