富士スピードウェイで行なわれたスーパーGT第4戦の主役となったのは、優勝した100号車STANLEY HRC PRELUDE-GTと、それを追い詰めた8号車ARTA MUGEN HRC PRELUDE-GTだった。どちらもホンダ陣営内で重責を担うチーム……プレリュードのGT500初優勝をかけた争いは、ドライバーたちのプライドにも火をつけた。
まず予選でポールポジションを獲得したのは、8号車ARTAだった。Q2を担当した太田格之進は、HRC(ホンダ・レーシング)の専任スタッフも参画する“Team HRC ARTA MUGEN”のドライバーとして強い責任感を持っており、周囲からのネガティブな声を払拭したいという思いで走っているのだと語った。
■牧野任祐、富士で再び男泣き。スーパーフォーミュラでの悔し涙をGT500プレリュード初勝利で洗い流す「昨日の予選も負けて、本当にキツかった」
しかし2番手に終わった100号車STANLEYも黙ってはいなかった。STANLEYの山本尚貴、牧野任祐組は、毎年のようにホンダ勢の最上位に入り、事実上のエースチームとしての地位を確立してきた。プレリュードの記念すべきシェイクダウンを担当したのも、彼らふたりであった。決勝レース後、牧野は「昨日ポールを獲れなかったことは本当に悔しかった」、山本は「昨日の太田選手のコメントを見て火がついた」と話していることからも、彼らの「ホンダの看板を背負う者」としてのプライドが確かに感じ取れた。
迎えた決勝レース。スタート直後のアクシデントにより、レースは赤旗中断からセーフティカーリスタートで始まっていった。ここで技ありのリスタートを見せたのがベテランの山本だった。8号車を駆る大津弘樹の真後ろにピタリとつけた状態で最終コーナーを立ち上がり、1コーナーのブレーキングで首位を奪ったのだ。
この状況から、STANLEYはウォームアップに優れたソフト側のタイヤを履いていたのかと思いきや、山本はハードタイヤであったと明かす。そして逆にARTAはそれよりも柔らかめのコンパウンドだったようだ。山本は、硬いコンパウンドでもしっかり温めれば発動するという手応えがあった上、互いが互いのタイヤチョイスを把握しているからこそ、「リスタートでは仕掛けてこないだろう」と考えるARTAの裏をかけたのではないかと分析した。
それからSTANLEYは首位をキープしたまま、山本から牧野へとドライバーチェンジ。一方ARTAは大津から太田に交代した後ややペースで苦戦し、37号車Deloitte TOM’S GR Supraに抜かれ3番手に落ちた。
しかしARTAは終盤に息を吹き返した。太田はDeloitteをオーバーテイクして2番手に上がると、セーフティリードだったはずのSTANLEY牧野とのギャップを縮めていった。1周1秒近いペース差で猛追した太田だったが、0.6秒届かなかった。
このようなレース展開となったのも、タイヤ選択が影響していた。
太田がスティント前半で苦しみ、後半で勢いがあったのは、ソフト側……つまり作動温度領域が低温側にあるタイヤを選んでいたから。16時が迫り、路面温度が下がってくるコンディションにマッチしたのだ。しかし太田曰く、これは望まざるタイヤチョイスだったのだという。
「本来履きたかった本命の(ハード側)タイヤが、何かを踏んだとかの外敵要因で使えないほどのダメージがありました」
「これはブリヂストンさんの(責任)とかではないですが、見たことないようなダメージがあり危険だということで、使えなかったのはすごく残念でしたね。硬い側のタイヤで練習走行も予選も走りましたが、パフォーマンスも出るし、持ちも良かったです。
「今回の決勝は途中でしっかりと太陽が出たことで路面温度も上がったので、(ソフト側のタイヤでは)はじめの方は『これやばいな』と思うくらい熱ダレして、すごく厳しかったですね。練習走行で履いたタイヤとは動き方も違うし、熱に対しての許容範囲が狭くて、後ろを見てレースをすることになるだろうと思っていました。ただクルマは良かったので、なんとかペース的に耐えることができていました」
一方のSTANLEYはその逆に近いシチュエーションだった。山本曰く、元々は路面温度が下がってくる後半スティントは作動温度領域が“下側”のタイヤ、つまりソフト側のタイヤを入れようとしていたところ、山本のドライバーコールでハード側へと急遽変更したのだという。
「僕らも順当に行けば路面温度が下がってくるから下側のタイヤを入れたかったのですが、ちょっと細かいところから『ソフト側よりハード側を選んだ方がメリットがある』と感じて、インラップのヘアピン立ち上がりくらいで急に変えてもらいました」
「最後の10周くらいはかなり厳しいだろうと思っていましたし、それは予想通りでしたが、彼(牧野)がそれまでにマージンを頑張って築いてくれました。最後はコンマ6秒差でしたが、(チェッカー時に)前に出ていることが全てなので。よく粘って帰ってきてくれたなと思います」
こういったタイヤ選択の妙で、勝敗が分かれたSTANLEYとARTA。「仮に雨がパラっと来ていたら、日がかげるタイミングがあと10分20分早ければ、全然展開は変わっていたと思います。タラレバですけど」と太田は言う。彼らとしても理想的なレース戦略で戦えなかったことは残念だった一方、その中で優勝まであと一歩に迫れたという意味では一定の満足度はあるようで、「内容はすごく良かったと思います」と少し明るい表情を見せた。
「ベースを作ってきた」山本、牧野へのリスペクト
また、自身のポール獲得とその後のコメントがSTANLEYのふたりに火をつけたことについて太田に尋ねると、彼は山本と牧野にはホンダ陣営を引っ張ってきたことに対する大きなリスペクトがあると述べた。
「僕は今年から帰ってきた身ですし、去年の後半からテストに参加してきたとはいえ、ベースを作ってきたのは尚貴さんとタディ(牧野)です」
「僕たちもチーム名にHRCがついていて、気持ちとしては責任感を持っていますが、やっぱり彼らが引っ張ってきたと思っていますし、彼らのやってきた仕事に対するリスペクトはすごく感じています。特に尚貴さんがベースをしっかり作ってくれていて、ホンダのクルマが強く戦える土台を作ってこれたのは、尚貴さんの力だと思っています」
「もちろんライバル意識を持ちながら切磋琢磨して、高め合える2台であるべきだと思うし、今はそれができていると思います。100号車はホンダの中でランキングが一番上ということが多かったですし、僕たちにとっても彼らがベンチマークになるのは間違いありません。ライバル意識を持つことは陣営の底上げにもつながると思うので、これからも僕たちの“ライバル兼チーム”としてのバチバチ感を楽しんでもらえたらと思います」
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外的要因やろ