まず驚いたのはキャビンの圧倒的な静かさ
約16年ぶりにフルモデルチェンジを果たした日産のラージミニバン新型「エルグランド」。待望の公道試乗を終えた今、最も強く印象に残っているのは、「どこまでも運転していたくなるクルマ」だったという思いです。
【画像】大柄なボディがワインディングを駆け抜ける! 日産新型「エルグランド」の走りと存在感を写真で見る(30枚以上)
新型「エルグランド」は運転していて気持ちよく、そして疲れない。ミニバンだけど、ミニバンじゃない……そんな不思議な感覚のモデルです。
新型の開発において日産が選んだ手段は、いわば“わが道を行く”ことでした。代々受け継いできた“運転が楽しいミニバン”というDNAを、新型でもしっかり継承することにしたのだそうです。
それじゃあ……とばかりに、試乗車を受け取った筆者(工藤貴宏)はまずワインディングロードへと向かいました。ところが、ワインディングロードへたどり着く前に、まず驚かされたことがありました。それはキャビンの圧倒的な静粛性。めちゃめちゃ静かじゃないですか!
この静かさについては、正式発売前にテストコースでプロトタイプを試乗した際も感動させられましたが、公道でもここまで静かとは驚きです。
その理由は、遮音材や吸音材、遮音ガラスなどを多用して外から入る音を抑える“アナログ”なつくり込みに加え、スピーカーから騒音とは逆位相の音を出し、エンジン音やロードノイズを打ち消す“アクティブノイズコントロール”というデジタル技術も採用しているからです。後者はいわば、ノイズキャンセリングヘッドフォンと同じような考え方ですね。
とにもかくにも、本当に静か。新型「エルグランド」は日産独自のハイブリッド“e-POWER”を全車に採用していますが、エンジンが止まった状態でモーターのみで走っているときはもちろんのこと、発電のためにエンジンが始動していても静かなのです。
さらにその後、高速道路を走ってみましたが、フロントシートと3列目シートに座る乗員が普通に会話できることにも驚かされました。
そんな新型「エルグランド」、乗り心地もいいのです。
テストコースで試乗したときから「よさそうだ」と感じてはいましたが、本当の乗り心地は、さまざまな路面や段差がある公道を走ってみないと分かりません。なので、プロトタイプの試乗後にはあえて触れずにいたのですが、公道試乗を終えた今なら「乗り心地も良好」だと断言できます。
新型「エルグランド」は、全車に電子制御式ダンパーを標準装備しています。走行状況に応じてショックアブソーバーの減衰力を自動かつ連続的に変えることで、走行性能を損なうことなく快適性を高める仕組みです。
ドライブモードで「コンフォート」を選べば、サスペンションは乗り心地を重視した設定となり、2列目/3列目シートも快適。これなら後席に乗る人からのクレームも心配しなくてよさそうです。
このように、快適性に優れた新型「エルグランド」ですが、実は運転していてとても気持ちいいクルマなのです。この点こそ、新型の真骨頂といえるでしょう。
●大きくて重いのにウソみたいに気持ちよく曲がる
ワインディングの登り始めは、道幅が狭い上に曲がり込んだコーナーが続くタイトな区間。はっきりいって、大きく重い「エルグランド」が得意とする場所ではない……はずです。ところが新型、ウソみたいに気持ちよく運転できます。
まず印象的なのは、ステアリングを切るとスッとねらった方向へ向きを変え始めること。コーナリング中の安定感も高く、車体がふらつくことはありません。その上、ライントレース性が高いので、ドライバーが思い描いたとおりにコーナーを抜けていきます。
S字コーナーで左右へ連続して切り返しても、車体がグラリと不安定になることはなく、スッと向きを変えていきます。この動き、とても大型ミニバンとは思えません。やるじゃないか!
その先、少し速度域が高い区間に入っても、印象は同じでした。スッと曲がるのに、安定感が高い。だから安心して走れるし、自分が思ったとおりにクルマが動いてくれる。だからこそ、ドライブしていて気持ちいいのです。
では、そんな走り味を生み出しているメカニズムは、どこにポイントがあるのでしょうか?
気持ちよく曲がるための4WDと電子制御ダンパー
新型「エルグランド」の走り味において、まずポイントとなるのは4WDシステムです。
新型「エルグランド」は、前後それぞれにモーターを配置するツインモーター式4WDを採用。独自の電動駆動4輪制御技術“e-4ORCE”によって前後の駆動力などを緻密に制御し、安定感を高めるだけでなく、クルマが気持ちよく曲がるよう味つけされています。
かつて4WDといえば、雪道などすべりやすい路面でトラクションを確保することが主な役割でした。しかし現在は、舗装路でのハンドリングを高めるためにも積極的に利用されています。日産の“e-4ORCE”もそのひとつで、気持ちよく曲がるための4WDといっても過言ではありません。さらに“e-4ORCE”は、前後方向の揺れを抑える制御もおこなうため、乗り心地の向上にもつながっています。
そこに組み合わされるのが、先述した電子制御ダンパーです。「コンフォート」ではやわらかめの設定として乗り心地を確保する一方、「スポーツ」に切り替えると引き締まった特性となり、ハンドリングもよりシャープになります。後席に大事な人を乗せてゆったり走るときと、ドライバーがひとりでドライビングを楽しみたいとき、それぞれに対応できるわけです。
そして、もうひとつ効いているのが“e-POWER”です。これは、エンジンを発電専用とし、タイヤはモーターだけで駆動するシリーズ式ハイブリッドです。アクセル操作に対して駆動力が素早く立ち上がるモーターならではの特性が、小気味よくリニアな加速感につながっています。
曲がるだけでなく、アクセルペダルを踏んだときの反応もドライバーの感覚とズレが少ない。これもまた、新型「エルグランド」をドライブしていて気持ちいいと感じる理由のひとつです。
●“全部載せ”だからこそ、この走り味が実現
新型「エルグランド」に対して、「ハイブリッドでなくてもいいのでは?」とか、「4WDではなくシングルモーターのFFを用意して、もっと価格を抑えた仕様があればいいのに」と感じる人もいるかもしれません。確かに筆者も、そう思わなくはありません。
しかし実際に走らせてみると、この気持ちよさは“e-POWER”と“e-4ORCE”、そして電子制御ダンパーがそろっているからこそ成立しているものだと感じます。
「この走りそのものを『エルグランド』の世界観にしたいから、全車に採用している」そんな日産の考え方も、実際に運転してみると「なるほど」と納得できます。
ところで、新型「エルグランド」でドライビングの心地よさを味わえるのは、峠道のようなシチュエーションだけなのでしょうか? いえいえ、そんなことはありません。例えば高速道路では、挙動のスムーズさと高い安定感によって、とてもリラックスして走れます。
しかも静粛性が高く、長距離を走っても疲れにくい。大型ミニバンなのに、いつまでも運転していたくなる。どこまでも走っていきたくなる……公道でじっくり試乗してみて、それこそが新型「エルグランド」の大きな魅力なのだと感じました。
* * *
ミニバンだから後席が快適なのは、ある意味、当然のこと。そこに、本気の“ドライビングの楽しさ”を盛り込んだことこそが、新型「エルグランド」の“らしさ”なのではないでしょうか。(工藤貴宏)
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みんなのコメント
それは難しいだろ。
エンジンは発電専用だから、実質は電気自動車に構造が近く、トランスミッションもエンジンからの駆動シャフトもない。
構造が大きく違うから、販売数が多い少車種でないと採算が合わない。