三人の若き天才たちが勤務時間外に描いた夢の設計図から生まれた奇跡の「猛牛ミウラ」
アウトモビリ・ランボルギーニが産声を上げた1963年。そこには、新興メーカーならではの無限の可能性を信じ、情熱を燃やす若き才能が集結していました。ジャンパオロ・ダラーラ、パオロ・スタンツァーニ、そしてボブ・ウォレス。のちに伝説となる「ミウラ」の種は、わずか27歳の若きエンジニアたちの自由な発想から生まれました。今回は、大衆車「ミニ」の構造をV12エンジンに転用するという驚くべきアイデアと、伝説のベアシャシー「TP400」が誕生するまでの歩みを紐解きます。
世界を驚かせた「美しき猛牛」の真実! 2人の天才が「GT」を「スーパーカー」へと変えた瞬間【ミウラ伝説】
ダラーラ/スタンツァーニ/ウォレスがフェルッチオに要求したのはスポーツカー開発とレース参戦
フェルッチオ・ランボルギーニが1963年に創立したアウトモビリ・ランボルギーニには、新たな自動車メーカーが持つ無限の可能性を期待して、熱意にあふれた多くの若く優秀なスタッフが集結した。前回紹介したジャンパオロ・ダラーラとパオロ・スタンツァーニは、まさにその代表的な存在だ。
1936年生まれのダラーラはミラノ工科大学を卒業後、フェラーリやマセラティでおもにモータースポーツに関連するエンジニアリングを担当。マセラティがモータースポーツから撤退すると、フェルッチオからのスカウトを受けてチーフエンジニアとして入社することになった。
パオロ・スタンツァーニもまた1936年の生まれであり、ボローニャ大学で機械工学を学んでいる。ダラーラと異なるのは、スタンツァーニはアウトモビリ・ランボルギーニに入社する以前に、トラクターメーカーのランボルギーニ・トラットリーチで短期間ではあるがエンジニアとして勤務した経験を持っていたことだ。彼が設計したトレッドの狭いコンパクトなトラクターは、その使い勝手の良さから非常に高い評価を得た。アウトモビリ・ランボルギーニへの入社はダラーラと同じく1963年。ちなみにこの時の2人の年齢は、わずか27歳という若さである。
さらに創立直後のランボルギーニを支えた人物として、忘れてはならないのがテストドライバーであり、またメカニックでもあったボブ・ウォレスだろう。
1938年にニュージーランドのオークランドで生まれたウォレスは、レーシングチームのメカニックとして働くためにイギリスを経てイタリアに移住。当初の予定ではマセラティに職を得るはずだったのだがその夢は叶わず、マセラティやフェラーリをサーキットに投じるプライベーターで働いた後、1963年にはスクーデリア・フェラーリに加入。同年のシーズン終了後にアウトモビリ・ランボルギーニに入社している。
ダラーラ、スタンツァーニ、そしてウォレス。この3人がフェルッチオに求めていたのは、いずれもスポーツカーの開発と、モータースポーツへの参戦だった。そのなかでもとりわけモータースポーツに強く執着していたのはダラーラで、彼は当時もっとも強い影響を受けていた「フォードGT」と同様のミッドシップ・スポーツのプランをフェルッチオに提案。同時に通常の業務時間外に、机上でひとつのコンセプトカーの姿を描き出すことにも成功している。
「プロジェクト・ミニ」と名付けられた発想の転換に導かれた奇想天外なスーパーカーの原型とは?
それはかのアレックス・イシゴニスが、ミニで実現したパワーユニットのコンポーネンツをミッドシップにしたもので、ダラーラ自身はそれを「プロジェクト・ミニ」とネーミングしている。1959年に誕生したミニは、直列4気筒エンジンを横置きして前輪を駆動するモデルだが、それをミッドシップ化して後輪を駆動すればよいのではないかというシンプルではあるが、驚くべき発想だ。しかもエンジンは4L仕様の350GTに使用されていたV型12気筒。ミニと同様にエンジンとミッションのオイル潤滑を共用化し、パワーユニットは横置き搭載する。これならばエンジンコンポーネントは非ジュニコンパクトでホイールベースを短く設計することも可能だ。
「プロジェクト・ミニ」をスタート地点として、ダラーラのV型12気筒ミッドシップ・スポーツのプランは、実現への道を着々と歩み始めていった。その後に控えるのは、フェルッチオの許可を得るという最大の難関だったのだが、ダラーラによればフェルッチオは意外なまでに簡単に、このプロジェクトを進行させることを認めてくれた。
そしてダラーラ、スタンツァーニ、ウォレスの3人を中心に、まずはV型12気筒エンジンを搭載した、ベアシャシーの開発と製作がスタートする。のちに「TP400」とネーミングされる、まだボディを持たないシャシーは、1965年11月に開催されたトリノ・ショーのランボルギーニ・ブースに一切の予告もなく登場し、大きな話題を呼ぶことになる。
「ランボルギーニはモータースポーツに参戦するつもりなのか?」とTP400を見た者の多くは、あるいはそう感じたのかもしれない。なにしろ世界にはまだ、スーパーカーという概念やカテゴリーは存在していなかったのだから。
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みんなのコメント
非常にコンパクトですね