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迫力のエクステリアと走りの性能の強化を図ったエボV【ランサーエボリューションChronicleダイジェスト(8)】

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迫力のエクステリアと走りの性能の強化を図ったエボV【ランサーエボリューションChronicleダイジェスト(8)】

モーターマガジンムック「ランサーエボリューションChronicle」が現在モーターマガジン社より発売中だ。ハイパワー4WD車の代表として多くのファンから支持されてきたランサーエボリューション。その変遷を詳細に解説した内容が好評を博している。ここでは、同誌からの抜粋をお届けする。今回はトレッド拡大や倒立式ショックアブソーバーで走りの性能を向上させて人気になったランサーエボリューションVについて解説しよう。

すべての面で準備万端の仕上がり
エボリューションIVは、第二期ランサーエボリューションということで、ファンの反応が気になるところだったが、人気ということでは上々の結果となった。WRCでの活躍という面でも十分な実績を残した。WRカーを向こうにまわして市販車ベースのグループAでチャンピオンを取ったということで、ランエボファンも溜飲を下げたのだ。

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一方、国内のモータースポーツでは、チューニングの遅れからエボリューションIIIに遅れをとることも多かった。そんな中で1998年に登場したランサーエボリューションVは、国内のモータースポーツ参加者にも、「やはりランエボでなければ」という評価を取り戻したクルマといえる。

変更点をパワーユニットから見ていこう。4G63型+インタークーラーターボエンジンは、ツインスクロールターボチャージャーのノズル面積が拡大され、より効率的に過給できるようになっていた。それにともないターボチャージャーで圧縮され高温となった吸気を冷却するために、今までよりも大容量のインタークーラーを採用する対策も行われた。

エンジン内部にも手が加えられている。具体的にはピストンの軽量化、そしてラジエター及びオイルクーラーの大型化などが図られ、カタログ上の最高出力は280ps/6500rpmとエボリューションIVと変わらないものの、最大トルク38.0kgm /3000rpmとなり、エボリューションIV比べ2.0kgmトルクが向上した。さらに低回転域から扱いやすいエンジン特性になったのだ。

エンジンに合わせてトランスミッションギアレシオの見直しも行われ、よりエンジン出力に見合ったクロスレシオとなった。GSRとRSでトランスミッションのギアレシオを分け、RSではファイナルギアをハイギアードとローギアードのどちらか一方を選べるようにした。トランスミッション関係では、ギアレシオ変更のみならずシフトリンケージの剛性をあげて、ダイレクト感のあるシフトフィーリングに改善されている。さらにシフトノブも小型化された。

フロントヘリカルLSDがGSRにも採用された
駆動系は、センターデフにビスカスカップリングを用いたフルタイム4WDであることは従来と変わらない。GSRのリアデフにはエボリューショIVから引き続き、センサーからの情報を使い、油圧でクラッチで制御し、左右のタイヤの駆動トルク移動でクルマの旋回力(ヨー)を発生させるAYCを採用した。さらにRSに採用されたフロントヘリカルLSDが、GSRにも採用された。ヘリカルLSDは、絶対的な効きの面では多板式LSDに比べれば劣るものの、基本的にはオイル交換さえしていればオーバーホールまでは必要ないというメリットがGSRにも採用された理由のひとつだろう。

シャシについて見ていこう。エボリューションIVでは一般的には性能アップしたのは間違いないが、国内モータースポーツを考えた場合には、エボリューションIIIに負けてしまう場合も多かったのは冒頭のとおり。しかし、エボリューションVになり確実にエボリューションIVよりも速く走れるようになった。まず効果的だったのがトレッドの拡大だ。これによりコーナリングスピードが上がり、コーナリング中の安定性も高まった。

ショックアブソーバーは、フロントに倒立式を採用されたことが注目された。通常のショックアブソーバー(正立式)はピストンロッドが上から出ているのに対し、倒立式はピストンロッドが下から出る構造になる。下のピストンロッド側はアウターチューブで保護される。文字どおりショックアブソーバーが逆さまについているわけだ。

これによりどういうメリットがあるのかというと、まず操縦性に大きく影響するとされるバネ下重量の軽減が図れる。正立式のショックアブソーバーは、重いオイル室やガス室を伴った本体とシェルケースが上下する。そうすると、路面からタイヤを通して強い入力が入ったときにスプリングが重いシェルケースからの力を受け止めなければならず、今度はスプリングがそのケースを押し返すまでにタイムラグが生まれる。倒立式ショックアブソーバーであれば、バネ下はピストンロッドとアウターチューブはあるものの、相対的に軽いものを受け止めればよいことになり、路面からの入力に素早く反応できる。つまり、路面への追従性がよくなるというわけだ。

