現在位置: carview! > ニュース > 業界ニュース > 1990年代に人気を集めた和製スポーティ・カー4選

ここから本文です

1990年代に人気を集めた和製スポーティ・カー4選

掲載 更新 14
1990年代に人気を集めた和製スポーティ・カー4選

1990年代には意欲的な日本製のスポーティ・カーが何台もあった。小川フミオがそれらから印象的な4台をピックアップし、振り返る!

日本の自動車メーカーがエライと思うところは、SUV全盛時代にあっても、クーペやスポーツカーを作り続けてくれている“心意気”だ。趣味性が高いスポーティなクルマの市場占有率はわずか数%といい、開発費が回収できるのか不安になるけれど、乗れば”これはいい”と納得できるクルマが多い。

29歳、フェラーリを買う──Vol.103 トラブルは気まぐれ

すこし過去を振り返ってみても、日本にはスポーティなクルマが多かった。なかでも1990年代には、いまとすこしちがう傾向も。ラグジュリアスな雰囲気のスポーツクーペ(GT)がしのぎを削っていた。いまではドイツ車の独壇場ともいえるセグメントだ(レクサスLCなどは数少ない例外)。

「スポーツクーペこそ、そのメーカーの顔」と、とらえられていたのが、1990年代だ。いまでも欧米ではそのトレンドが残っており、メルセデス・ベンツやBMWはさまざまなモデルを提供してくれている。時代をさかのぼれば、日本にもかなりよいモデルが存在し、いまでも、魅力を失っていない。

(1)トヨタ「スープラ」(4代目)

バブル経済の最後の輝きともいうべきモデルが、1993年に発売された4代目トヨタ「スープラ」だ。ドイツのポルシェ911などのライバルに対するトヨタの回答ともいえるモデルである。

空力特性をあらわすCD値は0.30と、当時としてはかなり低い。それでも、これみよがしなおおげさな空力パーツなどは控えめで(例外は“鳥居”のようなリアスポイラーをそなえた「RZ」)、スタイリングの印象はおとなっぽいともいえる。いまみても好感がもてるたたずまいなのだ。

直列6気筒ガソリンツインターボ・エンジン、前後ダブルウィッシュボーン式サスペンション、高性能ダンパーなどの高性能パーツのてんこ盛り。さらにアクティブスポイラーや、トルセン式LSD、それに大容量ブレーキまで。

このときからトヨタは、ニュルブルクリングの北コースを走りこんでの性能の磨き込みをうたっている。まさに現行スープラの原点といえるモデルだ。

ボディ全長は4520mm。ホイールベースは2550mmに抑え、トレッドはフロントで1520mm、リアで1525mmと、まずまずワイドで、コーナリング性能の高さが大きなセリングポイントだった。

2997cc直列6気筒エンジン(コードネーム「2JZ-GTE」)には“2ウェイツインターボ”なる2基のターボチャージャーを使ったシステムが搭載され、エンジン回転域が低いときは加速レスポンスを向上させる目的で、1基のみが作動した。

もうひとつの「2JZ-GE」はノンターボ(自然吸気ともいう)仕様で、ターボの280ps(当時はこれ以上の数値を掲げることをメーカーは自主規制していた)に対して、225ps。それでも充分いじょうに速かった。

同時にルーフの一部を取り外せる「エアロトップ」なるモデルも設定。ニュルブルクリングなどで鍛えあげたことをうたっていたものの、同時にオープン走行など、エレガントなライフスタイル訴求も行った。まさにドイツの高級クーペをターゲットにしていただけある。

(2)日産「シルビア」(6代目)

1993年に日産自動車が発表した6代目「シルビア」は、先代のキープコンセプトで、すこしだけ快適性重視のGT的性格を強めたモデルだ。

1988年に登場した5代目(S13)が、スタイリッシュなクーペボディと、気持ちのいい走りとで爆発的なヒットとなったのを受けてのフルモデルチェンジだったため、メーカーとしては悩みもあったかもしれない。

