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【ヒットの法則202】フォルクスワーゲン Eosは凝った構造のルーフを持つプレミアムモデル

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【ヒットの法則202】フォルクスワーゲン Eosは凝った構造のルーフを持つプレミアムモデル

2005年のフランクフルトモーターショーで大きな注目を集めたEos(後に日本名はイオスに決定)は、当時世界的に流行していた電動ハードトップカブリオレ、いわゆるクーぺカブリオレだった。3分割が主流の中、Eosは5分割のガラスルーフを採用していたのが特徴だったが、その使い勝手、走りはどうだったのか。ギリシャで行われた国際試乗会の模様を振り返ってみよう。(以下の試乗記は、Motor Magazine 2006年7月号より)

エレガントな佇まいをもたらす5分割式CSCルーフ
ギリシャ・アテネ。アクロポリスの丘にそびえるパルテノン神殿の巨大な大理石の柱は「エンタシス」という。直径が異なり、中央部がいくらか膨らんでいる形状だ。これは学校で習った。で、実際に見たエンタシスの構造は興味深かった。実は大理石をダイコンの輪切り状態にし、積み重ねているのだ。これは初めて知った。その円柱の中央部に臍(ホゾ)を彫り、そこに鉛の杭を挿し、重ねて行く。接合面は部分的に荒く研磨して上下の大理石が微妙に噛み合い、ずれないようにしている。

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そしてこのエンタシスは地面に垂直に起立しているのではなく、それぞれが天空の一点で交わる設計になっていたのだ。下から見上げた時に垂直だと神殿が頭でっかちに見え、荘厳さに欠けるからということらしい。それにしても古代人の知恵、作業能力にはおそれいる。おっと、アテネ観光のレポートはここまでにしておく。

ところでなぜアテネなのかといえば、フォルクスワーゲン(以下VW)の新型車、Eosの車名はギリシャ神話に登場する「曙の女神」に由来しているからだ。それで国際試乗会の舞台がアテネ周辺となったわけである。

さて、このEosだが、今現在、日本での商標登録を申請中なので正式な日本語(カタカナ)表記が決定していない。本国ドイツ、フランス語圏では「エオス」と発音するが、英語圏では「イオス」。どちらになるか? なので本稿ではローマ字のEosと表記する。

VW車は「風」に因んだネーミングが伝統的なのはご存知の通り。Eosは「曙の女神」であると同時に「明けの明星と風の母」でもあるから、うまく整合している。Eosのお披露目は2005年のフランクフルトショーだった。「365日楽しめるカブリオレ」がキーワードの完全格納式ハードトップを備えたVWの「期待の星」である。

ベースとなったのは一見ゴルフVのように見えるが、実は新型パサートだ。とはいえ、パサートのプラットフォームはゴルフVをアップデートしたものだから、共通する部分は多い。

トレッドはほぼパサートの寸法、ホイールベースはゴルフVと同寸法、全長はゴルフVより200mmほど長いといえばわかりやすいだろう。つまりVWが呼称するAクラス(ゴルフクラス)とBクラス(パサートクラス)の中間に位置するニューモデルなのだ。

欧州での一般的なクラス分けの呼び方だと前者がCセグメント、後者がDセグメントとなる。VWはこのDセグメントのオープントップのモデル、たとえばBMW 3シリーズ・カブリオレ、ボルボC70などのユーザー層にも照準を当てているのだ。

販売計画台数の上位市場はドイツ本国が30%、北米29%、英国9%、フランス8%で、次いでイタリア、ベルギー、スペイン、スイスという。あれれ、わが日本のシェアは? VWが輸入車売上げナンバーワンの国なのに、広報資料には記載されていない。「日本市場でオープンモデルはそれほど売れまい……」と読んでいるのだろうか。

Eosの一大特徴である5分割式のCSC(クーペ&スライディングルーフ&カブリオレ)ルーフはサンルーフや空調システムの有力サプライヤーであるドイツのWebasto(ヴェバスト)社とVWが共同開発したもの。ルーフのフロント部分はガラス製で、ルーフを閉じた状態でも室内は明るい。ルーフの前後寸法を長く採ったため、フロントのウインドウフレーム(Aピラー)を短くすることができた。このことがフルオープンにした時の「クラシックでエレガントな佇まい」に大きく寄与している。

私は本当にエレガントなのは幌(ソフトトップ)に尽きると思っている。それでニュービートル・カブリオレの他にVWはソフトトップ仕様を今後用意しないのか、とVWの開発スタッフに意地悪く尋ねてみた。その答えは「確かにその通りと思う。しかしながらソフトトップは破壊行為、盗難にどうしても弱い。そのセキュリティのリスクをクリアにするにはハードトップが適切なのです」……。さもありなん、か。

国際試乗会で用意されたEosのテストカーは3種のエンジン搭載車だった。2.0FSI、それのターボ仕様、そして2.0TDIである。この他にベースモデルの1.6L、トップモデルにV6の3.2L(FF仕様)がラインアップされる。日本に導入されるのはこのうち2.0FSIターボとV6の2エンジンで、トランスミッションはともにDSGが搭載される予定だ。

