この記事をまとめると
■三菱i-MiEVからはじまった軽EVは「サクラ」や「RACCO」の登場で新たな時代に突入
「サクラより115kmも多く走れる」で勝負! EV軽自動車の「ホンダN-ONE e:」と「日産サクラ」を走り比べた!!
■BYDとホンダはEVに対して真逆のアプローチを見せている
■日本メーカーが軽EVで勝つために必要な5つのポイントを考えた
選択肢も増えてきた日本の軽EV
「軽自動車のEV」と聞いて、皆さんはどんなクルマを思い浮かべますか? 日産「サクラ」? 三菱「ekクロスEV」? 最近ならホンダ「N-ONE e:」や話題のBYD「RACCO(ラッコ)」を思い浮かべる人もいるかもしれません。
じつは日本の軽EVの歴史は、意外と長いんです。大きな転期となったのは2009年に登場した三菱「i-MiEV(アイミーブ)」。いまからなんと17年前です。
i-MiEVは、三菱の軽自動車「i(アイ)」をベースに開発されたEVで、三菱は「世界初の量産電気自動車」として販売開始。当初は法人や自治体などに販売し、その後、一般販売へ。i-MiEVでは、通販番組で販売するなどいろいろ斬新な取り組みを行っていました。ちなみに私も何度か通販番組に出演したことがあったような……。
いま見ても、かなり先進的なクルマですね。
ベースとなった「i」は、エンジンを後ろに搭載するRRレイアウト。モーターをリヤの荷室下に、リチウムイオンバッテリーを床下に配置。つまり、ガソリン車をEVにしただけでなく、小さなボディを電気で走ることに合わせて使いこなす、という発想です。
搭載されたバッテリーは16kWh 、モーターの最高出力は47kWh 、最大トルクは180Nm。いまの軽EVと比べるとだいぶ控えめ(?)に見えますが、当時としてはかなり本気。しかも三菱は、電気自動車の研究を1960年代から続け、i-MiEVは、長年の研究の積み重ねから生まれたEVだったんです。
2011年には同じ技術を使った軽商用EV「MINICAB-MiEV(ミニキャブ・ミーブ)」も登場。毎日決まったルートを走り、夜に帰ってきて充電する、こうした使い方はEVとの相性抜群! 日本では、かなり早い段階から「軽×EV」の可能性が見えていたのです。
ただ、当時はまだEVそのものが珍しい時代。車両価格、充電インフラ、航続距離、そして「電気自動車って、本当に大丈夫なの?」という心理的なハードルがあり、軽EVが「普通のクルマ」になるには、もう少し時間が必要でした。
大きく変わったのは2022年。日産「サクラ」と三菱「ekクロスEV」の登場です。この2台は、軽自動車の扱いやすさとEVの静かで滑らかな走りを組み合わせ、「EVだけど、普通の軽自動車として使える」というところまで身近にしてくれました。
さらにホンダも参入。2024年には軽商用EV「N-VAN e:」を発売。仕事で使う軽バンだからこそ、EVとの相性は抜群です。そして2025年に「N-ONE e:」。航続距離はWLTCモードで295kmで「軽自動車は近所しか走れない」というイメージを大きく変えました。
そして2026年、軽EVの世界に、ちょっと面白いクルマが海外からやってきました! BYDの「RACCO(ラッコ)」です。発売2週間で1000台を突破したということでも話題です。1000台というとそれほど多い数ではないように思うかもしれませんが、BYDの現在の立ち位置を考えるとこれは大健闘です。
RACCOはBYDが日本の軽規格に合わせて専用開発した軽EVで、全長3395mm、全幅1475mm、全高1800mmという、まさに日本のスーパーハイト軽サイズ。
しかも、両側電動スライドドアまで備えています。個人的には、外から開ける際の地面に映し出されるライトガイドが秀逸だと思いました。何しろ、キーを持ってガイドに足をかざせば100%失敗せずに開けることができるため、私は勝手に「失敗しないんです電動スライドドア」と呼んでいます。これだけでも「日本の軽」をかなり研究していることがわかります。
RACCOの面白いところは、バッテリー。BYDはもともと世界トップクラスの電池メーカーで、BYDが得意とする「ブレードバッテリー」と呼ばれる薄くて長い形状のリン酸鉄リチウムイオン(LFP)電池を採用しています。LFPは、一般的な三元系リチウムイオン電池に比べて熱安定性や耐久性に優れるのが特徴。
RACCOには2種類のバッテリーが設定され、グレードは3タイプ。「RACCO 200」には 22.4kWhで1回の充電で走行可能距離はWLTCモード210km。「RACCO 300」には「300 Plus」と「300 Premium」の2グレードあり、こちらは35.8kWhで320km!! 価格は214万5000円から249万7000円。CEV補助金は全グレード15万円です。
さらにマニアックなのは、バッテリーパックを車体の骨格の一部にする「CTB(Cell to Body)」。そして、RACCO専用に開発された電源系の部品を高密度に統合した「X-PACK」。駆動用バッテリーだけでなく、電子制御ユニット、DC-DCコンバーター、車載充電器、高電圧配電ユニットなどをバッテリーユニット内に高密度に統合。これによってモータールーム前方に128mmの空間を確保し、そのスペースを衝突時にエネルギーを吸収するように作っています。
軽自動車はボディサイズが決まっているので、そのなかで「128mm」はかなり大きい。小さいクルマだからこそ、パッケージング技術が安全性に直結するのです。
さららに、6つのエアバッグに加えペダル踏み間違い時の加速抑制やドライバーモニタリングなど、予防安全装備も充実しています。つまり、「中国のEVは燃える」とか「危ない」というネガなイメージへの対策を徹底的に行ってきたのです。
また、面白いのはRACCOはモーターの最高出力47kW 、最大トルク160Nm。BYDは日本の住宅街や坂道などを想定し、日本専用のモーターを開発。サスペンションも日本の段差や減速帯、連続カーブなどを研究して専用チューニングしています。これは、「海外用の小型EVを日本にもってきた」わけではなく、「日本の軽自動車をEVメーカーの目線で作った」ということです。
BYD「RACCO」とホンダ「Super-ONE」が変える日本のEV
というわけで、RACCOが「軽のど真んなか」に入ってきた一方、ホンダはちょっと違う方向へ進みました。それがホンダ「Super-ONE(スーパーワン)」です。
と言いつつ、Super-ONEは、じつは軽EVではありません。「N-ONE e:」をベースに開発されましたが、全幅を1575mmまで広げたため、軽自動車規格を超えたAセグメントの小型EVなのです。
全長3580mm、全幅1575mm、全高1615mm、車両重量1090kg。ホンダは「軽自動車規格を超えたFUNなEV」といっていますが、なぜ軽の枠から出たのでしょうか?