もうひとつ倒立式のメリットとして、ストラット形式のサスペンションではどうしても弱いとされる横方向の剛性(キャンバー剛性)を向上させることができるという面もある。ストラット式の場合、ショックアブソーバー自体がサスペンションアームの役割を持つ。特にコーナリング中に横からの入力があった場合、その力によってストラットに横から入力が入ってしまい、結果としてピストンロッドの動きが悪くなる場合がある。倒立式は、ショックアブソーバー本体が上側、それを支える太いアウターチューブが下側にあることによって、デメリットをある程度解消してくれるわけだ。

ブレーキシステムは、動力性能の向上に対応し、GSRにはフロントに17インチ用ディスクとブレンボ社製の4ポットキャリパーを採用している。リアは16インチ用ディスクと2ポットキャリパーだ。エボリューションIVのリアは1ポットだったので、これは大きな変更点だ。耐フェード性はも
ちろん、高温時の効きの安定性が大幅に向上されている。

WRCは13戦7勝で二冠達成
エボリューションVのモータースポーツでの活躍は目覚しかった。エボリューションVのデビューは1998年シーズンのホモロゲーション取得のタイミングに合わせ、第5戦カタルニアラリーからとなった。当初はセットアップに時間が必要だったもののトミ・マキネンの活躍もあり、デビュー3戦目のアルゼンチンラリーで初優勝。そして、シーズンも後半となってから真価が発揮された。

マキネンがWRC記録となる同一ラリー5連覇を達成した第9戦フィンランドラリーを皮切りに、最終戦まで4連勝を果たしたのである。シーズン前半のエボリューションIVでの2勝を含めると、この年は13戦7勝を記録。三菱自動車はWRCに挑戦すること20余年にして、ついにマニュファクチャラーズチャンピオンを獲得した。さらに、マキネンが史上初のWRC3連覇も達成し、三菱はマニュファクチャラーズ/ドライバーズの二冠を獲得した。そういう面でエボリューションVは特別なクルマになったといえる。

何より価値があったのは、ライバルがラリー専用のWRカー規定のクルマであったのに対し、市販車の性能が大きくものをいうグループAでのタイトル獲得となったことだ。これは称賛されるべき部分であり、また三菱自動車の市販車ベースでのラリー参戦のこだわりともいえる。エボリューションVが戦闘力で有利だった面を見ていくと、まずエボリューションIVから大きく改良され、ワイドトレッド化されたことだ。エボリューションIVはターマック(舗装路)でやや苦戦したのに対し、エボリューションVはその弱点を克服し、ライバルのWRカーと渡り合った。

国内モータースポーツで見ると、エボリューションVは、エボリューションIVで失いかけた国内モータースポーツユーザーの信頼を取り戻したクルマになったといえる。RSが使用されることが主だったため、AYCがその本領を発揮することはなかったが、コンベンショナルなフルタイム4WDとしては、完成形に近いものになった。使いやすいエンジンと、トレッド拡大による安定感が最大の武器となった。また、異色だがスーパー耐久レースでは、プーマランサーエボリューションVがチャンピオンとなった。

ランサーGSRエボリューションV主要諸元
●全長×全幅×全高:4350×1770×1415mm
●ホイールベース:2510mm
●車両重量:1360kg
●エンジン:直4DOHC16バルブ+インタークーラーターボ
●排気量:1997cc
●最高出力:280ps/6500rpm
●最大トルク:38.0kgm/3000rpm
●トランスミッション:5速MT
●駆動方式:フルタイム4WD
●10.15モード燃費:9.7km/L
●車両価格(当時):324.8万円

[ アルバム : ランサーエボリューションChronicleダイジェスト(8) はオリジナルサイトでご覧ください ]

文:Webモーターマガジン 飯嶋洋治(FAN BOOK編集部)
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みんなのコメント

7件
  • xxv********
    市販車規定の為とはいえ、こんなラリーデチューンカーが300万ちょっとで手に入るなんて信じられない時代。普通に利益乗っけたら最低でも7、800万
    下手すりゃ1000万オーバーだろうな。豊かな頃の日本って無茶苦茶ですね。
  • scandal
    たまたま仕事中に陸送でⅤが自走で走ってるのを見て
    何処の車だろう?と車雑誌を見たりして情報を集めて
    ひとめぼれだったⅤの入手は無理だったので次の年に
    発売のⅥの社外秘のカタログのみでⅥを購入してしまった
    思い出が。

    それだけ自分的にⅤはインパクトがあるデザインだった。

    初乗りの時に思ったのは、コーナーでの違和感が
    ビックリする位に半端ないのは今でも覚えてるw
    (例えるならレールの上を走ってる印象)
※コメントは個人の見解であり、記事提供社と関係はありません。

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