この記事をまとめると
■N-BOX開発陣が3代目初のマイナーチェンジの狙いを語った
絶対王者が「オラ顔」で他車を置き去りにする! ホンダN-BOXの一部改良を徹底解説!!
■市場の声を受けて迫力あるデザインや質感向上など商品力を強化した
■価格競争が激化するなかでも総合性能と買いやすさでNo.1維持を目指す
市場のニーズを反映したマイナーチェンジ
2023年10月デビューの現行3代目では初のマイナーチェンジを2026年7月16日に受けた、ホンダのベストセラー超背高軽ワゴン「N-BOX」(エヌボックス)。
エアロ仕様「カスタム」のデザイン変更を中心としつつ、ラインアップ全体の装備充実を図ってきた今回のマイナーチェンジの背景とは。開発を指揮した本田技術研究所四輪研究開発センターの諫山博之さんと、商品企画を担当した本田技研工業日本統括部営業企画部商品企画課の蛯谷範明さん、デザインを担当した本田技術研究所デザインセンターLTVデザイン開発室の沼澤篤史さんに聞いた。
──まず、現行モデルの3代目へフルモデルチェンジする際、2代目にどのような課題があり、それに対し3代目をどう作ってきたか、振り返っていただけますでしょか?
諫山さん:世のなか全体の動きが「シンプルクリーン」になっていたので、標準仕様は家電に見立て、グリルまわりなどにメッキを使わずボディ色を使いました。「カスタム」はギラギラを目指すのではなく、品格・高性能を目指そうとしました。
──2024年9月に追加されたクロスオーバー仕様「ジョイ」に関してはいかがですか?
諫山さん:「ジョイ」は3代目を開発する段階で存在していましたが、発売するタイミングはずらすことにしました。
我々は日本地図のなかに、私、家族、友達、みんな、といった具合に、「N」を日本中に散りばめよう、日本中を喜ばせようと考えていました。
──3代目は2代目に対し、デザインと装備の両面でシンプルになりすぎた印象を受けましたが、実際のユーザーの声はいかがでしたか?
諫山さん:標準仕様は「シンプルクリーン」なデザイン、とくにインパネは視界も広くなりましたので、小柄な女性も運転しやすいと好評でした。
一方「カスタム」については、それをブラック化したインテリアの色はよいのですが、エクステリアデザインについては正直選んでもらえない、2代目からの乗り換えが進まなかったのが事実です。
──2代目に設定されていたロングスライドシートなどが3代目では整理されましたが、そのあたりの影響はありませんでしたか?
諫山さん:そうですね、フロントロングスライドシート仕様がじつは高くてあまり売れていなかったので、そこは割り切ろうと。その断捨離をすることで、グローブボックスの容量拡大や足もと空間の拡大にもつながったので。
──今回のマイナーチェンジの目玉は「カスタム」のデザイン変更だと思いますが、ホンダさんの歴史をひもとくと、ホンダさん自身はやはり「あまりオラついたデザインにはしたくない」というお気もちが強いと感じています。
沼澤さん:ホンダは結構デザイナーが強い会社で、デザイナーがどうしてもこういう世界観にしたいというと、開発がそれについていくのが常です。全世界的に見てもメッキ加飾は環境問題の観点からも、多いのは日本だけになっています。デザイナーの感覚はグローバルなほうに寄っていくので、どうしてもクリーンな方向に傾倒するところは正直あります。中国向けのBEVを見るとわかると思いますが……。
──ホンダさんの過去のクルマ、エリシオンのモデルライフや歴代オデッセイ、ステップワゴンなどの変遷を見ても、最初は他車との差別化もあり「シンプルクリーン」な路線で出すものの、なかなかそれが市場に受け入れられず、マイナーチェンジやフルモデルチェンジでやむなく、オラついた雰囲気に軌道修正するパターンが多いですよね(笑)。
諫山さん:否定できません(笑)。
──営業部門や市場の声としては、そういうデザインの方向性にしてほしいという声が多かったのでしょうか?
