クラウン最後のピース、エステート
今年、2025年はクラウンが誕生して70年の節目となる。1955年に登場した初代RS型は、トヨタにとっても日本にとっても、事実上初の純国産設計開発の量産乗用車であった。その後、15代に渡って日本の高級車セグメントを牽引してきた。
が、市況の変化に伴う世界的なセダン市場の縮小の中、ここ何代かのクラウンもまた、生き残りへの模索を続けていたのも確かだ。グリルデザインやボディカラーで大胆なイメージチェンジを図ったり、世界のスポーツカーブランドが開発でしのぎを削るドイツのサーキットで走りを鍛え上げたりと、八方手を尽くしてきたが販売増には繋がらない。そんな中、消えゆく銘柄も後を絶たない。
でもトヨタは、クラウンをやすやすとは諦めなかった。現行の16代目を「群」戦略と称してオーセンティックなセダンのみならず、SUVスタイルのスポーツや、セダンを背高調にアレンジしたクロスオーバーなど、幾つもの車型の群れをクラウンの名で束ねたわけだ。長い歴史の中ではひとつの代でセダンのみならずクーペやワゴン、ピックアップトラックを作っていた時期もあったわけだが、それを彷彿とさせる施策である。
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これを指揮したのが当時は社長だった豊田章男会長で、氏は発表会の席上、過去の15代を江戸幕府になぞらえながら、新しいクラウンを明治維新に位置づけた。トヨタ自動車の原点であると共に、日本の発展と呼応するように成長してきたその名に賭する想いは、当然ながらひとしおなのかと察するところはある。
その、群戦略におけるコマ数は4つ。うち、最後のピースとなるモデル、エステートがこの春、いよいよ発売を開始した。代々のクラウンでも幾度か設定されてきたそれは、いってみればステーションワゴン的な位置づけで、群戦略の現行型でも4モデル中で最も積めるパッケージを実現している。
ラゲッジの広さは圧巻! 他モデルとは一線を画する快適さ
クラウンエステートのパッケージは本質的には前述のクロスオーバーと大差ない。ホイールベースも同じ2850mmとなる。一方でパワートレインの構成はスポーツの側と同じだ。すなわち両モデルのいいとこ取りをしながら国際商品としての素性を磨き上げる、そんなところに開発や熟成の軸足があることは間違いないところだろう。そう、16代目クラウンの特徴のひとつは、海外に積極的に打って出ているところで、たとえばこのエステートは何かと話題のアメリカで「クラウンシグニア」として販売されている。
最大の特徴である荷室は後席使用時でも570リッターと、クロスオーバーに対して2割以上、スポーツと比較すると5割近く大きい。荷室幅も最長部で1430mmもあり、ゴルフバッグもゆったりと横方向に重ね積み出来る。更に後席の背もたれを倒し、拡張ボードを展開することで荷室の前後長は2000mmまで拡大。ゴロゴロしたくなるほどフルフラットなスペースが生まれる。なんなら寝転がってくださいというわけではないだろうが、ご丁寧に小さなテーブルや荷室の縁に腰掛けるためのクッションも用意される念の入りようだ。と、この装備はちょっとした洒落だとしても、開発陣としてはユーザーが大事にしているものを載せるに相応しい場所としてエステートの荷室を設計したという。
内装や装備については他のクラウンシリーズに準ずるものだが、後席の着座感についてはボディ形状的に頭上周り空間の圧迫感が小さいエステートが、他モデルとは一線を画する快適さを備えているように思えた。いずれにせよ、大人4人(乗車定員は5人)がゆったりと寛げる居住性の高さはクラウンシリーズに共通する美点である。
端的にいってかなり速い
クラウンエステートのパワートレインは2.5リッター4気筒をベースとしたハイブリッド=HEVと、それをベースに大容量バッテリーを搭載、電気のみでの単独走行を可能としたプラグイン・ハイブリッド=PHEVの2つが用意される。
電気で走れる満充電からの航続距離は89km。速度は135km/hというから、日常的な移動であれば高速利用も含めて概ねカバー出来る計算だ。ちなみに急速充電にも対応しているが、200Vの普通充電であれば、空の状態から約3.5~5.5時間で100%に至る。
電力を贅沢に使ってモーターの出力を存分に活かせるPHEVは動力性能的にもHEVと一線を画している。端的にいってかなり速い。ドライブモードをスポーツにセットすれば足回りも引き締まった設定となり、山道でもスポーツモデルさながらのパワフルな振る舞いをみせてくれる。
こういった場面で、決して軽く小さいわけではない体躯が軽快に向きを変える理由は、後軸に仕込まれた操舵機能=DRSにある。前輪の操舵角や運転状況などとシンクロして後輪にも僅かな舵角を与えることで、車体が積極的に向きを変えるようにアシストしているわけだ。
それに加えて後軸側の駆動モーターを積極的に使うことで後輪の蹴り出し力を高めて、気持ちよく曲がるように躾けてある。トヨタがハイブリッドを量販しはじめてから25年以上の時が経つが、培ってきたノウハウの活用は、低燃費化だけでなく運転の楽しさを表現するためにも用いられるようになってきたというわけだ。
電池が小さい分、動力性能的には平穏ながら、そのぶんの軽さを活かしてすいすいとストレスなく走るHEVは、あらかたのニーズをくまなくカバーしている。ダンパーは可変式でなく固定レートだが、荷物による荷重変化も織り込んでの設定と鑑みれば乗り心地のよさは特筆できる。前述のPHEVも含めて、現在のクラウンシリーズの中ではこのエステートが、古からの柔らかくふくよかなクラウンライドを濃く継承しているといえるかもしれない。
霞が関といえば省庁が立ち並ぶ日本の政治的中枢、いってみればクラウンの一大生息地だが、そこでお偉方に与えられる黒塗りのクラウンもクロスオーバーへの入れ替えが進んでいる。これによってモノトーンの事務的な建物が並ぶ風景も、ちょっと先進的に映るようになってきた。最初に16代目のクラウンをみた時は、過去を完全に振り切った飛ばしっぷりがちょっと心配になったほどだが、それが杞憂だったのは幸いなことではある。クラウンのある景色が新しい未来をみせてくれる。エステートにもそれは期待できそうだ。
SPECIFICATIONS
トヨタ・クラウン エステートRS(プラグインハイブリッド車)|Toyota Crown Estate RS(PHEV)
ボディサイズ:全長4930×全幅1880×全高1625mm
ホイールベース:2850mm
車両重量:2080kg
駆動方式:4WD(E-Four)
エンジン:2.5リッター直列4気筒+モーター
エンジン最高出力:177PS(130kW)/6000rpm
エンジン最大トルク:219Nm(22.3kgfm)/3600rpm
モーター数:2機
フロントモーター最高出力:182PS(134kW)
フロントモーター最大トルク:270Nm(27.5kgfm)
リアモーター最高出力:54PS(40kW)
リアモーター最大トルク:121Nm(12.3kgfm)
システム最高出力:306PS(225kW)
トランスミッション:CVT
燃料消費率:20.0km/L(WLTPモード)
EV走行換算距離:約89km(WLTCモード)
価格:810万円
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