今季ハースからF1デビューを果たしたミック・シューマッハーについて、同チームのチーフ・レースエンジニアを務める小松礼雄は、そのオープンで建設的なアプローチが、チーム内の全てのスタッフ皆が助かっていると語る。
2020年にFIA F2で王者に輝いたシューマッハーは、今季ハースからF1デビュー。マシンのパフォーマンスに足を引っ張られる形で、隊列の後方を走るシーンが多いが、それでもチームメイトで同じくルーキーであるニキータ・マゼピンに、ほとんどのレースで大差をつけている。
■ミック・シューマッハー、友人ベッテルから受けた1番のアドバイスは「F1への愛を絶対に忘れないこと」
シューマッハーは、レース中にも絶えず担当レースエンジニアのゲイリー・ガノンと無線で交信し、技術的なフィードバックを交換し合っている。また、同郷出身で4度のF1王者であるセバスチャン・ベッテル(アストンマーチン)のアドバイスも受けている。
小松エンジニアは、本人が納得していなくてもチームからのフィードバックを受け入れ、様々なアイデアやアプローチを試すシューマッハーのオープンで意欲的な姿勢を高く評価している。
「彼が全てのアイデアに対してとてもオープンであることは、最初から皆分かっていました」と小松エンジニアは言う。
「『よし、これを試してみよう』とか『この方向性にしてみないか』と彼に言うと、それに賛成していない時でも進んでトライしてくれます」
「マシンのセットアップにしても、マネージメントやドライビングスタイル、1周(のアタックラップ)やレースでも、彼は必ずトライしてくれます」
「そうすることで、私たちはとても良いデータを手にすることができます。それが機能するかどうかは置いておいて、彼が試してくれるからこそ、私たちはデータとフィードバックを得ることができます」
「そのようなオープンな姿勢とあらゆることに挑戦しようという意欲があります。そしてマシンがトラブルを抱えたバクーのように、状況に応じて建設的な態度を取ることができます。(アゼルバイジャンGPでの)彼のセッションはとぎれとぎれでした。当然、彼はマシンの中で怒っていたと思います」
「しかし、それでも(彼は)とても落ち着いていたし建設的で、素晴らしいフィードバックを返してくれました。こうやって働いてくれると、皆にとっても助かります」
「全てのエリアにおいて、彼は大きな一歩を踏み出しました。特にタイヤマネージメントの点においては、ここ数戦でとても大きな進歩を見せたと思います」
一方、以前ハースのマシン「VF-21」を扱うことの難しさを口にしていたマゼピンは、シューマッハーよりもわずかに重いシャシーや、セットアップが“かなり悩ましい”エアロパッケージに苦戦してきた。
ルーキーのふたりがハースのマシンに求めているものはそれぞれ「全く違う」と小松エンジニアは明らかにし、彼らのドライビングスタイルをチームが完全に理解するまでに時間を要したと語った。
「ニキータは特に高速コーナーでより安定感のあるマシンを好みますが、ミックは(安定感が少なくても)対処することができます」
「しかし、レース中にタイヤを労るために、タイヤに優しいマシンを作ることに専念する必要があります。つまり、ふたりの要求はかなり違うんです。それを理解するのに時間がかかりました」
「その点では、良い所に来ていると思います。しかし、1周のパフォーマンスを引き出すこと、日曜日の300km(の決勝レース)に向けたタイヤマネージメントを行なうことに注力しています」
「実際ミックはとても良くやっていて、とても良いステップを踏めています。ニキータも同じく成長しています。彼は最初少し遅れをとっていましたが、それにはニキータが快適に感じるために必要な“特性“の違いを理解することも関係しています」
「それについてはまだ途中ですが、彼も改善しているし、私たちも継続して取り組んでいます」
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