235サイズのタイヤでもやたら乗り心地は良好
国際試乗会の基地となったアテネ空港に待機していたEosに乗り込む。今回テストできたのは2.0FSIターボと2.0TDIの2車のみ。もちろん左ハンドル、トランスミッションは標準の6速マニュアルである。で、初めてステアリングを握って走り出したEosは、割り当ての関係上、140ps・320NmのTDI仕様なのであった。このモデルは日本導入の予定はないが、ご参考までに印象を述べよう。

空港をスタートし、すぐさま感じたのはオプションの235/45R17というR32よりも太いタイヤを履いているにもかかわらず、ゴツゴツ感が少なくとても乗り心地がよかったことだ。サスペンションはフロント部分がゴルフ用ストラット、リアがパサート用の4リンク(マルチリンク)で、Eos用にチューニングが施されている。VWでは「スポーツカーとツーリングカーの両面性を備えた足まわり」というが、たしかに「いいとこ取り」をしている感じがした。

ゆっくり流しているとあたかもセダン感覚で、室内(クローズド=クーペ状態で走り出した)に侵入するノイズも少ない。近年の高性能ディーゼルエンジンは「きわめて静かでトルキー」というのをあらためて実感する。しかし、こちらが悪い(ディーゼルのマニュアル車に習熟不足ということ)のだが、山岳路に入り6速のギアボックスをシフティングするとき、どうしてもガソリン車感覚でエンジンをブン回してしまい、リズムが合わなかった。

最大トルクは1750rpmから2500rpmの間でフラットに発生するのに3500、あるいは4000rpmまで引っ張ってしまうのだ。これはロスを発生する走り方だ。このTDIに適切なのは、6速のATトランスミッションの組み合わせだろう。ちなみに最高速度のメーカー公表値は205km/hである。

スイッチON。25秒でクーペからカブリオレへ
第一ステージの試乗を終え、第二ステージで乗り換えたのは2.0FSIターボ搭載車。そう、ゴルフGTIと同じパワーユニットである。

質感が高い本革シートのコクピットに納まり、エンジン始動。軽くブリッピングすると、ああ、GTIと同じサウンドだなぁ、と当たり前のことに感心。スペックは200ps、280Nmだ。

コンソールボックス手前にあるスイッチを操作し、クーペからカブリオレに変身させる。これに要する時間は25秒。言葉では表現しにくい複雑なアクションでスルスル……とトップが後方に折り畳まれ、リアのトランクルームに収まる。青空天井が広がり、この上なく気分がいい。

スタートしてほどなく高速道路へ。アテネ近郊のそれは制限速度が場所に応じて80、100、120、140km/hと20km/h刻みで細かく規制されている。それで許される範囲の最高速度で走ってみたがオープンとは思えぬボディ剛性に感服した。ガタピシ感、捩れ感はほとんどなし。直進安定性も高いからまさしくリラックスできる。ウインドディフレクターをセットしておいたので140km/hアベレージで走行中でも大声を出さずに助手席の同業編集者と会話ができた。

高速道路を降り、再び山岳路へ向かう。やはりこのシーンではガソリンターボの方が圧倒的にいい。低回転域からトルクの厚いFSIターボは活発でスロットルペダルに忠実であり、ドライバーと意志疎通がすみやかにできるエンジンだ。先に乗ったTDI仕様よりアベレージスピードを少し上げ、時にタイヤに負担をかけてみたがステアリング特性の平和主義=安定指向は変らなかった。

さすがにGTIのような回頭性、キビキビ感は持ち合わせていないが、Eosのキャラクターを考えればこのセッティングは正解であろう。オープンカーでナーバスすぎるステアリング特性は実はミスマッチである。ブレーキのボリュームも十分で初期タッチ、ペダルストロークともに不満点は見出せなかった。

試乗会の二日目はアテネ空港までの短距離の第三ステージ。私は運よく女性レポーターの竹岡圭さんとコンビを組むことになった。それでどうしたかといえば、ステアリングを彼女に預け、助手席インプレッション&海の観察。海の神様、ポセイドン神殿のあるスーニオン岬からのターコイズ(トルコ石)ブルーの海岸線の光景を十分に楽しんだのであった。

Eosは先述した通り陽光を運んでくる女神サマ。ここ近年さまざまな問題に直面していたVWはゴルフプラス、新型パサートの成功で業績的に明るい兆しが見えている。ピシェツリーダー氏が再選されたことも明るいニュースだ。彼は世界の自動車メーカーのトップの中でも、とびきりの「カーガイ」(大のクルマ好き)であることを私は彼のBMW在任中時代に確認している。Eosの日本上陸は本年遅い秋、11月ごろとアナウンスされている。(文:御田昌輝/Motor Magazine 2006年7月号より)



フォルクスワーゲン Eos 2.0FSIターボ 主要諸元
●全長×全幅×全高:4407×1791×1443mm
●ホイールベース:2578mm
●車両重量:1539kg
●エンジン:直4DOHCターボ
●排気量:1984cc
●最高出力:200ps/5100pm
●最大トルク:280Nm/1800-5000pm
●トランスミッション:6速MT
●駆動方式:FF
●0→100km/h加速:7.8秒
●最高速: 232km/h
※欧州仕様

[ アルバム : フォルクスワーゲン Eos(2006年) はオリジナルサイトでご覧ください ]

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