2024年に全日本ロードレース選手権および鈴鹿8時間耐久ロードレース選手権に初参戦し、強さを見せたDUCATI Team KAGAYAMA。2年目となる2025年シーズンは、鈴鹿8耐での初優勝を目標に掲げており、さらにドゥカティ パニガーレV4 Rの強さを引き出すためにスーパーフォーミュラを初め4輪から技術を取り入れるという一大プロジェクトを遂行している。
ライダー時代からスズキ一筋でレースを闘ってきたチーム代表監督の加賀山就臣氏だが、2024年はイタリアのドゥカティとタッグを組んでいる。初年度ながらもJSB1000クラスでは、海外車両初優勝を含む3勝を挙げてランキング3位、鈴鹿8耐では4位と功績を収めた。今季もそのプロジェクトを継続し、ドゥカティのファクトリーマシンでさらなる目標に挑む加賀山監督はターゲットを次のように語った。
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「昨年はまず1回でも多く勝ちたい、というところからスタートしました。チャンピオンは、1年目からおこがましいのかなと感じる部分もありましたが、昨年は3回勝てるだけの実力があったので、今年は当然勝ち星を多くとって、チャンピオンというタイトルを目標に戦いたいと思っています」
「鈴鹿8耐も当然出場しますし優勝を目指して改善するところは改善していきたいですね。スプリント車両のドゥカティの力がまだ出しきれず、このままだと戦えないことが多いので、耐久用パーツの開発を進めて必要なシステムを整えていけば、昨年は4位だった鈴鹿8耐が3位、2位と上がっていくだろうし、優勝を目指して今まさに準備している最中です」
昨年の鈴鹿8耐で外国人ライダーを召喚し4位を獲得したが、加賀山監督が語るように外国車ならではのある課題があった。ドゥカティ パニガーレV4 Rは、1本のスイングアームで片側から後輪を支持する片持ち式が採用されている。過去にはホンダがV4エンジンを搭載したマシンで採用しており、今やドゥカティを初めMVアグスタ、BMWなど多くの海外メーカーが取り入れている。ところが、EWC車両ではドゥカティのみとなっている。
片持ち式は後輪を支えるアクスルまわりの剛性が確保しやすく、製造および形を自由にデザインできて製造工程を減らせるため、部品が少なくて済むという利点がある。しかし、耐久レースで重要となってくるピットの際には、タイムロスに繋がるデメリットもあり、大きな課題となっていた。
片持ち式はピットインしたバイクに対して横からスタンドを刺して持ち上げる必要があり、静止してから刺すため2秒ほどのロスが出る。対して両持ち式はピットインしてきたバイクが止まり切る前から追いかけてスタンドをかけることができるため、時間の短縮が可能だ。トラック上で2秒稼ぐのは至難の業であり、DUCATI Team KAGAYAMAのチーム内で鈴鹿8耐はピット作業での短縮が鍵を握るということが昨年の参戦を経て明確となった。
そのため、今年は優勝に向けてなんとかピットでのロスタイムを改善すべく、なんとスーパーフォーミュラをはじめとした4輪のセンターナットに目をつけて、実戦に向けた耐久パーツの開発が進められているという。
このことについて、加賀山監督は「今2輪で4輪の技術が活かせるようなことを一生懸命アドバイスをもらっています。2輪で使っているセンターナットは、4輪のアイデアが何も入っていなくて、ドゥカティにはクイックチェンジをするアイデアがないので、それを解消できるように(4輪のアイデアを元に)作り変えています」と語った。
その耐久パーツの開発を担っているのが、カートから4・2輪におけるパーツの作製や加工、さらにメンテナンス冶具を制作しレースの世界でも幅広く活躍しているTriple K(株式会社加藤製作所)だ。加賀山監督とはライダー時代からパーツを提供し10年以上の付き合いがあり、さらに今後は4・2輪問わずさらにレース界での活躍を広めていきたいというTriple Kに白羽の矢が立ったのだ。そこで代表取締役を務める加藤雅規さんに話を伺うと、パーツ開発の経緯を以下のように語った。
