数々の名機を生み出したドイツ
text:David Finlay(デビッド・フィンレイ)
【画像】欧州随一の自動車大国【ドイツの自動車ブランド10選】 全256枚
translator:Takuya Hayashi(林 汰久也)
ドイツは、自動車の黎明期から現在に至るまで、エンジンを生産し続けてきた。
約140年の間に、ドイツのエンジンのラインナップは驚くべきものに発展した。日常的な輸送用のシンプルで効果的なものから、驚異的なパワーを持つ巨大ユニットまで、あらゆるものがドイツで作られた。
その中でも注目すべきエンジンを、クルマを中心に20台ピックアップした。数を絞ることで、必然的に多くの有力候補が除外されたことをご了承願いたい。
アウディR10 TDI
アウディが開発したツインターボの5.5L V12ディーゼルエンジンは、2006年にスポーツレーシングカー「R10 TDI」に搭載されてデビューした。
R10は、その年のル・マン24時間レース、セブリング12時間レース、アメリカン・ル・マン・シリーズのLMP1クラスで優勝し、大成功を収めた。それまで、ディーゼルエンジン搭載車でこれほど活躍したクルマはなかった。
2007年と2008年、アウディはル・マンとALMSで優勝を繰り返したが、その後、R10は5.5LのV10 R15 TDIという別のディーゼル・レーサーに取って代わられた。
このエンジンは、フォルクスワーゲン・グループのディーゼルエンジン生産能力の高さを示すものだったが、少々問題のある遺産となってしまった……。「TDI」のロゴが刻まれたレースカーを再び見られることはまずないだろう。
アウディR5
R5は、多くのアウディ車と一部のフォルクスワーゲン車に搭載された5気筒エンジンのファミリーだ。最も有名なのは、1980年以降のアウディ・クワトロに搭載された2.1Lターボエンジンで、最初はシリンダーあたり2バルブ、後には4バルブになった。
アウディは1980年代前半の国際ラリーを席巻したが、それはこのエンジンのおかげだ。また、このエンジンがグラベルでトラクションの問題を起こさなかったのは、アウディが4輪駆動のアイデアを取り入れたからである。
アウトウニオンV16
1934年から1939年にかけてメルセデスとアウトウニオンが製造した恐ろしく速いグランプリカーやレコードカーは、どれも手強いエンジンを搭載していたが、アウトウニオンのV16はその中でも最も輝かしいものだったと言えるだろう。
ポルシェが設計したこのエンジンは、決して高回転型ではなかったが(6000rpmまで回ったバージョンは存在しない)、圧倒的なトルクとそれに見合う絶大なパワーを発揮した。
記録更新のためだけに作られた究極のバージョンは、排気量6.3Lで、最高出力は553psに達した。1938年、アウトウニオンは規則の変更により、グランプリ用に3.0L V12を開発することになった。
ベンツ・パテント・モートルヴァーゲン
カール・ベンツ(1844~1929)が1885年に製造した単気筒エンジンは、21世紀の視点から見ると頼もしいとは言えない。954ccという現在の小型ユニットと同様の排気量を持ちながら、1psもの出力を出すことができなかったのだ。
しかし、世界初の自動車と言われるベンツの「パテント・モートルヴァーゲン」に搭載されていたという点では、ドイツのみならず世界的に見ても重要なエンジンの1つだ。その後のバージョンでは、ベンツはさらに強力なエンジンを設計・製造し、出力は最大2psに達した。
ブリッツェン・ベンツ
1908年のフランスGPで2位と3位に入賞したベンツのマシンは、いずれも最低でも12Lの4気筒エンジンを搭載していた。
グランプリ規則の制約から解放されたベンツは、ブリッツェン(「雷光」の意)・ベンツという愛称で呼ばれるクルマのために、21.5Lの巨大なエンジンを開発。6台が製造された。
1909年には、目標速度である200km/hの陸上速度記録に挑戦し、成功を収めた。後に行われた230km/hの記録はLSR(自動車速度記録)の規定により公認されなかったが、ドライバーのボブ・バーマン(1884~1916)は非公式に、飛行機を含むあらゆる乗り物のそれまでの最高速度を達成した。
BMW M20
BMWといえば、滑らかな走りの直6エンジンが有名である。その代表格であるM20は、1977年に2.0Lとして3シリーズと5シリーズに搭載された。
M20は主にセダンに搭載されていたが、過激なBMW M1ロードスターにも2.5Lのエンジンが搭載されていた。80年代の広告で強調されたように、2.0Lの場合、4気筒のライバルに比べて明らかに滑らかだった。
BMW S14