スタイリングは、前後長をすこし切り詰めたクーペスタイルのキャビンと、ロングノーズのプロポーションを受け継いだ。そのうえで、エンジンは基本的に踏襲しつつパワーアップ。

たとえば、ラインナップの頂点に置かれる1998ccの直列4気筒ガソリンターボ(SR20DET)は、3代目の205psから220psへ最高出力が上がっている。後輪操舵システムの電動スーパーHICAS(ハイキャス)を受け継ぎつつ、トレッドは前で15mm、後ろで10mm拡大。操縦性の向上がはかられている。

いっぽう、ホイールベースを50mm延長したうえ、全長は30mm、全幅は40mm、全高は5mm、それぞれサイズを延ばした。、S14型とよばれる4代目シルビアの特徴をひとことでいうと、走りも室内の居住性もあげて、GT的な性格も強めようとしたのだろう。

ドイツ車にならい、収益性も高い高性能クーペが欲しかったのは、(スープラのトヨタ同様)日産も、おなじだったのだ。じっさいにおとなっぽくなって、走りの質は向上した印象だった。

しかし、市場での評価は期待はずれで、多くのファンはS13に変わるあたらしい時代のスポーツクーペを、このS14に期待していた。スタイリングも、R33スカイラインを手がけたデザインチームの仕事だろうか、主張が弱く、はなやかさに欠けるものだった。

乗れば、速いし快適で、いまみてもどっしりと路面に吸いつくようなプロポーションはスポーティさがじゅうぶん。スポーティクーペの理想像を、ユーザーと共有できなかったのが、なんとも残念である。

(3)ホンダ「プレリュード(4代目)

4代目ホンダ「プレリュード」の登場は1991年。このとき、デートカーとして大ヒットした先代と先々代から、コンセプトが大きく変わったのに、とまどいにも似た気持ちを抱いたのをおぼえている。

でも3代目が、2代目のあからさまなキープコンセプトだったので、スポーティクーペとして大きく変わった4代目のありかたは、いさぎよさを感じさせたのも事実だ。

エンジンは2156ccと、バブルの時代だけあって大排気量化。ただしこのエンジンは、「Si」と「Si VTEC」とで排気量はおなじでありながら、エンジン・シリンダーの内径と行程を変えていた。

パワフルな「Si VTEC」(VTECはエンジンの可変バルブタイミングおよび可変バルブリフト機構)のほうがショートストローク(行程)なのだ。一般的にはショートストロークのほうが、エンジン回転はスムーズになると言われているため、ホンダの開発者は、微妙ながらその差を追究したのだろうか。

スタイリングは、アメリカ市場向けの製品であることを、まったく隠そうとしていない。リアウィンドウが大きく寝た、小ぶりのキャビンは、基本的に後席を使わない北米のユーザーを念頭においたデザイン。F1マシンを思わせるグリルレスグリルといい、力強くふくらんだ前後フェンダーといい、全長4440mmのコンパクトスポーティGTとして存在感をはなっていた。

こののち、1996年にホンダはプレリュードのモデルチェンジを実行。5代目はすっきりしたプロポーションに加え、印象に残るフロントマスクを持つモデルである。ようやく、メーカーの迷いが晴れたという思いを、私は強くしたものだ。

(4)三菱「FTO」

三菱自動車が1994年に発売した「FTO」は2プラス2のスポーティクーペ。往年の「ギャランFTO」(1971年)を彷彿させるネーミングで、当初は話題を呼んだ。

FTOとは「Fresco Turismo Omologato」の略らしい。レースに出るためには統括団体(FIA=国際自動車連盟など)の認可が必要になる。車名のオモロガートは認可で、ツリズモはクルマ、そしてフレスコはフレッシュ、つまり認可をうけたばかりのモデルの意味だとか。

新しいFTOは、低いノーズに小さなキャビンと、スポーツカーの王道をいくプロポーションである。それでもリアルスポーツカーでなく、ランサーとミラージュをベースに開発されただけあって、あくまでもGT。

