8月2日に静岡県・富士スピードウェイで行われた2026スーパーGT第4戦富士で、52号車Green Brave GR Supra GT(吉田広樹/野中誠太)がGT300クラス優勝をあげた。
第1ドライバーの吉田は、7月28日に令和8年熊本地震に見舞われた熊本県出身。今回サーキットでは復興支援募金が設置されたほか、吉田のもとには地元ファンや同じ被災地の東北地方、石川県のファンからも声援が送られており、その想いに応える勝利となった。さらに、2024年にチームに加入した野中にとっては待望の初勝利となり、レース後にふたりは涙を見せた。
10月のスーパーGT第7戦オートポリスは予定どおり開催へ。令和8年熊本地震の『復興支援大会』として位置づけ
表彰式が終わった後、吉田と野中に勝利の喜びとレースの状況を聞いた。
■第1スティント:野中誠太「どのバトルもロスなく1発で決められた」
開口一番、「(初勝利まで)長かった」と話した野中。「2022年にスーパーGTにデビューして、そこから4年間。ずっとスピードはあったのに、いろいろなところで苦労し続けてきたので、やっとひとつ報われました」と安堵の笑顔を見せた。
第4戦決勝レースは、にわか雨の影響や、GT500クラスのクラッシュにより10周目から本格的な戦いがスタート。野中は6番手からスタートし、UPGARAGE AMG GT3、CARGUY Ferrari 296 GT3 EVO、UNI-ROBO BLUEGRASS FERRARI、Syntium LMcorsa LC500 GTと次々にオーバーテイクしていった。
「かなりウォームアップが良く、SC(セーフティカー)明けからオーバーテイクすることができました。なるべく相手のロスを見逃さないようにして、なかにはルーキー選手もいましたし、しっかりと差すべきところはガッと入りました。相手もフェアに戦ってくれて、どのバトルもロスなく1発で決められたのでとても良かったです」
2番手に立った野中は、スティント後半に入ってチームからタイヤ無交換作戦の打診を受けた。
「自分の感覚としては、ペース自体は悪くないものの、フロントのグリップが落ちているかなと。セクター3がとくに厳しくて、ウチのスープラによくある状況でした」と野中。チームにはフロント2輪交換を提案した。
「フロント2輪交換は、公式練習で試したわけでもなかったですし、正直マシンバランスは不透明でしたが、結果的にはちゃんと機能してくれました。今回ブリヂストンさんが持ち込んでくれたタイヤも良くて、最後まで速さを見せることができました」
最後には、初のチャンピオンシップ制覇へ向け「僕らはちゃんとレースができれば優勝することができるということを証明できました。これからは自信を持ってレースに臨み、落ち着いた走りで安定してポイントを獲って頑張りたいです」と意気込んだ。
■第2スティント:吉田広樹「温かい応援が力になった」
41周目に野中からマシンを受け継いだ吉田は、「(野中)誠太のコメントも聞きつつ、レース直前に降った雨の影響でタイヤへのダメージも少なそうだ、とチームとともに判断して、2輪交換で出ました」と振り返る。
コースイン直後、PONOS FERRARI 296 EVO(篠原拓朗/川端伸太朗)の前に出て事実上の首位に立ったが、PONOS FERRARIの川端が急接近。サイド・バイ・サイドの戦いに発展し、GRコーナー(1コーナー)からコカ・コーラコーナー、さらに100Rまで続いて、吉田がアドバン・コーナー(ヘアピン)でインに飛び込んでバトルを制した。
「フロントタイヤのエア内圧が上がるまではやっぱりキツく、それも川端選手との戦いのきっかけになったと思うのですが、もう『そんなこと言ってる場合じゃない』と思って、一度前に出た以上はもう譲りたくないですし、精一杯戦いました」と振り返る吉田。
「川端選手も復帰戦で気負う部分はあったのかなと思いますが、それでも当たらないようにフェアにバトルしてくれたと思いますし、マナーを優先してくれた部分も感じたので、本当に感謝しています」
2台横並びで入った100Rでは、GT500のマシンがさらにアウト側から追い抜いていくシーンもあったが、吉田は「チームからGT500の状況は無線で教えてもらっていたので、ちゃんと見えていました。そのうえで、ここで引いたらもうチャンスはないと思って、ここだけは負けられないという気持ちで100Rに入りました」と状況を説明。チームとの連携の上やライバルのマナーの上で、バトルを制することができたと話した。スティント後半はライバル同士の2番手争いがヒートアップしたこともあり、7.861秒差までリードを広げてトップチェッカーを受けた。
勝利の喜びについて語る際、吉田は声を震わせる場面もあったが、そこには被災地の地元・熊本への思いがあった。地震の発生当時、吉田はスーパー耐久第5戦オートポリス後だったこともあって地元に残っており、熊本市内で被災した。さらには家族や旧友らも同様に被災したといい、次のように語った。
「地震当時、僕のいた熊本市内は震度5強ほどでかなり揺れましたが、家族の安否はすぐに確認できましたし、インフラも無事でした。しかし同級生が住んでいる地域はさらに揺れがひどく、実際に写真などを送ってもらって被害の大きさを知りました。熊本が10年前の復興を経てなおふたたび地震に見舞われてしまったことに、やり場のない怒りを覚えていました」
「以降も余震が続き、夜中にも揺れで起こされるほどで、不安と疲労が積み重なり、テレビやSNSで状況を見続けてしまうこともつらい時間でした。それでも今回、地元のファンに加え、石川や東北の被災地の皆さまからも温かい応援をいただき、プロとして集中する力になりました」
「大きな被害を受けた方々にくらべれば、自分の頑張りがどれほどの影響を持つのか分からない思いもありますが、今回の勝利によって少しでもできることが増え、熊本への大きな支援につながればと願っています。オートポリスでの第7戦も『復興支援大会』として開催されることが決まって本当にありがたいですし、これからも前を向いて進んでいくしかないです」
最後には、「誠太と組んでから成績が残せていなかったことも気にかかっていたので、一緒に優勝できて本当に嬉しい」と語り、野中と肩を組んで喜びを分かち合っていた。
[オートスポーツweb 2026年08月02日]
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