2025年1月30日に発表されたスズキ「ジムニー ノマド」は、発表直後から注文が殺到し、わずか数日で受注停止となる異例の人気を記録した。その後、2025年5月30日にスズキは生産能力の強化を発表。そして2026年1月30日、マイナーチェンジの実施とともに受注再開がアナウンスされた。待ち望んでいたファンも多く、この受注再開のタイミングでアウトビルトジャパンのライターの大林晃平も迷わずマイナーチェンジ版ジムニー ノマドを注文している。
そんな注目モデルの実力を確かめるべく、アウトビルトジャパン編集部は7月17日に静岡県富士宮市の「あさぎりフードパーク」と「富士が嶺オフロード」で開催された試乗会に参加。オンロードとオフロードの両方で徹底的に試した結果、ジムニー ノマドは単なる「5ドア版ジムニー」ではなく、本格クロスカントリー4WDとしての魅力をそのままに、日常での使い勝手を大きく向上させた完成度の高い一台であることを実感した。
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ジムニー ノマド最大の特徴は、ロングホイールベース化された5ドアボディでありながら、本格クロスカントリー4WDとしての基本構造を一切妥協していない点にある。
見慣れたジムニーシリーズ共通のコックピットの眺め。ドライバーアシスト機能をはじめインフォテイメントなどアップデートされ進化を続けている。骨格には高い剛性を誇るラダーフレームを採用。サスペンションには前後3リンクリジッドアクスル式を組み合わせ、悪路でタイヤの接地性を確保する。さらに、副変速機付きパートタイム4WDを搭載し、路面状況に応じて2WD、4H、4Lを選択できる。本格オフローダーでは当たり前の装備かもしれないが、この価格帯でここまで本気のメカニズムを採用する車は今や非常に希少な存在となった。
5ドア化によって後席への乗降性は大幅に向上。実用性は従来モデルとは別次元だ。また、優れたアプローチアングル、ランプブレークオーバーアングル、デパーチャーアングルを確保し、障害物への進入・乗り越え・脱出性能も高いレベルにある。5ドア化によってホイールベースは延長されたが、オフロード性能をできる限り維持するため細部まで入念な設計が施されていることが分かる。
ラゲッジスペースも大幅に拡大。アウトドアや旅行にも十分対応できる積載性を備える。パワーユニットは1.5リッター自然吸気エンジンを搭載。最高出力競争とは無縁だが、低回転から扱いやすいトルク特性を持ち、悪路でも扱いやすいセッティングとなっている。
1.5リッター4気筒エンジンは必要にして十分なパワーであらゆるシチュエーションに対応する。今回オンロードでは、インド市場でも展開される鮮やかな「シズリングレッドメタリック」のMT車を試乗した。
クルマを操る楽しさを存分に味わうならMT1.5リッターエンジンは決してパワフルではないが、低回転域からしっかりとトルクを発生し、MTとの相性が非常に良い。クラッチミートも自然で扱いやすく、シフトフィールも節度感がある。ギア比の設定も絶妙で、市街地からワインディングまでストレスなく走らせることができた。
アクセルを踏み込み、適切なギアを選びながら走らせる感覚は、近年少なくなった「クルマを操る楽しさ」を思い出させてくれる。ジムニーはATでも十分魅力的だが、ノマドに関してはMTを積極的に選びたくなる一台だった。
一方、午後は「ジャングルグリーン」のAT車で富士が嶺オフロードで試乗した。試乗車はトランスファーを4Lにセットし、ヒルディセントコントロールをONにした状態でスタートする。アップダウンが連続する林間コースでは、急勾配にもかかわらずタイヤは確実にグリップし、滑ることなく登坂していく。アクセル操作も非常に穏やかで済み、まさにクロスカントリー4WDならではの余裕を感じた。
本格的なオフロードコースで思う存分楽しめる。続いて体験したのが、すり鉢状の急斜面コースである。ここではヒルホールドコントロールとヒルディセントコントロールを実際に体験した。急斜面で停止しても車体は後退せず、下りでは一定速度を維持したままゆっくりと降下する。ドライバーはブレーキ操作に神経を使う必要がなく、ステアリング操作だけに集中できるため、安心感は非常に高い。
ブレーキLSDトラクションコントロールがノマド最大の武器今回の試乗で最も印象に残ったのは、やはりブレーキLSDトラクションコントロールだった。
