現在位置: carview! > ニュース > ニューモデル > 【ダイハツ ムーヴ 新型】スライドドア採用にカスタム廃止、大胆進化のムーヴ「四角く見せたくなかった」動きのデザインとは

ここから本文です

【ダイハツ ムーヴ 新型】スライドドア採用にカスタム廃止、大胆進化のムーヴ「四角く見せたくなかった」動きのデザインとは

掲載 3
【ダイハツ ムーヴ 新型】スライドドア採用にカスタム廃止、大胆進化のムーヴ「四角く見せたくなかった」動きのデザインとは

ダイハツはフルモデルチェンジした軽ハイトワゴンの新型『ムーヴ』を発売した。大きな特徴として初めてスライドドアを採用したほか、「カスタム系」の廃止もトピックだ。

今回はそんな新型ムーヴの変化と進化について、デザインの面からその魅力を紐解いていく。話を聞いたのは、エクステリアデザインを担当したダイハツデザイン部プロダクトクリエイト室主任の河合徳明さんだ。

ダイハツ ムーヴ 新型のデザインスケッチを見る

◆「ムーヴ」があえて選ばれてきた理由
河合さんは、これまで『ムーヴキャンバス』の初代と2代目を担当。そのノウハウをしっかり生かせるということで任命されたようだ。しかし当初は戸惑いもあったという。「新型ムーヴの企画ではバランスが大事。堅実なクルマであるとともに、乗用のど真ん中を狙ったものでした。それをそのままデザインしてしまうと特徴のないものになってしまい、ムーヴの目指す方向とは違うので、もう一段ブレークする必要を感じました」と話す。

そこでユーザーの購入動向に目を向けた。ポイントは「消極的な選択なのかどうか」だった。「単にバランスが良いのでこれを選んでおけば無難、みたいな選び方をされているのではという危機感がありました。しかしそうではなく、『タント』に譲ったとはいえ月数千台のお客様に購入いただいているクルマですから、何かしらの理由があっての指名買いなのではないか」と気付いた。「この世代のお客様はこんな特徴があり、こういうクルマが欲しいということが見え始めて、デザインが一気に転がり始めました」と河合さん。そこで生まれたコンセプトが、“動く姿が美しい 端正で凛々しいデザイン”で、「そういうクルマにしていくぞとなりました」。

そのターゲットとなる“お客様”とは、「若いころにバブル時代、青春時代を過ごされた方々で、いまはお子様が手離れし、もう一回夫婦でどこかに出かけたい。そういう時に乗っていただきたいのがこのムーヴです。あの時の気持ちをもう一度ではありませんが、スタイリッシュで軽快に走りそう、普通に格好良いクルマを目指しました。同時にきちんと実用的で堅実であること。これこそがムーヴがもともと引き継いできたものであり、コアの部分。それがお客様に指名買いしていただいている重要な部分ではないか」ということだったのだ。

◆「カスタム」をなくして生まれた「2つのフロントフェイス」
さて、ムーヴといえば“裏ムーヴ”ともいわれたカスタムの存在も大きかった。しかし新型では姿を消した。「カスタムを標準と一本化しようという話は企画当初からありました。先代あたりからお客様の層が変わり、標準車とカスタムのユーザー像にそれほど違いがなくなったのです。それよりもローグレードとハイグレードのように装備が充実しているか、よりスポーティーかどうかで選択されているのです」と河合さん。そこでシンプルに1本化しその中で差を作ればいいと考えた。その結果として、「RS」と「G」、そして「L」と「X」で顔つきを若干変え、内装も前者はダーク系、後者はライトカラー系とされた。

そのフロントフェイスについて河合さんは、「基本的な記号性は一緒ですが、よりシンプルにまとめながら作っています。そうしながらRSとGは裏面塗装のつるっとしたガーニッシュでシグネチャー付きのLEDヘッドランプを採用しています。XとLはブラックのガーニッシュとLEDヘッドランプ。ガーニッシュからヘッドランプまで連続性を持たせて、なるべくひとつに見えるような意匠にしています」と語る。

実はXとLグレードは当初ハロゲンランプだった。しかし、「それではこの表情が絶対作れないと開発責任者に頼み込みフルLEDヘッドランプを採用出来ました」とこだわった。