ホンダによれば「Super-ONEの開発を進めるなかで、そのパワーユニットのポテンシャルを解放してみたいという発想が生まれ、あえて軽の枠から飛び出しました」とのこと。
その象徴が「BOOSTモード」です。すでに”やんちゃなEV”には搭載されていることが多い機能ですが、通常時でも十分に元気なのに、専用スイッチを押すとモーターの最高出力が47kWから70kWへアップ! さらに仮想有段シフト制御や、排気音を演出するアクティブサウンドコントロールまで採用。「静かさ」ではなく、クルマと対話しながら走る楽しさをEVで表現しようとしています。
しかも車両重量は1090kg! バッテリーは車体中央の床下に配置され、低重心化にも貢献しています。バッテリーは29.6 kWh 、WLTCモードの航続距離は274km。Super-ONEは1グレードで、価格は339万200円。ただし、2026年度のCEV補助金は130万円なので、補助金受給後の参考価格は209万200円。自治体によってはさらに補助が加わります。
ここまで見ると、RACCOとSuper-ONEは対照的なのがわかります。RACCOは、「日本の軽規格のなかで、EVとしてどこまでできるか?」に挑戦したクルマ。Super-ONEは、「軽EVで培った技術を、軽の枠の外まで広げたらどうなる?」に挑戦したクルマ。
この2台が同じ2026年に登場したのはかなり興味深いですね。
というわけで、吉田由美的、日本の軽EVの勝ち筋を考えてみました!
1)「航続距離競争」を止める
RACCOは最大320km。N-ONE e:は296km。サクラ&ekクロスEVは180km。確かに航続距離が長いのは、安心材料です。毎日30~50kmしか走らないのであれば、180kmでも十分。320kmに追いつこうとすると、大容量バッテリーを積むことになり、車両価格も重量も増えてしまいます。
軽EVの魅力は、本来「小さくて取りまわしがよいこと」。だからこそ、小さなバッテリー+軽量ボディ+低価格も立派な勝ち筋だと思います。
2)「軽自動車ならでは」を極める
ここは日本メーカーが圧倒的に得意なところ。RACCOが面白いのは、両側電動スライドドアを採用してきたことで、これは「日本の軽」を研究した証拠です。だったら日本勢は、その先を行けばいいのです。「EVだから便利」なのではなく、「軽だから便利」を徹底することが重要。これは日本の生活文化そのものですから。
3)「軽EV=セカンドカー」を逆手にとる
私的にはここが最大のチャンスと考えています。「近所専用の最高のクルマ」になればいいいと思います。買い物、子どもの送迎、通勤、病院、駅までの送り迎え、そして家に帰ったらコンセントを繋ぐ。さらにV2Hまで普及すれば、クルマが「走る蓄電池」となるので、それをもっとわかりやすく伝えることが大事かな。
4)「軽なのに楽しい!」
これから絶対に必要なのがこれ! 「軽だから我慢する」のではなく「軽だから面白い」となれば、通勤用のエコカーなのに帰り道が楽しくなるはず。
5)そして「安心」
ここは日本メーカーが絶対に負けてはいけないところ。EVの場合、ユーザーが気にするのは、「バッテリーは10年後どうなる?」「事故を起こしたら大丈夫?」「水没したらどうなる?」「冬はどのくらい走る?」「中古車になった時も価値は?」など。さらには、バッテリー保証や劣化率、急速充電性能に寒冷地性能に冠水時の安全対策、事故後の処置、リセールバリュー……。
中国メーカーが「バッテリー技術」を武器にしてくるなら、これらを「わかりやすく見える化」し、日本メーカーは「長く安心して使えるEV」で勝負するのが勝ち筋ではないでしょうか。
「日本の生活に最適化された小さなクルマ」という文化そのものが、日本メーカー最大のアドバンテージ。RACCOの登場は、日本メーカーにとって脅威であると同時に、ものすごくいい刺激になったと思います。 いまこそ、「軽EVだからこそ、何ができる?」かを競う時代へ。ここからさらに魅力的な軽EVが登場してくるといいな。
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所詮は中国、嘘まみれの国です。