S14は、初代BMW M3に搭載された高回転型4気筒エンジン。市販車では2.3Lから始まり、後に2.5Lまで拡大された。モータースポーツでは、チャンピオンシップのレギュレーションに合わせて2.0Lに縮小されることが多かった。
チューニングされたS14の絶叫により、M3は非常にドラマチックなラリーカーとなったが、それ以上にサーキットレースで成功を収め、オーストラリア、英国、ドイツ、イタリア、欧州、そして世界ツーリングカー選手権で優勝したのである。
BMW N74
N74はツインターボのV12で、6.0Lから6.75Lまでさまざまな排気量のものが用意されている。出力は約540psから630psを超えるものまであるが、このエンジンはスポーツカーへの搭載を目的としたものではない。
このエンジンを搭載したBMWは、写真のM760Li xドライブのような7シリーズファミリーの高級車のみだった。また、2010年からは、BMWが現在所有しているロールス・ロイスのモデルにも採用されている。
ブガッティW16
ブガッティはフランスの高級車ブランドだが、フォルクスワーゲンの傘下にあり、ドイツの技術がふんだんに使われている。このエンジンは、狭角の4.0L V8を2基、共通のクランクケースに搭載することで、独特のレイアウトを実現している。
このエンジンは、コンセプトカーのアウディ・ローゼマイヤーとベントレー・ユーノディエールに搭載された後、2005年のブガッティ・ヴェイロン(写真)で量産された。
ヴェイロンでは1000psを発揮していたが、2016年にヴェイロンに代わって登場したブガッティ・シロンでは、その出力が1500psに引き上げられた。
ダイムラーDB603
DB603は、ドイツをはじめとする世界各国で開発された自動車用エンジンの中でも、最も優れたエンジンの1つである。そのクルマとは、メルセデスT80であり、陸上の速度記録に挑戦するために設計されたものである。
44.5LのV12エンジンは約3000psを発生し、1930年代半ばに開発プロジェクトが開始されたときには十分な出力と思われた。
しかし、第二次世界大戦が勃発したことで、記録更新への関心が薄れてしまったのである。メルセデスが再び開発に取り組めるようになったときには、速度記録は634km/hにまで伸びていた。
これはT80の目標速度を30km/h以上も上回るものであったため、プロジェクトは中止された。
DKW 2ストローク
DKWは、ループ・スカベンジング(ループ掃気法)というシステムの特許を取得し、それをうまく使い、近づく者には弁護士をつけることで、2ストロークの自動車とオートバイの世界的なトップメーカーとなった。
1928年には、DKWはアウディを買収する余裕があるほどの成功を収めていた。
1960年代に入って、DKWはようやく4ストロークのF103を開発した。当時のオーナーであるフォルクスワーゲンは、騒音や臭いのあるエンジンを連想させるとして長い間眠っていたアウディの名前を復活させた。
もし、2ストロークエンジンの開発がなければ、アウディは今ではほとんど忘れ去られていただろう。
マンB&W 11G95ME-C9.5
この記事は主に自動車について書いているが、ドイツ製のエンジンについては、フォルクスワーゲン傘下のマン(MAN)社が製造し、全長400m、1万9千個のコンテナを積んだ巨大なMSC JADEに搭載された驚異的なマリンユニットを抜きにしては語れない。
この11気筒2ストロークエンジンは、わずか80rpmの低回転で約10万4000psの出力を発揮する。2万6977Lの排気量は、世界最大の内燃機関と言われているフィンランドのバルチラ・スルザーRTA96-Cよりも約1677L大きい。
メルセデスM139
M139は、メルセデスAMG A 45、CLA 45、GLA 45に搭載されている2Lのターボチャージャー付き4気筒エンジンだ。
このエンジンには、387psと422psの2種類のセッティングが用意されている。後者の場合、市販車に搭載されている4気筒エンジンの中で最もパワフルなエンジンと言われている。
三菱は、英国仕様のエボXのために、同じ排気量と気筒数の446psのエンジンを開発したが、わずか40台しか製造されなかった。市販車の定義によってはエボは該当しないかもしれないが、メルセデスのモデルは紛れもなく該当する。
メルセデスM156
M156は、メルセデスの子会社であるAMGがゼロから設計した初のエンジンという点で、歴史的に重要な意味を持つ。排気量はほぼ6.2Lだが、E 63(写真)やRクラスのハイパフォーマンス・バージョンなど、搭載されたモデルのタイトルにはすべて「63」が付けられている。
M156は2006年から2011年まで生産され、最高出力は525psに達した。さらにパワフルなM159は、メルセデスSLS AMGに搭載された。