◆四角く見せたくなかった
そして、新型の目玉でもある初採用のスライドドアだ。実用的な装備でありながら、当然デザイン上には制約も生まれる。河合さんは、「小さいクルマにスライドドアを採用するとどんどん四角くなってしまうんです。せっかく最初のコンセプトでいかにも走りそうな、といっているにも関わらず、箱みたいなクルマができてしまうので、そこは困ってしまいました。そこもブレークスルーが必要でした」と明かす。

一番大きなポイントは、「フロントフィックスウィンドが付いているAピラー2本タイプのスライドドア車の中では、フロントウィンドシールドをかなり寝かせていること」だという。そこからスタートし、「それ以外の意匠もいかに四角く見えないようにするか、走りそうなスタイリングをするかというところをこだわって。もうずっとこの戦いでした」と河合さん。「作っては、いやまだ四角く見える。もっと変えて、まだ四角見えるというのをずっと繰り返してこのデザインに辿り着きました」。

その中でも特徴的なのはショルダーのキャラクターラインとその下の影面だ。そのラインは、グリルからヘッドランプ、サイドそしてリアコンビの前で消えている。そうすることで長いラインを感じさせ、結果としてクルマを長く見せている。しかし、「その下の影の部分をキレイにまとめるのは本当に難しかった」と河合さん。特に、「キャラクターラインから下のボディの面に、軽自動車としてはかなりの抑揚をつけているのです。そうすると通常であればその影面が犠牲になって(狭くなったり歪んだりで)美しくないんです。しかしそこをおろそかにしてしまうと、せっかく通したキャラクターライン全体が美しく見えなくなってしまいます。ですので影の見せ方は最後までこだわって、トータルで美しく見えるようにかなり意識して作りました」とコメント。

同時にサイドシル上の部分は、「タイヤをしっかり踏ん張って見せるために台形の造形になっています。実はこの台形の影の部分がサイドからフロントのフォグランプベゼルとリアにも繋がっているんです」とここにもクルマを長く見せる工夫が見て取れる。

「軽自動車は寸法に制約があるので、どうしても箱みたいになってしまうことが多いのです。もちろん箱っぽいクルマも魅力はあります。例えばファミリーカーとして大きく見せたいとか。しかし、ムーヴのようにスポーティーに走りそうなスリークなスタイルを作ろうとすると、そういう四角四面なデザインはそぐわない。そこで前、横、後ろの連続性を持たせるような意匠的な工夫があれば全体がつながって見えるかなという考えです」

◆「動きを持たせる」ための見せ場
そのほかにもフロントナンバープレート上側のラインがフォグランプベゼルに繋がっているポイントがある。通常このベゼルは三角形など直線を結んで作られるが、ムーヴはあえて曲線を取り入れ、かつ立体的な造形にされた。そうすること横に走るラインが若干ベゼルの中にまで入ってから下に向かうようになり、支点同士を結ぶのではなく、若干ずれる印象となり、少しでも動きを感じさせるようにしているのだ。

また、スライドドアを採用する関係上、ドアレールは直線にならざるを得ないのでその周辺は四角くなってしまう。そこでムーヴはルーフに手を付けた。河合さんによると、「重量的には少し重くなってしまいましたが、『ムーヴキャンバス』などと比べると、ちょっとだけ平らなルーフにしています。通常は剛性を保つために丸くするのですが、板厚をゲージアップさせてもらいました。スッキリした屋根を作ることで、伸びやかに見せたいという思いです」と説明。

河合さんは、「ダイハツは割とシンプルな作りのクルマが多い傾向です。それは小さいクルマですから、いろいろてんこ盛りにするとごちゃごちゃして見えてしまうからなんですね。ですからシンプルなのがウリのひとつではあるんですが、このクルマに関してはごちゃごちゃしないように最大限の注意を払いながら、いかにいろんな動きを持たせるための見せ場を作るか、そのためにあらゆる手を尽くしました」とコメントした。