蛯谷さん:両方のパターンがあって、シンプルなほうが好きという方もいらっしゃいます。ただ一番は、「カスタム」は標準仕様に対してより強い個性と差別化、「カスタム」らしさを、お客様は強く求めてきますね。
その「カスタム」らしさの重要なポイントのひとつに、力強さや迫力、それはお客様自身がそのクルマを見た時のデザインもそうですが、ほかの方に見られた時にもそういうクルマに自分自身が乗っているという、両方の観点でしっかり差別化を求められます。そういった声を形として表したのが、今回の「カスタム」です。
我々もメッキありきのデザインではなく、力強さをベストな形でデザインするのに、最終的にこの形になりました。
全グレードで細かくアップグレードしている
──「カスタム」の前後バンパーが全面ボディ同色になったのは、確かに迫力だけではなく質感も上がったと感じています。
沼澤さん:すべて塗装仕様になっています。ミラーの付け根とピラー以外に未塗装の部位はないですね。他社の軽自動車でもなかなか見られませんね。いろいろしていったら「もう樹脂パーツがないぞ」と(笑)。質感を上げようとすると結果的に乗用車らしくなりますね。
蛯谷さん:N-BOXは、価格は大前提として大事ですが、軽自動車のなかではもっとも質感に強いこだわりをもつお客様が選ぶクルマになってきています。そのなかでも「カスタム」はとくにこだわりが強いので、力強さだけではなく上質感をひとつひとつ高めています。
諫山さん:乗用車ユーザーの方がダインサイジングしても「全然軽自動車のクオリティじゃないよね」といってもらえるくらい進化していると思います。
──「ジョイ」に関しては、発売当初から「あとから黒内装が追加されるだろう」と予想していましたが、これは既定路線だったのでしょうか? それとも市場の声を受けて追加することになったのでしょうか?
諫山さん:市場の声ですね。ベージュのチェック柄も、気に入ってくれる方は「これは面白いね」といって買ってくれるのですが、一方で「ちょっと買いづらいよね」というお客さんがかなりいたのは事実です。ですから今回は、変更ではなく追加しているので、どちらも選べるようにしています。
──実車を拝見すると、「ジョイ」の「ブラックスタイル」はちょっとワルっぽい雰囲気が出ていると感じました。実際の狙いは……?
沼澤さん:ワルっぽい雰囲気ではなく、シート生地と同様に、届けるお客様をもっと広げたいということで、従来の可愛らしさに対し、頼れる強さを足したいというのが目的ですね。結果的にふたつ選べるので、より広いお客さんに届けたいですね。
──標準仕様に関しては……?
諫山さん:今回はフロントグリルとリヤライセンスガーニッシュにメッキ加飾を入れています。このデザインは非常に評判がよいので、変にいいじらないほうがいいと思つつ、でも少し進化させたいと思い、このようにしました。
それから使い勝手の面ではUSBチャージャーやシートバックアッパーポケットを標準装備にし、安全面ではマルチビューカメラシステムを選べるようにしています。
また2トーン色のルーフ色をモカからホワイトに刷新しました。
──3代目になった時点で標準仕様にターボ車が設定されなくなりましたが、標準仕様のターボ車はやはり売れないものなのでしょうか?
諫山さん:2代目の時点で比率が低かったうえ、他社やホンダのほかの車種でも、標準仕様にターボ車はないんですね。N-ONEやN-WGNの標準仕様にもターボ車は設定していないので、それらと揃えるという観点もあります。ただし「カスタム」などにはそのデザイン性に合わせるという意味でターボ車を設定しています。
──今回のマイナーチェンジでメカニズムの変更点は何かありますか?
諫山さん:性能面ではありませんが、じつは「カスタム」のフロア制振材を増やしています。せっかく内外装の質感を高めているので、走りの質感も少しでも高めたいと考えました。
──他社でも標準仕様と「カスタム」とで静粛性に差を付けていることが多いですが、これは価格への影響が大きいからでしょうか?
諫山さん:価格への影響も出ますし、とくに「カスタム」のターボ車は高速道路を走ることが多いので、家族で出かけて車内で会話するのに、静粛性を高めていますね。
──同じくターボ車の設定がある「ジョイ」の静粛性は変更されていませんか?
諫山さん:「ジョイ」は変更していません。「カスタム」はやはり上質を求めるお客さん、とくにダウンサイジングする方に「やっぱり軽のクオリティだよね」といわれない位置付けにしたいという想いもあります。軽自動車であるのはサイズだけで、乗る人は同じなので、デザインだけではなく走りや装備に関しても乗用車レベルにしたいという気もちですね。
──多くのグレードでナビやETCが標準装備化されましたが、近年は車両価格がものすごい勢いで上がっているので、とくにこのクラスは値上げが難しいのではと感じています。そのなかでは今回は9インチのナビが標準装備化されましたが、マイナーチェンジ前もっとも高価な9インチナビの装着率が圧倒的に高かったのでしょうか?
