残っていればいま人気車種となった可能性が高い
モデルチェンジが行われず現在残っていないクルマの多くは、コンセプトが失敗など、不人気な車種がほとんどだ。しかしそうしたクルマのすべてがダメだったわけではない。一部車種は完成度が高く、なぜメーカーがフルモデルチェンジを行って残さなかったのか不思議なほどだ。そうした車種4台を紹介しよう。
10年以上も放置するのはなぜ? モデルチェンジしてもらえないクルマ4選とその理由
1)マツダ・ユーノス500
バブルが弾け、負のスパイラルとなった世紀末、日本の自動車メーカーは危機を乗り切るために新しい価値観を持つクルマづくりを行った。セダンは神通力を失いつつあったが、マツダのエンジニアはセダンの復権をかけ、小型車サイズのなかで最高のセダンを目指している。
そして92年2月にファミリーカー市場に送り込んだのがユーノス500だ。ユーノスブランド初の4ドアセダンで、美しいフォルムに加え、つくりのよさもチャームポイントだった。
エンジンは1.8リッターと2リッターのV型6気筒DOHCを搭載する。今では小型車枠のなかで6気筒エンジンなんて世界中を見回しても採用するクルマはない。何とも贅沢だ。
それだけではない。インテリアもラグジュアリームードにあふれている。レザーシートを採用し、電動ガラスルーフも設定する。日本ではミニバンに押され、95年に生産を打ち切った。だが、クゼドス6を名乗った海外向けモデルは、99年まで販売が続けられている。ヨーロッパで認められた数すくない日本車だ。1代限りで消えていったのは残念というしかない。
2)マツダ・ボンゴフレンディ
セダンの需要が少なくなると考えたマツダは、ミニバンを中心とするRVに活路を求めた。個性的なマルチパーパスカーを開発し、積極的にすき間に押し込もうとしたのである。1代限りで消えてしまった残念なミニバンがボンゴフレンディだ。
1BOX派生のミニバンで、短いノーズにスクエアなキャビンを組み合わせている。標準ルーフもあるが、人気が高かったのはオートフリートップだ。ルーフが上に跳ね上がってテントが出現し、上のスペースに大人2人が無理なく寝ることができる。
このボンゴフレンディはアウトドア派に絶大な人気を誇り、オートキャンパーのブームを引き寄せた。安定した売れ行きを見せ、デビューから12年以上にわたって第一線で活躍している。2008年夏に後継のビアンテが登場するときに勇退したが、コンセプトを変えたビアンテはキャビンが狭く、フレンディ派からは敬遠された。ボンゴフレンディはモデルチェンジしないで消滅する。が、オートキャンパーブームの今なら、乗りたいファンも多いはず。
3)トヨタ・プログレ
5ナンバーの小型車サイズに収めながら、高級セダン並みのゴージャスな仕立てと重厚な走りを売りにしたのがトヨタのプログレだ。わかりやすくいうと、小さなセルシオである。
全長は4.5mで、全幅も1.7mにとどめているが、キャビンは当時のマークII並みに広く、快適性も高かった。インテリアもラグジュアリームード満点だ。バーズアイメープルなどの本木目パネルを採用し、シートもジャガード織りなど上質な素材をおごっている。
エンジンもゴージャスだ。2.5リッターと3リッターの直列6気筒DOHCを積み、主役のFR車は電子制御5速ATを組み合わせた。V6エンジンとFF車が全盛を誇っていたとき、プログレはBMWとともにストレート6と後輪駆動で気持ちいい走りを強くアピールしたのだ。高回転までスムースに回り、振動も驚くほど少ない。もちろん、FRならではの洗練されたハンドリングも魅力だった。メルセデスベンツが再びストレート6戦略に転じた今なら、プログレの素晴らしさが分かるはずだ。
4)三菱パジェロミニ
パジェロミニも惜しまれつつ消えていった名車である。誕生したのは、パジェロが大ヒットしていた94年12月だった。強固なビルトインモノコック構造を採用し、エンジンは縦置きレイアウトにした660ccの直列4気筒SOHCとDOHC5バルブ+インタークーラーターボを搭載する。駆動方式は2WDも追加したが、主役はハイ/ローの副変速機を備えた4WDだ。ターボ車は刺激的な加速を披露した。
サスペンションはストラットと5リンクの組み合わせだが、オンロードでは快適で冴えた走りを、オフロードではパジェロに迫る高い走破性能を見せつけている。
98年には軽自動車の規格が変わったことを受け、ボディをサイズアップし、安全性を高めた2代目に生まれ変わった。2代目も好調に売れ、ファン層を広げている。が、三菱の業績が悪化したこともあり、3代目は開発途上で白紙に戻され、ラインアップから削り取られた。
ジムニーが人気車になっている今なら、パジェロミニは対抗馬として脚光を浴びていたはずである。
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