◆立体的な動きを表現するカラー
新型ムーヴにはブラウン系の新色、グレースブラウンクリスタルマイカが登場した。ダイハツデザイン部ビジョンクリエイト室VXD Gr.の坂本唯衣さんはまずカラーバリエーション全体のコンセプトについて、「日常に馴染む、生活によく馴染む定番色であり、選びやすいラインナップにすること。そして、ムーヴのコンセプトである、動く姿が美しく見えることもキーワードになっており、形が立体的に見えるような色味をチョイスしています」と語る。

そして新色のグレースブラウンクリスタルマイカは、「赤みと黄みのバランスがちょうどいい落ち着きのあるブラウンを目指して作りました」という。その上で、「落ち着きのあり過ぎるブラウンになってしまうと、立体感も落ち着いていく傾向にあるんです。そこでハイライトのところにもこだわり、美しく動く姿にこだわりました。このカラーは、光が当たるとほんのりゴールドに輝くんです。そうすることで、より走った時もより立体的に光が流れるような美しい見え方になるのです」と話す。

しかしその思いはブラウンでなくても出来そうだ。坂本さんは、「そこはムーヴが日常の生活によく馴染んだクルマというポジションにこだわりました。歴代ムーヴの中でも、落ち着いた色合いがすごく好評でしたし、立体感を出すことでお客様の期待に応えたいという思いから、あえてメタリック系の色ではないブラウン系で調整をしたのです」と述べる。

そして出来上がったこの色について坂本さんは、「ムーヴのラインナップの中でも、上質感をさらに牽引してくれるような色合いになりました」とキーカラーのひとつになっていることを強調した。

文:レスポンス 内田俊一
【キャンペーン】第2・4金土日は7円/L引き!ガソリン・軽油をお得に給油!(要マイカー登録&特定情報の入力)

