近年人気上昇中のアルファロメオ・モントリオール
2025年4月13日、英国チチェスター近郊のグッドウッド・サーキットで開催されたエクスクルーシヴなレースイベント「グッドウッド・メンバーズミーティング」。その公式オークションとして行われた、名門「ボナムズ」社の「GOODWOOD Members Meeting 2025」オークションに、1972年型アルファ ロメオ「モントリオール」が出品されました。アルファ ロメオの「聖杯」のごとく崇められる「ティーポ33」由来のエンジンを搭載したこのモデルに、オークションではどんな評価が下されたのかをレポートします。
プアマンズ・フェラーリじゃない! こどもが夢中になったアルファ ロメオ「モントリオール」のギミックとは?
ティーポ33のV8エンジンを詰め込んだ市販グラントゥリズモとは……?
モントリオールは、「カロッツェリア・ベルトーネ」と、当時同社でチーフスタイリストの地位にあったマルチェロ・ガンディーニがデザインワークとコーチワークを手掛け、1967年カナダの「モントリオール万博」に出展された。アルファ ロメオ「ジュリア」をベースとするコンセプトカーは、3年後の1970年、ジュネーヴ・ショーにて「モントリオール」の名のもとデビューした高性能クーペとして結実する。
いわゆる「アルファ・ツインカム」、1.6L直列4気筒エンジンを搭載した万博展示用プロトティーポとは異なり、市販モデルのモントリオールは、同時代のグループ6スポーツプトロタイプ「ティーポ33.2」用の4カムシャフトV型8気筒の2Lエンジンを拡大。2.6Lとするとともに「文明化」したディチューン版ユニットを搭載した。
徹底的に低められたノーズから、一見したところではミッドシップにも見えなくはないプロポーションながら、実際はプロトティーポと同じく、同時代のジュリア1750GTVからランニングギアを流用したFR。独立したフロントサスペンションとリアのライブ(リジッド)アクスル。そしてディスクブレーキで構成されている。
ポルシェ911の対抗馬になることを期待されたアルファの1台
電子制御式イグニッションと「スピカ(Spica)」社の機械式燃料噴射装置によって最高出力200ps/6500rpmを発生するドライサンプ式V8・2.6Lエンジンは、ZF製5速ギアボックスを介して後輪を駆動。スムースで空力的にも優れた形状のファストバックボディに助けられ、最高速度は220km/hに達した。
もとより、ミドル級グラントゥリズモのカテゴリーで覇権を握っていたポルシェ911の対抗馬になることを期待されたモントリオール。販売価格が予想以上に高価となってしまったこともあって、その人気は限定的なものに終わる。また、グループ4「GT」カテゴリーへの進出用に開発された3Lのエンジンを量産型モントリオールにも搭載する計画もあったそうだが、それも不発のまま1977年に合計3925台(ほかに諸説あり)がラインオフした段階で、生産を終えることとなった。
ちなみに、排気量を3Lに拡大したグループ6レーシングプロトタイプ「ティーポ33.3」用V8エンジンは、最初期のマクラーレンのF1テストにも採用されたという。ボナムズ社の公式オークションカタログでは
「長距離スポーツカーレースとF1の両方で先祖を持つエンジンを名乗ることのできるロードカーは非常に少ないが、アルファ ロメオ モントリオールはそのうちの1台」
と高らかにアピールされていた。
要調整のモントリオールは、なかなかの難敵だから……
このほどボナムズ「GOODWOOD Members Meeting 2025」オークションに出品されたのは、英国にデリバリーされたモントリオールの数少ない1台。ただし、このモデルでは右ハンドル車の生産は行われなかったので、英国仕様であっても左ハンドルである。
新車時のボディカラーは「ヴェルデ・ベルトーネ(Verde Bertone:ベルトーネ・グリーン)」に「ネロ(ブラック)」の内装を組み合わせ。1972年に英国に到着し、1973年5月に新車販売されたことがわかっている。また、現在も取りつけられている[WAM 16]は、オリジナルの登録番号と思われる。
今回のオークション出品者でもある現オーナーは、1979年11月9日にこの個体を入手。じつに46年間も所有。1980年代初頭に「アイヴァン・カッセル・カレージ(Ivan Kessell Garages)」によってレストアされた。 このとき、錆で腐食していたロワーパネルとインナーシルが交換されるとともに、シャシーは「ワクソイル(WAXOYL)」加工で錆止めアンダーコート。ボディはモントリオールの純正色「AR602メタリックオレンジ」に再塗装された。
特筆すべきは、現オーナーによって長年保有されているクルマであることから、整備記録を残したヒストリーファイルも、その所有期間中ずっと維持されてきていることである。直近の請求書では「アルファホリック(Alfaholics)」社のステンレススチール製エキゾースト(2015年)、新しいタイヤ(2015年)、修正されたステアリングボックスと新しいトラックロッドエンド(2015年)、新しいブレーキパッド、キャリパー、マスターシリンダーとスリーブシリンダー(2013年)、およびそのほかのメンテナンス作業(2015年)の工賃なども、ファイルに綴じられている。
モントリオールとしては少々低めの推定落札価格を設定
また、整備記録簿にくわえて「アルファ ロメオ・アーカイブ」との製造年月日の確認書簡、古いMoT証明書、「アルファ ロメオ・オーナーズ・クラブ(A.R.O.C)」との間に交わした書簡、「ブラウプンクト(Blaupunkt)」社製ステレオの説明書、オリジナルのアルファ ロメオ純正取扱説明書。当時のディーラーリスト、ワークショップマニュアル、V5C登録証明書、そしてこのクルマについて記された文献なども、すべてオークションでの落札者に託されることになっていた。
ボナムズ・オークション社では、その公式オークションカタログ内で
「一定期間使用されていなかったため、道路に戻す前に通常の安全点検と整備を行うことをお勧めします」
と正直に申告するともに、その整備状況を鑑みてだろうか、3万5000ポンド~4万5000ポンド(邦貨換算約658万円~846万円)という、現在でのモントリオールとしては少々低めのエスティメート(推定落札価格)を設定。そして4月14日に行われた競売では、3万6800英ポンド。すなわち日本円に換算すると、約710万円で落札されることになったのだ。
近年の国際クラシックカー・マーケットにおけるアルファ ロメオ モントリオールの相場価格は、日本円にして1000万円以上が当たり前のようになり、高価な個体では1500万円オーバーも充分にあり得ている。
翻って今回のオークションの個体は、長年ひとりのオーナーが所有しつつも、近年では休眠状態にあった。それゆえ、とくに「難敵」と噂されるスピカ製インジェクションなど、これから調整・メンテナンスすべき事項が多いであろうことは容易に想像がつく。それらの点を考慮すれば、今回のハンマープライスはとても理に適ったものといえるだろう。
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みんなのコメント
1985年くらいだったかな。
今もそうだが、当時もシンガポールにはあっと驚くようなスポーツカーをよく見かけた。
例、ロータスヨーロッパ、エラン、エスプリ、フェラーリディーノ、アストンDB5、ランボのミウラ等。アルファロメオも105系はとても多く走っていた。