バイクのエンジンは“流用”が当たり前!?
バイクの車体を構成するパートの中で、開発や製造にもっともコストがかかるのは、やはり「エンジン」です。
【画像】超・珍しい!? 独特なエンジンを搭載する日本メーカーのバイクを画像で見る
性能や耐久性はもちろん、部品点数の多さや製造時の精度や加工、組み立てる手間などを考えたら当然かもしれません。
それだけに、バイクメーカーは同じエンジンを色々な車種に搭載して、ラインナップのバリエーションを拡大します。
バイクのカテゴリーや性格に合わせて特性を変えたりはしますが、バイク雑誌やWEBのインプレッション記事には「〇〇(車名)のエンジンがベース」と書いてあったりします。
またマイナーチェンジやモデルチェンジする際も、毎回エンジンを完全に刷新するのではなく、細部を見直して相応に長く使っています。
ところが世の中には、1車種にしか搭載しない、他車に流用や転用していないエンジンも存在します。理由はともあれ、そんなエンジンや搭載するバイクはもれなくレアで個性的と言えます。
1950~60年代頃は日本のバイク黎明期なのでそのパターンも多いですが、バイクブームの1980年代以降はけっこう稀かも……という気になるバイクを紹介します。
チャレンジングな2ストレプリカエンジン
かつてのレーサーレプリカで人気の高かった2ストロークエンジンですが、どれだけレーシングマシンに近いかが勝負なのは、バイクのスタイルだけではありませんでした。
ホンダは1982年から、GP500に2ストロークV型3気筒のワークスマシン「NS500」を投入。そして1983年に、2ストロークV型3気筒のスポーツモデル「MVX250F」を発売します。
整備性などの兼ね合いで、「NS500」の「前1気筒:後2気筒」に対し、「MVX250F」は「前2気筒:後1気筒」とレイアウトは異なりましたが、かなりの革新メカなのは事実……にも関わらず、販売面ではいまひとつでした。
また1985年には、やはり「前2気筒:後1気筒」の2ストロークV型3気筒エンジンを搭載する「NS400R」を発売します。
こちらはスタイル的にもフルカウルのGPマシンを踏襲し、人気バイク漫画『バリバリ伝説』の主人公も乗っていたので人気が爆発……とはなりませんでした。
そして「MVX250F」も「NS400R」も一代限りで生産終了し、それぞれの2ストロークV型3気筒エンジンも姿を消しました。
そしてヤマハは1984年に、ワークスマシン「YZR500」のレプリカである「RZV500R」を発売します。「YZR500[OW61]」が搭載するV型4気筒を再現するため、前の2気筒をクランクケースリードバルブ方式、後2気筒をピストンリードバルブ方式とした異なる吸気方式を合体した特異なエンジンレイアウトを開発しました。
当時の日本の免許制度と、車体が高価格だったこともあり、注目度は抜群でしたが爆発的に売れたわけではなく、このエンジンとバイクも基本的に一代限りで終了しました。
スズキもGP500で活躍したワークスレーサー「RGΓ(ガンマ)」のレプリカとして「RG400Γ」と「RG500Γ」を1985年に発売し、ワークスマシンを踏襲して「スクエア4」の2ストロークエンジンを搭載しました。
「RG500Γ」は、やはり免許制度の兼ね合いであまり見かけませんでしたが、「RG400Γ」はけっこうたくさん走っていました。
とはいえ「RG500Γ」は1987年までの3年、「RG400Γ」は1988年までの4年で、ともに大きな仕様変更もなく生産終了しました。
そしてカワサキは、どちらかと言うとレーサーレプリカに消極的でしたが、1984年に「KR250」を発売します。
こちらはWGP250クラスを1978年から1981年まで連覇した同社のワークスマシン「KR250」(車名も同じ)と同様に、2ストローク2気筒エンジンのシリンダーを前後に配置した「タンデムツイン」を搭載しました。
翌1985年には、低速トルクを補う排気デバイスの「KVSS」を装備した「KR250S」に進化したので、厳密には一代限りではありませんが、タンデムツインもレアな存在のまま終了しました。
「4スト一代限り」はプレミアム車用!?
