仕組みと目的 何のためにある?
「トラクション・コントロール・システム(TCS)」は、間違いなく何千人もの命を救ってきた技術である。
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凍結した道路を走ったり、大雨の中で急加速や急ブレーキをかけたりすると、スピードメーターなどの近くでTCSのマークが点灯する。見たことがある人も多いのではないだろうか。
『AUTOCAR』誌が初めてTCSを取り上げたのは1982年のジュネーブ・モーターショーで、ボルボが電子制御トラクション・コントロール・システムを発表したときだった。これはタイヤのスピンを検出し、他の車輪と同期していない車輪にブレーキをかけるものだ。滑りやすい状況に直面したときに、クルマがスピンして制御不能になるのを防ぐことが目的である。
それ以来、各メーカーはさまざまなバリエーションのTCSを採用してきた。1980年代後半、BMWは安定性を制御するトルク・コントロール・システムを導入した。メルセデス・ベンツが1995年に導入したESP(エレクトロニック・スタビリティ・プログラム)は、車速、操舵角、ヨーを監視し、自動的にブレーキをかけて車体の安定を保つというものだった
トラクション・コントロールとは?
トラクション・コントロールは、タイヤと路面の摩擦力、すなわちグリップが低下した場合にこれを検知し、適切な対策を講じる電子制御システムである。急加速時、急ブレーキ時、滑りやすい路面での走行時など、トラクション(タイヤと路面の間の駆動力)が低下した瞬間に作動する。
トラクション・コントロールの仕組み
トラクション・コントロールは、各車輪が連動して動くように自動的にブレーキをかけたり、エンジン出力を一部カットしたりしてタイヤのグリップを維持する。
TCSが導入される前は、ドライバーは加速時にホイールスピンを起こさないようにアクセルを慎重に踏んでいた。今日、TCSは出力の供給をより効果的に制御し、ホイールスピンのリスクを低減している。
雪や氷、雨のコンディションでは、TCSはグリップが低下している特定の車輪にブレーキをかけることができる。
ホイールロックしないようにブレーキを緩和するアンチロック・ブレーキ・システム(ABS)とは異なることに注意してほしい。
「オフ」にすることはあるの?
トラクション・コントロール・システムの役割
トラクション・コントロールは、道路を走り、車線を維持し、クルマを制御し続けるために存在する。また、クルマが曲がるときに、オーバーステアにならずドライバーの思い通りに曲がるようにする。それゆえ、高性能車でドリフトをするときにはトラクション・コントロールをオフにするのが一般的だ。
作動しているかどうかを確認するには?
トラクション・コントロールが作動すると、ダッシュボードのインストゥルメント・パネルにランプが点灯する。トルクが調整される瞬間、人によっては車体がガクッと揺れるのを感じるかもしれない。また、ブレーキがかかって急に減速することもある。
TCSが本来の機能を果たさずに異常をきたしている場合は、インストゥルメント・パネルの警告灯がまったく点灯しない(あるいは点灯したまま消えない)、加速時にタイヤが空転する、凍結した箇所を走行したときに目立ったアシストが得られない、などの現象が起こる。
雨の中を運転していて、まるで氷の上を滑っているような感覚を覚えたことがある方は、一度クルマを点検に出してみてはいかがだろうか。
どのような場合に設定を調整したり、オフにしたりするべき?
公道では、トラクション・コントロールを常にオンにしておくことをお勧めする。ただし、クローズドコースにおけるスポーツ走行など特殊な条件下では、システムの介入度を下げたり、オフにしたりすることもある。
多くの高性能車には、トラクション・コントロールの制御に影響を与えるさまざまな走行モードがある。例えば、フェラーリのマネッティーノ・ダイヤル(2004年にF430に搭載)を使用すると、トラクション・コントロールの強度を切り替えることができる。スポーツモードは通常、スリップを少し許容する程度だが、レースモードは基本的にすべてのシステムが無効になる。
トラクション・コントロールを完全にオフにするのは、主に趣味でスポーツ走行を楽しむためであり、サーキット走行中に電子制御が邪魔にならないようにするためだ。
レースイベントでは通常、トラクション・コントロールのような補助装置の使用を禁止していることが多い。レースではトラクション・コントロールを無効にした方が有利になる場合もあるが、イベントが終わったらオンに戻すことを忘れずに。
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