三菱は1990年にパワフルなエンジンに新技術を盛り込んだスポーツクーペの「GTO」を出していただけに、FTOは弟分ととらえられた。ノーズ高もスカットル(エンジンと客室を遮る構造材)も高く、出自は乗用車と意識してしまった。前輪駆動方式だったのも、その印象に輪をかけた。

それでも全長4320mmに対して、トレッドはフロントで1490mm、リアが1485mmとかなりのワイドトレッド。そのがんばりは、意外なほど楽しい操縦感覚として結実した。

スペックがひとり歩きする1990年代に作られたのがFTOの不運だったかもしれない。ハンドリングがなかなか楽しい前輪駆動のスポーティなクーペというパッケージは、いまの目からしても、けっして悪くない。スポーツカーが売れなくなっていた時代の流れに巻き込まれて、2000年に生産中止となったのは、なんとも残念だった。

文・小川フミオ

【キャンペーン】第2・4 金土日はお得に給油!車検月登録でガソリン・軽油5円/L引き!(要マイカー登録)

こんな記事も読まれています

レースクイーンたちがカートで本気バトル! シティサーキット東京ベイでのイー・スマイルプチモタスポ祭が盛り上がる
レースクイーンたちがカートで本気バトル! シティサーキット東京ベイでのイー・スマイルプチモタスポ祭が盛り上がる
AUTOSPORT web
タイムリミットが迫るヴァンウォールのWEC復帰計画。2025年の参戦が保証されるまでテストは保留
タイムリミットが迫るヴァンウォールのWEC復帰計画。2025年の参戦が保証されるまでテストは保留
AUTOSPORT web
AIルート生成機能搭載の自律走行搬送ロボット、ロボットバンクが出展へ…ジャパンモビリティショー ビズウィーク2024
AIルート生成機能搭載の自律走行搬送ロボット、ロボットバンクが出展へ…ジャパンモビリティショー ビズウィーク2024
レスポンス
ランボルギーニ「レヴェントン」の中身は「ムルシエラゴ」、外観は「アヴェンタドール」の習作!? 3億円前後の値がつく超レアモデルを紹介します
ランボルギーニ「レヴェントン」の中身は「ムルシエラゴ」、外観は「アヴェンタドール」の習作!? 3億円前後の値がつく超レアモデルを紹介します
Auto Messe Web
NEXCO西日本、2024年下半期の大規模工事規制予定を発表! 中国道、広島道、松山道などで実施【道路のニュース】
NEXCO西日本、2024年下半期の大規模工事規制予定を発表! 中国道、広島道、松山道などで実施【道路のニュース】
くるくら
【このUFOならぬNSUなんぼ?】ウェッジシェイプカーの先駆け「NSU Ro 80」ピニンファリーナデザインのワンオフモデル その価格は?
【このUFOならぬNSUなんぼ?】ウェッジシェイプカーの先駆け「NSU Ro 80」ピニンファリーナデザインのワンオフモデル その価格は?
AutoBild Japan
【大幅改良で今秋発売】三菱アウトランダーPHEV 「洗練」と「上質」をテーマに
【大幅改良で今秋発売】三菱アウトランダーPHEV 「洗練」と「上質」をテーマに
AUTOCAR JAPAN
新型スーパーカー「マクラーレンW1」を腕に巻く!「リシャール・ミル RM65-01オートマチック スプリットセコンド クロノグラフ マクラーレンW1」ウオッチ
新型スーパーカー「マクラーレンW1」を腕に巻く!「リシャール・ミル RM65-01オートマチック スプリットセコンド クロノグラフ マクラーレンW1」ウオッチ
Webモーターマガジン
目的地への「行き方」もAIでレコメンド、New Ordinaryのナビシステムに新機能…ジャパンモビリティショー ビズウィーク2024
目的地への「行き方」もAIでレコメンド、New Ordinaryのナビシステムに新機能…ジャパンモビリティショー ビズウィーク2024
レスポンス
