ムーヴでいちばん大きな変化
夜が深くなると、街は音を落とす。光は点になり、景色は輪郭だけを残す。
──このクルマを見たとき、ちょっと格好いいことを言ってみたくなった。少しラフで、でも少し強そうな服装をして、新型「ムーヴ RS」のドアを開ける。
ムーヴは、1995年に初代が登場して以来、軽ハイトワゴンというジャンルをつくってきたクルマだ。6代目が姿を消してからしばらく空白の時間があったが、2025年、7代目として戻ってきた。その復活は、思った以上に“今っぽい”かもしれない。
新型ムーヴでいちばん大きな変化は、歴代初となるスライドドアの採用。軽乗用車の約半数がスライドドアを選ぶ時代。ムーヴもようやく、その現実を受け止めた。シートに腰を下ろすと、思ったよりも視界が広い。軽自動車らしいコンパクトさはあるのに、窮屈さがない。フロントまわりがすっきりしていて、夜道でも先が見えやすい。小さいけど閉じ込められない、そんな第一印象だった。
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走り出してすぐ、ステアリングの感触に驚く。軽自動車にありがちな“軽さ”を感じなかった。しっかりとした手応えがあり、直進安定性も良く落ち着いている。軽く流していても、クルマがフラつかない安心感がある。
走行モードは、エコとパワーを切り替えられる。エコモードでは、アクセルを踏んでから加速が立ち上がるまで、半テンポの間があった。燃費を意識した制御なのだろう。一方、パワーモードに切り替えると印象は一変。アクセルペダルの動きと、速度の上がり方がきれいに連動し、踏んだぶんだけ、素直に前へ出る感覚だった。RSグレードらしさをいちばん感じられるのは、このモードだと思う。
速度を上げても、エンジンが苦しそうな様子はない。高速道路に乗っても、非力感はまったく感じない。合流や追い越しでも、気を遣う場面がほぼなかった。軽自動車という枠を意識せずに走れたのは感動した。“軽だから”と身構える場面がなく、走りは想像以上に上質だった。
新型ムーヴは、静かで、よく走る
足まわりはしっかりしている。段差を越えたときも、衝撃を角の取れたかたちで伝えてくれた。無理にスポーティに振ってなくてちょうどいい。ブレーキも扱いやすく、減速のリズムが取りやすかった。ムーヴ RSは、派手な演出をせずに「こう走れば気持ちいいよ」というラインをきちんと示してくれるのが、運転していて心地よかった。
内装のインパネ周りも、ブラックやブラウンと落ち着いた色味と素材感でまとめられていて、シルバー加飾で締まっているのがかっこよく、気分を高めてくれる。スライドドアも両側に備えていて、降車時にインパネのスイッチで予約しておけば乗車時に電子カードキーを持ってクルマに近づくだけで、パワースライドドアが自動で解錠する「ウェルカムオープン機能」も標準装備されていることに驚いた。当然乗り降りしやすく、軽自動車として仕立ての良さを感じる空間だと感じた。
価格は、上級グレードのRSで189万7500円から。ベースグレードはなんと135万8500円から用意されている。最近の軽自動車は、少し装備を盛ると「もう普通車が買えるのでは?」と思うことも多い。その中で、このムーヴ RSは装備に不足を感じさせず、仕上がりと価格のバランスが取りやすい。乗ってみて感じたのは、お手軽感だ。安っぽい、という意味ではない。構えずに選べて、ちゃんと満足できる。その距離感が今の軽自動車としてちょうどいい。
撮影のためにクルマのそばに立つと、ムーヴ RSは夜の中で、輪郭だけを静かに残していた。派手なイメージとは裏腹に、中身はとても実直で、落ち着いている。ムーヴは、静かで、よく走る。そして、その全部が無理をしていない。7代目になったムーヴは、無理なく、軽やかに時代を更新していた。
SPECIFICATIONS
ダイハツ・ムーヴ RS|DAIHATSU MOVE RS
車名(和名)|車名(英語)
ボディサイズ:全長3395×全幅1475×全高1655mm
ホイールベース:2460mm
車両重量:890kg
駆動方式:FF
エンジン:直列3気筒DOHCターボ
総排気量:658cc
最高出力:64PS(47kW)/6400rpm
最大トルク:100Nm(10.2kgfm)/3600rpm
トランスミッション:CVT
サスペンション:(前後)マクファーソン・ストラット
ブレーキ:(前後)トーションビーム
タイヤ:(前後)165/55R15 75V
燃費:21.5km/L(WLTC総合)
価格:189万7500円
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