蛯谷さん:タイプとグレードによって異なっており、とくにターボ車や上位グレードほど9インチナビの比率が高い傾向でした。全体では9インチと8インチのナビで7~8割を占め、法人需要を除いた残りのお客様の大半はディスプレイオーディオを選んでいただいています。9インチナビは、ターボ車ですと5割以上になりますが、NA車ですともう少し比率が下がりますね。
標準装備充実の狙いとは
──ナビが標準のグレードにレスオプション設定はありますか?
蛯谷さん:ありません。メーカーの工場で標準装着されます。これは、従来もナビの装着率が9割を超えていたのが前提にありますね。
──スマートフォンナビが普及しているなかでこれほどナビの装着率が高いのは驚異的だと思いますが、これはホンダさん全体の傾向なのでしょうか?
蛯谷さん:車種によってもわかれますが、日本の場合、クルマを購入するのは40歳代以降が多いので、そういったお客様はナビの機能が最初から付いていたものを選びたいというご要望が強いですね。若いお客様のなかにはナビアプリを使いたいというご要望があるのも事実です。
──ホンダさんの場合、テレマティクスナビ「インターナビ」を他社に先駆けて開発されていますが、そういった機能的な面は、今回標準装着されるナビはどのようになっていますか?
蛯谷さん:これまで販売してきたディーラーオプションのナビと基本的には変わりませんが、CD/DVDスロットを廃止して、そのぶん操作性を改善しています。「ホンダコネクト」の機能は引き続き使えます。音楽はスマートフォンやオーディオプレイヤーからBluetoothなどから転送して再生するほうが増えてきましたね。
──3代目N-BOXがデビューして間もない2023年11月にスズキさんが3代目スペーシアを発売し、日産さんと三菱さんは2025年10月に新型ルークスとデリカミニ、eKスペースを発売されましたが、そうしたライバルの世代交代によってN-BOXが受けた影響はありますか?
蛯谷さん:そうですね。競合他車もそれぞれの特性をしっかり出してきているというのが全体的な印象です。私たちのN-BOXはトータルパッケージでNo.1を目指し、今回それをさらに進化させていきますが、日産さんや三菱さんですと、12インチ以上のモニターやマルチカメラがポイントになるのでしょう。スズキさんのスペーシアはあの価格と装備とのバランスですごく頑張っていると認識しています。
ですので私たちはやはり販売の面で競合他車の影響を受けていると思いますが、だからこそ私たちはトータルパッケージのよさをきちんとお客様に伝えていきながら、お買い求めやすい環境と装備のバランスを追求したのが、今回の進化のポイントですね。
基本性能としては、エンジンの出力はもちろんですが、衝突安全性でもJNCAPのファイブスター賞を獲得していたり、実際にお客様が買ったあとに使っていくなかで、ひとつひとつのポイントで「あ、よかったな」と、日々の生活にできる限り貢献していきたいと考えています。
──販売面の目標はやはり、これからもNo.1をキープしていくことになると思いますが、現在の3代目になってから非常に厳しくなっている価格の問題を含め、どのように巻き返していくお考えでしょうか?
蛯谷さん:ナビをご購入いただくお客様を起点としながら、それそれのモデルに対して、たとえば標準仕様はセンターUSBチャージャーやシートバックアッパーポケット、車速連動ワイパーなど、毎日使える装備を付けつつ価格を最小限に抑えてお届けしやすい価格にしました。
一方で「カスタム」は、ナビやフォグランプなど、これまでディーラーオプションで選べてもかなりお金がかかったものの、トータルでのお支払額を抑え、さらに残価設定ローンに組み込むことで、月々のお支払いを抑えるという二段構えで、お客様の負担を減らすことを非常に重視しています。
N-BOXはクルマの素性はよいものの、競合他車に対し価格が高いといわれているのは事実です。ですがその素性のよさを起点にしっかり選んでいただけるよう、お買い求めやすさにかなりこだわって価格設定しました。
──そうした価格設定を含め、発売後どうなるか、期待したいと思います。ありがとうございました!
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