本格クロスカントリー4WDではデフロックを装備する車種も少なくない。左右のタイヤを機械的に直結し、片輪が浮いても反対側へ確実に駆動力を伝える仕組みだ。一方、ジムニー ノマドは前後デフロックを装備していない。
モーグルコースではタイヤが浮き上がる状況でもブレーキLSDトラクションコントロールが介入し、安定した走破性を披露した。そこで活躍するのがブレーキLSDトラクションコントロールである。これはABSの油圧ユニットと車輪速センサーを利用した電子制御システムだ。片輪が空転するとシステムが瞬時にそれを検知し、そのタイヤだけにブレーキを掛ける。オープンデファレンシャルは抵抗が大きい側へ駆動力を伝える特性を持つため、ブレーキが掛かった空転側ではなく、地面をしっかり捉えている反対側のタイヤへトルクが伝達される。
ブレーキLSDトラクションコントロールの作動を確認。空転した車輪を制御し駆動力を確実に伝達する。ローラー台でのデモンストレーションでは、この制御が非常によく分かった。浮いたタイヤは「ガガガッ」というABS作動音とともに空転が止まり、接地しているタイヤへ駆動力が移る。その瞬間、車体はまるで何事もなかったかのように前進を続ける。
さらに圧巻だったのはモーグルコースだ。車体が大きくねじれ、対角線上のタイヤが宙に浮く状況でも、ブレーキLSDトラクションコントロールは瞬時に介入する。ドライバーがアクセルを一定に保っているだけで車両は確実に前へ進み、難所を難なくクリアしてしまう。
インストラクターに運転していただき後席でモーグルを楽しむ。LSDトラクションコントロールによって安心してオフロード走行を楽しむことができた。もちろん機械式デフロックのように左右を完全固定するわけではない。しかし、公道走行での扱いやすさやコスト、重量とのバランスを考えれば非常に合理的なシステムであり、多くのユーザーにとっては十分以上の走破性能を実現している。
今回、インストラクターの運転で後席からモーグルコースを体験したが、車体が大きく傾いても不思議なほど安心感があった。タイヤが浮いても車両は着実に前へ進み、恐怖よりも「もっと走ってみたい」という楽しさが勝っていた。この安心感こそ、ジムニーが長年世界中で支持され続ける理由なのだろう。
5ドア化で最も恩恵を受けたのは室内空間であるダッシュボード周りは従来のジムニーそのもので、視界の良さや操作系の扱いやすさも変わらない。一方で後席は大きく進化した。
新たに追加されたリアドアはコンパクトながら乗降しやすく、アクセス性は想像以上に優れている。後席シートはクッション性も高く、しっかりと作り込まれている印象だ。
ラダーフレームや3リンクリジッドアクスル式サスペンションなど、本格4WDの伝統はノマドにも受け継がれている。170cmの筆者が前席で適切なドライビングポジションを取った状態でも、後席のレッグスペースには十分な余裕があり、膝周りの窮屈さは感じなかった。大人4人でのロングドライブも十分現実的である。
さらに驚いたのはラゲッジスペースだった。5ドア化によって荷室容量は大きく向上し、旅行やアウトドア用品も無理なく積載できる。これまで3ドアジムニーでは積載性を理由に購入をためらっていたユーザーにとって、大きな魅力となるだろう。
ジムニー ノマドは、単なる「5ドア版ジムニー」ではない本格ラダーフレームや3リンクリジッドアクスル、パートタイム4WDといった伝統を守りながら、日常での使い勝手を飛躍的に向上させた一台である。オンロードではMTで操る楽しさを存分に味わえ、オフロードではブレーキLSDトラクションコントロールをはじめとする電子制御がドライバーを強力にサポートする。その完成度は想像以上に高く、「待った価値がある」と素直に思わせてくれた。
ジムニーらしい悪路走破性と5ドアならではの実用性を高次元で両立したジムニー ノマド。待った価値がある一台だった。ジムニー ノマドは、5ドアになったジムニーではない。「ジムニーだからこそ5ドアである意味」がしっかりと作り込まれた一台だ。伝統のラダーフレームやリジッドアクスルが生み出す本格的な走破性と、家族や仲間と気軽に出かけられる実用性。その両方を高いレベルで実現したノマドは、世界中で注文が殺到した理由を、ステアリングを握ればすぐに理解できるだろう。
ジムニーの魅力を知る人にも、これから初めてジムニーを選ぶ人にも、自信を持っておすすめできるモデルである。
Text&Photo:アウトビルトジャパン(Auto Bild Japan)
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