古くから4ストロークに注力するホンダだけに、膨大なエンジン形式が存在し、レアなエンジンレイアウトも沢山あります。しかし車両のラインナップ展開も膨大なので、一代限りのエンジンは意外と少ないようです。
その中で目を引くのが、1979年以発売された「CBX1000」の6気筒エンジンではないでしょうか。整然と並ぶ6本のエキゾーストパイプと6個のキャブレター、そして幅広な空冷エンジンは見るものを圧倒します。
「CBX1000」は1979年・1980年型がいわゆるネイキッドスタイルで、1981年・1982年型は大型カウル装備とリアにモノサスペンションを装備したツアラータイプにモデルチェンジしたので一代ではないですが、エンジンそのものは基本的に変わっておらず、他モデルにも使われていません。
ちなみに6気筒エンジンと言えば、同時期のカワサキ「Z1300」が搭載した水冷6気筒エンジンもレアな存在ですが、こちらは1979年から1983年までキャブレター仕様で、1984年からFI(電子制御式燃料噴射装置)に仕様変更したり、1983年からは大型カウルやパニアケース類をフル装備した大型ツアラー「ZN1300Voyager(ボイジャー)」も派生モデルで登場しています。
そしてホンダならではの一代限りエンジン(バイク)としては、1992年に発売された「NR(750)」と、2015年発売の「RC213V-S」があります。
「NR」はGPマシン「NR500」から培ってきた「楕円ピストン」のV型4気筒エンジンを搭載し、「RC213V-S」はMotoGPマシン「RC213V」のエンジンからニューマチックバルブとシームレスミッションのみを省いたV型4気筒エンジンを搭載します。
いずれも販売台数や人気云々ではなく、純粋に一代限りで作られたエンジン&バイクになります。
とはいえ、ホンダ「CBX1000」は輸出専用モデルで、「NR」も「RC213V-S」も超・限定モデルなので、あまり馴染みがありません。
しかし馴染みが薄いながらも、比較的身近な「一代限り」と言えるのが、ホンダ「ドリーム50」ではないでしょうか。
こちらは1962年の市販レーサー「CR110」をモチーフに、4ストロークDOHC4バルブの50ccエンジンを搭載しており、このエンジンは他車には使われていません。
ヤマハの4ストロークでは、筆頭は「VMAX」(2008年発売の1700ccモデル)でしょう。完全新設計のV型4気筒エンジンは最高出力200馬力を誇り、他車には使われていません。
ちなみに、1985年に登場した初代「VMAX1200」のV型4気筒エンジンは、クルーザーの「ベンチャーロイヤル」がベースなので一代限りというワケではありません。
他にも、ヤマハは「XZ400」(1982年)、「XZ550D」(1983年)の水冷V型2気筒や、「XJ400Sディバージョン」(1991年)、「XJ600Sディバージョン」(1992年)の空冷並列4気筒DOHC2バルブも、ほぼ一代限りエンジンだと思われます。
スズキはベースが同じで、細かな仕様違いの一代限りはたくさんありそうですが……「GR650」(1983年)のエンジン本体は空冷4ストローク並列2気筒DOHC2バルブなので珍しいレイアウトではありませんが、世界初の「可変マス機構」を備えおり、低回転時の安定性と中~高回転時の加速性能を両立させています。
時代的、排気量的に人気を得にくかったのだと思われますが、このエンジン(可変マス機構)が一代限りで消えたのはもったいない気がします。
ということで、日本メーカーから「一代(1台)限りエンジン」をピックアップしてみましたが、中には「輸出モデルの〇〇が搭載しているぞ」というパターンもあるかもしれません。
また、エンジン本体は他車とおおむね共通でも独自の機構を備えており、その仕様は一代限りというエンジンやバイクは他にもあります。いずれのエンジン(バイク)も、乗ればきっと他にない良さや面白さを感じられるのではないでしょうか。
とはいえ大抵は当時の販売台数もあまり多くないため、現在は中古車市場でもレア車になります。そして当時からレア車だとすると、補修部品なども枯渇している可能性が高いので、もし入手しても、維持するのはかなり大変かもしれません……。(伊藤康司)
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みんなのコメント
90度Vツインなのにバランサーシャフト装備のTZR250(3XV)とか、
70度Vツインの最終型Vガンマとか・・・末期の2ストには後に続けようがなかった面白いエンジンがあったね。