こんな記事も読まれています

「軽トールは腰高でつまらない」は過去の話。ダイハツ新型「ムーヴ」にエッセ乗りが試乗して驚愕した理由
「軽トールは腰高でつまらない」は過去の話。ダイハツ新型「ムーヴ」にエッセ乗りが試乗して驚愕した理由
LEVOLANT
ホンダビートは爽快な走り!! 軽の2シーターミドシップオープンここにあり!!! こんなクルマよく売ったな!! 【愛すべき日本の珍車と珍技術】
ホンダビートは爽快な走り!! 軽の2シーターミドシップオープンここにあり!!! こんなクルマよく売ったな!! 【愛すべき日本の珍車と珍技術】
ベストカーWeb
オジサン歓喜! 名車が“イマドキ仕様”で帰ってきた! 原点回帰モデル4選
オジサン歓喜! 名車が“イマドキ仕様”で帰ってきた! 原点回帰モデル4選
ベストカーWeb
【無難ではなく指名買い】人はなぜダイハツ・ムーヴを選ぶのか?デザイナーが新型で探した求められる理由
【無難ではなく指名買い】人はなぜダイハツ・ムーヴを選ぶのか?デザイナーが新型で探した求められる理由
AUTOCAR JAPAN
ダイハツ新型「ムーヴ“ダンディスポーツS+”」登場! “2年ぶり復活”遂げた「軽ワゴン」の迫力エアロ仕様! スライドドア初採用の「新モデル」に設定の新たなパッケージとは
ダイハツ新型「ムーヴ“ダンディスポーツS+”」登場! “2年ぶり復活”遂げた「軽ワゴン」の迫力エアロ仕様! スライドドア初採用の「新モデル」に設定の新たなパッケージとは
くるまのニュース
両側スライドドアを採用したダイハツの7代目新型「ムーヴ」の進化を検証
両側スライドドアを採用したダイハツの7代目新型「ムーヴ」の進化を検証
@DIME
「非常に美しいが…悲劇のクルマ」「時代を先取りしすぎ」絶版後、大人気になった4代目クラウン。
「非常に美しいが…悲劇のクルマ」「時代を先取りしすぎ」絶版後、大人気になった4代目クラウン。
月刊自家用車WEB
【CG】トヨタ新型「エスティマ後継機」!? ビッグな”最大級ミニバン”が「クラウン顔」に!? 横一文字テールもカッコイイ「新型シエナ」予想CGがスゴイ
【CG】トヨタ新型「エスティマ後継機」!? ビッグな”最大級ミニバン”が「クラウン顔」に!? 横一文字テールもカッコイイ「新型シエナ」予想CGがスゴイ
くるまのニュース
19年で268万台を販売、歴代ボルボのベストセラーだった『240』の功績【懐かしのカーカタログ】
19年で268万台を販売、歴代ボルボのベストセラーだった『240』の功績【懐かしのカーカタログ】
レスポンス
ダイハツ新型「ムーヴ」実際どう? 11年ぶり全面刷新の「スライドドア“ワゴン”」どうなった? “新生”ダイハツを第一弾の新モデルの実力を試す
ダイハツ新型「ムーヴ」実際どう? 11年ぶり全面刷新の「スライドドア“ワゴン”」どうなった? “新生”ダイハツを第一弾の新モデルの実力を試す
くるまのニュース
【ニューモデル情報】新型ルノー オーストラルは静かでスタイリッシュに 大幅なフェイスリフトながら価格は据え置き 新型モデルの詳細情報!
【ニューモデル情報】新型ルノー オーストラルは静かでスタイリッシュに 大幅なフェイスリフトながら価格は据え置き 新型モデルの詳細情報!
AutoBild Japan
いいクルマだなぁ──新型アウディS5アヴァント試乗記
いいクルマだなぁ──新型アウディS5アヴァント試乗記
GQ JAPAN
プジョー『3008』新型、内外装を一新! 槍ヶ岳にインスパイアされたデザインも[詳細画像]
プジョー『3008』新型、内外装を一新! 槍ヶ岳にインスパイアされたデザインも[詳細画像]
レスポンス
トヨタ新「ハリアー」発表! 全長4.7m級の“ちょうどイイ”「クーペSUV」の“スポーティ仕様”がスゴイ! 精悍エアロ&4本出しマフラーがイイ「GR仕様」とは
トヨタ新「ハリアー」発表! 全長4.7m級の“ちょうどイイ”「クーペSUV」の“スポーティ仕様”がスゴイ! 精悍エアロ&4本出しマフラーがイイ「GR仕様」とは
くるまのニュース
新型3008の衝撃! ハイブリッドを搭載しながら価格据え置きで登場【プジョー】
新型3008の衝撃! ハイブリッドを搭載しながら価格据え置きで登場【プジョー】
グーネット
フェラーリ、ローマ後継『アマルフィ』発表…640馬力V8搭載の2+2クーペ
フェラーリ、ローマ後継『アマルフィ』発表…640馬力V8搭載の2+2クーペ
レスポンス
作りたかったのは路面電車!? フリードのご先祖さまホンダ モビリオの設計思想にリスペクト!!
作りたかったのは路面電車!? フリードのご先祖さまホンダ モビリオの設計思想にリスペクト!!
ベストカーWeb
【最新モデル試乗】これがBEVの世界基準。クール&フレンドリーにアップデートされたテスラ・モデルYのチャームポイント
【最新モデル試乗】これがBEVの世界基準。クール&フレンドリーにアップデートされたテスラ・モデルYのチャームポイント
カー・アンド・ドライバー

みんなのコメント

3件
※コメントは個人の見解であり、記事提供社と関係はありません。

この記事に出てきたクルマ

新車価格(税込)

135 . 9万円 202 . 4万円

新車見積りスタート

中古車本体価格

0 . 1万円 238 . 3万円

中古車を検索
ダイハツ ムーヴの買取価格・査定相場を調べる

査定を依頼する

メーカー
モデル
年式
走行距離

おすすめのニュース

愛車管理はマイカーページで!

登録してお得なクーポンを獲得しよう

マイカー登録をする

おすすめのニュース

おすすめをもっと見る

この記事に出てきたクルマ

新車価格(税込)

135 . 9万円 202 . 4万円

新車見積りスタート

中古車本体価格

0 . 1万円 238 . 3万円

中古車を検索

あなたにおすすめのサービス

メーカー
モデル
年式
走行距離

新車見積りサービス

店舗に行かずにお家でカンタン新車見積り。まずはネットで地域や希望車種を入力!

新車見積りサービス
都道府県
市区町村