「加賀山さんが昨年からマシンを変更し、ドゥカティのバイクは耐久レースの経験があまりなく、片持ちでタイヤを交換するタイプなのでどうしようと話を持ちかけて頂きました。昨年は僕も4輪の方で機材や部分を作らせて頂いていたなかで、担当していたHELM MOTORSPORTSに吉田則光さん(スーパーフォーミュラではDOCOMO TEAM DANDELION RACINGのチームディレクターを務めている)がエンジニアで来て頂いた関係で出会いがありました。昨年の鈴鹿2&4レース(3月9~10日)の際には吉田さんを含めたDOCOMO TEAM DANDELION RACING、加賀山さんとお互いのピットを行き来して色々模索しながら話をしていましたが、その時点ではすでに時間が限られていました」
昨年の時点でも、何度もミーティングなどを重ねられた末に試作品は完成していたようだが、加藤さんが言うように7月21日に決勝日を迎えた鈴鹿8耐までには開発およびテストまでの時間も少ない。さらにナットとシャフトが噛み込んで閉まらなくなるというトラブルが発生する確率が高かったとのことで、昨年は実戦での使用を断念し、今年は目標達成とピットのタイムロス改善のために力を合わせて作り直されている。
「昨年はナットとソケットや交換する工具だけを作らせて頂きましたが、今年はスピンドルというメインのシャフトから製造しています。バイクの場合はネジも細かいですが、スーパーフォーミュラやスーパーGTで使用しているネジの規格を採用し、ピッチが少し荒いネジを採用したいということで、今動いているところですね。今はなんとか形にはなった程度で、まだ交換するのにうまくネジが入らないなど、いろいろなトラブルなどもありますが、改良して鈴鹿8耐テストまでにはなんとか間に合わせなければいけないなと思っています」
また、4月19~20日にモビリティリゾートもてぎにて開催されたもてぎ2&4レースの時にも綿密なミーティングが行われていたようだ。
その際には「タイヤ交換をするためのインパクトレンチはどのようなものがいいか、スムーズなタイヤ交換をするためにはどうすればいいか、人間でのトラブルはどのようなものが挙げられるかなど、タイヤ交換にまつわることをDOCOMO TEAM DANDELION RACINGさんと、加賀山さんも交えてピットを行き来しながら話していました」というやりとりがあったと加藤さんは語った。
DUCATI Team KAGAYAMAおよび加賀山監督が、4輪のセンターナットに目を付けて取り入れようとするのは、長年の経験ありきの奇抜な発想だ。さらにスーパーフォーミュラと全日本ロードが一挙に集う2&4の現場をカテゴリーを問わず意見交換がなされ、そして4輪の技術を活かして鈴鹿8耐用のパーツが今まさに開発されていると思うと非常に興味深い。
決して簡単なことではなく、一大プロジェクトなだけに試行錯誤され難しい道のりであることもうかがえるが、加藤さんは「やっぱりレース関係はトラブルが起きたらそれでレースが終わってしまいますし、タイヤ交換は1秒や2秒争うので、そこでトラブルが起きてしまったら部品屋としては嫌ですよね。加賀山さんのチームは今年も調子がいいので、足を引っ張っらないようにしていきたいですね」と熱い想いも語った。
6月11~12日、18~19日には2週連続で鈴鹿サーキットにて鈴鹿8耐に向けたテストが行われる。そこでパーツの確認を経て、今年こそは実際に本戦でも使用されるのか非常に楽しみなところ。完成して採用されることになれば、DUCATI Team KAGAYAMAが掲げる鈴鹿8耐での初優勝も一気に近づくことになる。さらにこのことがきっかけで、ドゥカティを含む海外車両の参戦が増えたり、片持ち式の車両を使用する他のチームにとっても大きな希望となるかもしれない。
また、今季はMotoGPライダーの参戦や強豪Team HRC、2019年以来に復活するYAMAHA RACING TEAM、EWCフル参戦組に加えてさらに混戦となることが予想される。加賀山監督も「さらに強くて速いライダーを呼びたい!」と体制を強化して挑むということだが、今回のプロジェクトがどのような結果へ導くのか、新たな道標ともなりそうなだけにぜひ注目していきたいところだ。
[オートスポーツweb 2025年06月04日]
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