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次なる展開は果たして。アルピーヌ代表離脱事件に諸説飛び交う/F1コラム

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次なる展開は果たして。アルピーヌ代表離脱事件に諸説飛び交う/F1コラム

 ベテランモータースポーツジャーナリスト、ピーター・ナイガード氏が、F1で起こるさまざまな出来事、サーキットで目にしたエピソード等について、幅広い知見を反映させて記す連載コラム。今回は、5月に突然、アルピーヌ代表の座を退いたオリバー・オークスに関し、その思いがけない動きに関して持ち上がっているさまざまなうわさについて取り上げた。

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わずか10カ月で退任。アルピーヌF1ボスとしてオークスが過ごした最後の3日間【F1チーム代表の現場事情】

 昨年、アルピーヌF1チームのエンストンの経営陣にもたらされた安定が、今年の春に早くも崩れ去った。フレデリック・バスール(2016年)、シリル・アビテブール(2016年~2021年)、ダビデ・ブリビオ(2021年)、マルチン・ブコウスキー(2021年~2022年)、オットマー・サフナウアー(2022年~2023年)、そしてブルーノ・ファミン(2023年~2024年)と、さまざまな人物がチームを率いた後に、2024年半ばにオリバー・オークスが新たなチーム代表に就任すると、チームは著しい進展を遂げた。オークスの傍では、経験豊富であるが同時に物議を醸す存在のフラビオ・ブリアトーレが、チームのアドバイザーとして力を振るった。この一見不釣り合いなコンビは、昨年、アルピーヌをミッドフィールドの上位にまで押し上げた。

 しかしすべては今年のマイアミ後に変わった。オークスが即時、チームを去るという驚きの発表がなされ、その直後に、エミリア・ロマーニャGPからドライバーが交代が行われ、ジャック・ドゥーハンのシートにフランコ・コラピントが座ることになったのだ。

 ドライバー変更については、シーズン開始前からうわさに上っていたが、オークスがわずか10カ月でチーム代表職を辞することになった理由については謎に包まれている。この件については、いずれ新たな事実が明らかになることは間違いない。

 オークス離脱の理由については、現段階でいくつかの説がある。荒唐無稽なうわさも含め、ここでその説を挙げていく。


■ドゥーハンからコラピントへの交代で意見が割れた?

 ドゥーハンのシートにコラピントを座らせたいと主に望んでいたのがブリアトーレであったことは、もはや秘密ではない。オークスはどちらかといえばドゥーハンの側に立っており、辞任する数週間前にはドゥーハンは少なくともサマーブレイクまではチームで走ると明言していた。

 しかし、その方針はブリアトーレに覆された。それがオークスがアルピーヌを辞める決断を下した一因となった可能性がある。


■ブリアトーレの擁護に疲れた?

 オークスがチーム代表であり、ブリアトーレは(あくまで書類上は)単なるアドバイザーであったにもかかわらず、実際には重要な決定を下していたのは、ブリアトーレだったようだ。ブリアトーレは、ルノー/アルピーヌの経営陣とも、コラピントのアルゼンチン系スポンサーとも親密な関係を持つ。

 ルノーのエンジン部門を閉鎖し、チームが2026年からメルセデスのカスタマーエンジンを使用することを決定づけたのもブリアトーレだ。オークスは、ブリアトーレのしばしば不評を買う決定について説明し擁護し続けることに、単純に疲れ果ててしまったのかもしれない。


■家庭を優先したかった?

 ブリアトーレは、オークスがアルピーヌを去った理由を「個人的な事情」によるものだと説明した。もちろん、これはさまざまな意味を持ちうるが、オークスが家庭を大切にする人物であること、そしてF1の代表職が家庭生活にとって大きな負担になりうることは事実である。


■自身のF1チームを持つという野望を追求?

 2015年、オークスはハイテックGPというチームを設立し、現在ではこのチームはFIA F3およびF2に参戦している。数年前、FIAが新たなチームのF1参入に門戸を開いた際には、アンドレッティ/キャデラックとハイテックGPが唯一真剣な候補と見なされた。

 FIAはキャデラックを選んだが、オークスは自分のチームの方がより優れた提案であったと信じている。そして、F1には12番目のチーム枠が存在する。それを埋めるチームとしては、ハイテックGPが有力候補となるかもしれない。

 ハイテックGPは、かつてニキータ・マゼピンをF3およびF2でドライバーとして起用したチームで、ロシアの富豪である父ドミトリー・マゼピンはチームに出資し、一時は株式の75%を所有していた。マゼピン家はロシア大統領プーチンと親密な関係にあり、ロシアのウクライナ侵攻直後、マゼピンが英国およびEUの制裁リストに載せられた後、オークスはその株式を買い戻し、新たな会社を設立した。

 それ以降も、マゼピン家は、依然として陰でハイテックGPを支配しており、同チームのF1参入の野望に資金を提供しているという噂が絶えない。冬季のバーレーンテストにドミトリー・マゼピンがパドックに姿を現したことも、注目を集めた。


■オークス家が金融犯罪に関与している?

 オリバー・オークスがアルピーヌを去る数日前、彼の弟で、ハイテックGPの経営陣の一員であるウイリアム・オークスが、チーム拠点付近で逮捕された。地元警察によれば、彼は「多額の現金を所持していた」という。しかし現時点で、オリバー・オークスが弟が嫌疑をかけられている犯罪と関係しているという証拠は存在しない。


■オークスがレッドブルの代表候補という非現実的なうわさも

 オークスが突然アルピーヌを去ったことについて、ささやかれたもっとも奇抜な説明のひとつは、レッドブルのオーナーたちがクリスチャン・ホーナーへの信頼を失っており、代わりにオークスを代表に起用したがっているという話だ。確かに、ホーナーは昨年女性従業員に対する不適切な行為で非難され、2025年型マシンの出来は期待に届かず、現在レッドブルチームは動揺の最中にある。そうはいっても、オークスがレッドブルの代表としてふさわしいとみなされるとは考えづらい。

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 オークス/アルピーヌの一件は、謎に満ちた事案である。すでに“元”アルピーヌ代表となった彼は、F2およびF3におけるハイテックチームのボスとしてグランプリの週末にサーキットに姿を見せているが、F1に関しては何ら発言していない。この一件は、今後必ずや展開を見せるだろう。

[オートスポーツweb 2025年06月08日]

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