2024年度“上半期”「イチバン売れたクルマ」は? 唯一「10万台超え」は「背の高い軽」! ミニバン・軽ワゴンは大人気 販売台数ランキング発表
2024年度“上半期”「イチバン売れたクルマ」は? 唯一「10万台超え」は「背の高い軽」! ミニバン・軽ワゴンは大人気 販売台数ランキング発表
くるまのニュース
心動かすモビリティ体験を支えたい! ブリヂストンが「ツール・ド・九州2024」への協賛を発表
心動かすモビリティ体験を支えたい! ブリヂストンが「ツール・ド・九州2024」への協賛を発表
バイクのニュース
EV充電の一括管理・自動化サービスのアークエルテクノロジーズ、ジャパンモビリティショー ビズウィーク2024出展へ
EV充電の一括管理・自動化サービスのアークエルテクノロジーズ、ジャパンモビリティショー ビズウィーク2024出展へ
レスポンス
マイナーチェンジで顔が別人に!? 日本で超人気のMPV[シトロエンベルランゴ] どっちの顔が好きですか?
マイナーチェンジで顔が別人に!? 日本で超人気のMPV[シトロエンベルランゴ] どっちの顔が好きですか?
ベストカーWeb
最初期型ワンオーナーのホンダ「NSX」に試乗! これは間違いなく日本製スポーツカーの金字塔です【旧車ソムリエ】
最初期型ワンオーナーのホンダ「NSX」に試乗! これは間違いなく日本製スポーツカーの金字塔です【旧車ソムリエ】
Auto Messe Web
トヨタ、人の手で運べる「ポータブル水素カートリッジ」を日本初公開! 水素で走るGRカローラも展示。【ジャパンモビリティショービズウィーク2024】
トヨタ、人の手で運べる「ポータブル水素カートリッジ」を日本初公開! 水素で走るGRカローラも展示。【ジャパンモビリティショービズウィーク2024】
くるくら
全長1.9m! まるで“1人乗りミニ軽トラ”な「SUZU-CARGO」実車公開へ! スズキの「“斬新”小さいのりもの」JMS2024で披露
全長1.9m! まるで“1人乗りミニ軽トラ”な「SUZU-CARGO」実車公開へ! スズキの「“斬新”小さいのりもの」JMS2024で披露
くるまのニュース
「すごい事故…」東名で「3件同時多発」事故発生!? トラックが横向きで走行不能に「事故起きすぎ」「どうなってんだ」上下線で大渋滞発生中
「すごい事故…」東名で「3件同時多発」事故発生!? トラックが横向きで走行不能に「事故起きすぎ」「どうなってんだ」上下線で大渋滞発生中
くるまのニュース
ケンウッドから新型ディスプレイオーディオ「DMX5523S」発売、ワイヤレスでスマホ連携可能に
ケンウッドから新型ディスプレイオーディオ「DMX5523S」発売、ワイヤレスでスマホ連携可能に
レスポンス

みんなのコメント

14件
  • 4代目スープラの説明で国産乗用車初の6速MT搭載車って書かないと全て台無しですよ。
  • 4代目プレリュードは決して「人気を集めた」とは思えないが。
※コメントは個人の見解であり、記事提供社と関係はありません。

この記事に出てきたクルマ

新車価格(税込)

177.0271.5万円

新車見積りスタート

中古車本体価格

126.0908.0万円

中古車を検索
シルビアの車買取相場を調べる

査定を依頼する

メーカー
モデル
年式
走行距離

おすすめのニュース

愛車管理はマイカーページで!

登録してお得なクーポンを獲得しよう

マイカー登録をする

おすすめのニュース

おすすめをもっと見る

この記事に出てきたクルマ

新車価格(税込)

177.0271.5万円

新車見積りスタート

中古車本体価格

126.0908.0万円

中古車を検索

あなたにおすすめのサービス

メーカー
モデル
年式
走行距離

新車見積りサービス

店舗に行かずにお家でカンタン新車見積り。まずはネットで地域や希望車種を入力!

新車見積りサービス
都道府県
市区町村