メルセデスM196
メルセデスは、W196のために2.5L直8のM196エンジンを開発し、300SLR用に2.9Lに拡大した。
技術的な注目点は、ダイレクト・フューエルインジェクションとデスモドロミックバルブである。デスモドロミックバルブとは、スプリングの力でバルブを閉じるのではなく、カムとロッカーアームによって閉じるものである。
メルセデスがモータースポーツから撤退する前に、ファン・マヌエル・ファンジオ(1911~1995)がW196を駆って1954年と1955年にF1世界チャンピオンに輝き、スターリング・モス(1929~2020、写真)が300SLRで1955年のミッレミリアを制したのは有名な話である。
オペルCIH
オペルのカム・イン・ヘッド(CIH)エンジンの名前は、カムシャフトがブロックではなくシリンダーヘッドに取り付けられていたことに由来する。
CIHは、当初はオペルのみに採用され、後にヴォグゾールの同型車にも採用された長寿命のエンジンである。1965年にオペル・レコルトでデビューし、30年後には欧州でフロンテラとして販売されたいすゞのミューにも採用されている。
ポルシェのフラットシックス
ポルシェは、初代フォルクスワーゲンや自社の356、912のために空冷フラット4エンジンを設計した。911ではこれにさらに2気筒を追加し、世界最高のエンジンの1つとして評価されている。
ターボの搭載など細部の変更はあったものの、最も重要なポイントは、911の販売開始から30年後の1997年に導入された水冷化であった。
フォルクスワーゲンEA827
今ではフォルクスワーゲン・グループのエンジンとされているEA827だが、実は1972年のアウディ80でデビューしている。数十年にわたって1.3Lから2.0Lまでの複数のサイズが用意され、アウディやセアト、スコダにも搭載されていた。
最も重要なのは、初代フォルクスワーゲン・ゴルフGTI(写真)に搭載されていたことであり、最初のホットハッチとみなされている。
その後、スーパーチャージャーの搭載(G60のバッジを付けたモデル)や16バルブのシリンダーヘッドの採用などが行われた。
フォルクスワーゲン・タイプ1
タイプ1は、1938年から2003年までの初代フォルクスワーゲン(愛称ビートル)の全生涯にわたって使用された、世界で最も長寿な量産エンジンの1つだ。
このエンジンは、ビートルの他に、トランスポーターを含むバンのタイプ2、セダンのタイプ3、スポーツカーのカルマンギア、そして多くの軽飛行機に搭載された。
排気量は985ccから1.6Lまで。フォルクスワーゲン411、412やポルシェ914には、1.7~2.0Lの大型派生モデルが搭載された。
フォルクスワーゲンW8
ブガッティが採用したW16のレイアウトは、フォルクスワーゲンも試みている。4.0LのW8は、狭角の2.0L V4エンジンを2基搭載し、1本のクランクシャフトを共有していた。
最高出力275psを発揮し、一般に販売されるクルマに搭載された唯一のW8エンジンであった。2001年にフォルクスワーゲン・パサートに搭載されてデビューしたが、3年後には生産中止となった。いまだに後継機が出る気配はない。
申込み最短3時間後に最大20社から
愛車の査定結果をWebでお知らせ!
申込み最短3時間後に最大20社から
愛車の査定結果をWebでお知らせ!
愛車管理はマイカーページで!
登録してお得なクーポンを獲得しよう
ホンダ新型「プレリュード」まもなく登場? 22年ぶり復活で噂の「MT」搭載は? 「2ドアクーペ」に反響多数!海外では“テストカー”目撃も!? 予想価格はいくら?
不要or必要? やっちゃったらおじさん認定!? 「古い」「ダサい」といわれがちな [時代遅れ]な運転法
「ノーマルタイヤで立ち往生」に国交省ブチギレ!?「行政処分の対象です」2年連続で大量発生…「スタックの7割が夏用タイヤ」今年も緊急警告
「黄信号だ。止まろう」ドカーーーン!!! 追突されて「運転ヘタクソが!」と怒鳴られた…投稿に大反響!?「黄信号は止まるの当たり前だろ」の声も…実際の「黄信号の意味」ってどうなの?
オヤジむせび泣き案件!! ホンダの[デートカー]が帰ってくるぞ!! 新型[プレリュード]は究極のハイブリッドスポーツだ!!!!!!!!!
申込み最短3時間後に最大20社から
愛車の査定結果をWebでお知らせ!
申込み最短3時間後に最大20社から
愛車の査定結果をWebでお知らせ!
店舗に行かずにお家でカンタン新車見積り。まずはネットで地域や希望車種を入力!
みんなのコメント
トヨタはなんでハイクラスエンジンは他社供給なのか?
デザインに力入れてるならわかるんだけど
カッコ悪い車種ばかりだし