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根っからのエンジン屋!? ホンダ新社長が携わったクルマと指揮官の「横顔」

掲載 更新 10
根っからのエンジン屋!? ホンダ新社長が携わったクルマと指揮官の「横顔」

 2021年4月1日付で、三部敏宏氏が本田技研工業の代表取締役社長に就任。

 創業者の本田宗一郎氏から数えて9代目の社長に就任する三部氏は、エンジン開発畑出身で、まさしくホンダイズムのメインストリームを歩んできたという印象だが、激動の時代のなかでホンダはどう変わってゆくのか?

新車販売4年連続日本一 軽販売6年連続NO.1のN-BOXに潜む死角とは?

 新社長が携わったエンジン・クルマを端緒に、その横顔を紹介したい。

文/渡辺陽一郎 写真/HONDA

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ホンダ新社長が関わったクルマ&エンジンは?

ホンダの9代目社長に就任した三部敏宏氏。1987年入社。愛車は現行型レジェンド SH-AWD

 三部敏宏氏は、1961年生まれで、1987年にホンダへ入社。主にエンジンを中心に、4輪車の研究や開発に従事してきた。海外拠点では、1990年代にドイツHRE-DEに4年間駐在されて、欧州の技術探索をおこなった。

 この後、北米の排出ガス低減に向けた技術開発では、世界初とされる環境技術エンジン(SU-LEV/スーパーウルトラ・ローエミッションビークル)の開発責任者を務めた。このSU-LEVによるエンジンは、直列4気筒2.3Lで、2000年に北米版アコードEXに搭載して発売されている。

 GM(ゼネラルモーターズ)とは、ホンダがV型6気筒エンジンの供給を行った時からの関係で、今日までの協業に繋がっている。環境関連などの先進技術においても、技術交流や研究開発を積極的に推進してきた。三部敏宏氏は本田技術研究所の代表取締役社長も務められた。

 三部敏宏氏はホンダのパワートレーンを知り尽くしている。本田技術研究所に在籍されていた時には、先進技術に関して、詳しく、しかも分かりやすく解説していただいた記憶がある。

アコードに搭載された環境エンジンを開発

2000年、北米版アコードEXに世界初とされる環境技術エンジン(SU-LEV/スーパーウルトラ・ローエミッションビークル)が搭載された

 三部敏宏氏の業績の中でも、特に記憶に残るのは、先に挙げたSU-LEVの開発だろう。1990年代、ホンダのエンジン開発にとって一番の課題は、世界で最も厳しいといわれた北米カリフォルニア州の排出ガス規制に対応することだった。

 当時のカリフォルニア州の排出ガス規制値を見ると、LEV(ローエミッションビークル)では、1マイル走行当たりの排出量が炭化水素:0.075g、一酸化炭素:3.4g、窒素酸化物:0.05gというものだった。

 それがSU-LEVになると、炭化水素:0.010g、一酸化炭素:1.0g、窒素酸化物:0.02gまで低減させねばならない。炭化水素の排出量は、LEVのわずか13%だ。

北米版アコードに搭載されたSU-LEVは、三部敏宏氏が開発責任者を務めた。1990年代当時、SU-LEVによる排気ガスはローエミッションビークルのわずか13%しかなかった

 そのために排出ガスによって空気の汚染された場所を走ると、吸入したガスよりも、SU-LEVの吐き出す排出ガスの方がキレイになる現象も発生した。いわば「走る空気清浄器」で、SU-LEVの凄さに驚かされた。このSU-LEVの開発を指揮されたのが三部敏宏氏であった。

 また三部敏宏氏は、先に述べたGMとの提携も経験されている。排出ガスを浄化するための触媒には貴金属が含まれるが、その目標とされる含有量を決める時も、ホンダとGMでは計算の仕方が違っていたという。

 もともとホンダは独立意識の強いメーカーで、他社とのOEM車の供給関係も、一部を除くとほとんど手掛けていない。同様の考え方に基づいて、ホンダの場合、量産車の開発は本田技術研究所がおこなってきた。営業販売部門などが収まる本田技研工業からは距離を置いて、エンジニアが研究開発に専念できる環境を整えるためだった。

 その効果もあって、本田宗一郎氏の「真似をするな」という考え方が受け継がれ、個性的なメカニズムやコンセプトを備えた数多くの車種が市場へ投入された。三部敏宏氏が達成した空気をキレイにするSU-LEVも、実現の背景には、ホンダの独立意識や真似をしない開発があったと思う。

 しかしホンダは、八郷隆弘氏が社長を務めていた2020年4月に、4輪商品開発機能(デザインなど一部を除く)を本田技研工業の4輪事業本部に統合させた。

 従来は営業/生産/開発/購買の各部門を自立させていたが、新体制では4輪事業本部内に統合して、開発部門も営業や購買と連携を図ることになった。そして本田技術研究所は、先進技術やデザインを手掛ける。

「エンジン中心」から変革しつつあるホンダの開発体制

 本田技術研究所が車両開発を行う従来の方式は、ホンダの強みであり、近年では伝統になっていた。これを当時の八郷隆弘社長が改革するには、さまざまな抵抗があったと思う。それでも改革した理由は、将来に向けた危機感だ。

 ホンダの過去を振り返ると、高性能なVTECから環境性能の優れた初代シビックのCVCC(希薄燃焼エンジン)、近年のSU-LEVまで、エンジンを中心にした印象が強い。

 それなのに今後は電動化の時代が迫り、海外にはハイブリッド車まで禁止して、エンジンを搭載しない純粋な電気自動車だけを走らせる方針を打ち出した国もある。

ホンダ初量産EVとして誕生したホンダe。今後はGMを提携しつつ、プラットフォームやバッテリー開発が進むと思われる

 この急変する開発環境に対応すべく、ホンダは2020年9月にGMと北米における戦略的な提携を発表した。複数のセグメント(車両のサイズやカテゴリー)におけるプラットフォームやパワートレーンの共有、先進技術領域における技術革新などを目指している。

 GMとの提携内容は上記のほかにも、通信機能など多岐にわたる。2021年1月には、ホンダがGMクルーズ(GMの自動運転開発部門)と、日本における自動運転モビリティサービスの協業を行うことも発表された。

新時代のホンダで問われる「手腕」

 この激変する時代を乗り切るうえで、三部敏宏氏は、優れた経歴の持ち主といえるだろう。エンジンのスペシャリストで、特に環境性能に対する造詣が深い。

 本田技術研究所の社長を務められていた時代には、自動運転や電動化技術も率先して進めてきた。しかも過去にGMとの提携を成功に導いた経験もある。

 ホンダは強い独立意識に支えられ、他社とは違う個性的で魅力ある商品をたくさん生み出したが、今後は電動化を始めとする環境性能の向上、安全性と自動運転技術の進化、通信機能、所有形態の変化(シェアリング)など、さまざまな対応を迫られる。そのためには他社との協業も不可欠で、この分野でも三部敏宏氏の実績が生きる。

 ホンダは技術指向の強いメーカーといわれ、それはいつの時代でも大切だが、これからは企業姿勢や経営理念が一層重要になる。従来にも増して、社長の手腕が問われる時代が到来する。三部敏宏社長の活躍に期待しています。

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モーサイ

みんなのコメント

10件
  • もうちょっと読みやすくまとめて
  • 根っからのエンジン屋の新社長さんが、
    電動車化のこれからの新次世代へ向けて、
    どの様なプランを提示して頂けるのか、
    楽しみではあります。
※コメントは個人の見解であり、記事提供社と関係はありません。

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