直後は高く評価されたウェッジシェイプ
1960年代後半に誕生した、複数の英国ブランドを統合したブリティッシュ・レイランド。直線基調のウェッジシェイプ・デザインで次世代を世に問うたが、結果はまったく振るわなかった。
【画像】初めは好評のトンガリ次世代 ウェッジシェイプのADO71 同時期のFFたち モーリス・ミニも 全130枚
そのADO71を褒めても、少なくない英国人は、皮肉だと受け止めるに違いない。半世紀も前のモデルだから、否定的なイメージは過去のように思える。それでも、取材中に通りかかった1人は、「英国車の最悪だった1台だね」。と声をかけてきた。
このクルマの魅力を彼へ少し説明したが、意表を突かれたような表情を浮かべていた。実際、ADO71の初期型、18-22シリーズが発表された直後は、どのメディアも高く評価していた。
新聞のオブザーバー紙は、「特長的で目的を感じる見た目」だと称えた。デイリー・テレグラフ紙は、「若手幹部も誇らしげに自宅前へ止めておける、印象的なほど美しいカタチ」だと絶賛している。
当時の自動車雑誌、オートスポーツ誌ですら「ブリティッシュ・レイランドの勝ち組」だと表現した。しかし、ウェッジシェイプのADO71が不運だったのは、同社が国営化された年に生まれたことにあった。
有望なモデルでも、生みの親のイメージは非常に悪かった。とはいえ、ちゃんと長所を理解する人も存在してきたことは間違いない。半世紀が過ぎた今、故郷といえるグレートブリテン島中部のカウリー工場へ、主な4台にご参集いただいた。
明日も明後日も美しいファミリーサルーン
コードネームADO71と呼ばれた、ブリティッシュ・レイランドの次期モデルの開発がスタートしたのは、1970年。スタイリングを担当したのはデザイナーのハリス・マン氏で、後の取材でこう述べている。
「1970年代以降にも通用する、先進的なスタイリングをまとった、ゆとりのあるファミリーサルーンのデザインが目的でした。エンジンが横置きで前輪駆動という、ユニークなコンセプトを活かすことが課題になりました」
ブリティッシュ・レイランドの広告では、「今日を示すようなクルマ。明日も明後日も美しい」と主張。広い車内を包みつつ、空力特性に優れるスタイリングへ自信を見せた。
サスペンションは、しなやかに伸縮するハイドラガス・システム。クラス最高水準の乗り心地も、強みといえた。
一方、18-22シリーズという複数ブランドを跨いだ総称は、1950年代の前身、ブリティッシュ・モーター・コーポレーション由来の慣例だった。ブリティッシュ・レイランドへ再編後は変更する方針を掲げていたが、結局は継投されていた。
果たして、18-22シリーズは1975年に発売。オースチンには四角いヘッドライトが与えられ、モーリスには丸目4灯のヘッドライトと異なるフロントグリル、ボンネットが与えられ、多少の差別化が図られた。
エンジンの選択肢は、1.8L直列4気筒のBシリーズ・ユニットか、2.2L直列6気筒のEシリーズ・ユニットの2択。今回ご登場いただいたレッドの1台は、マーク・アレンデン氏がオーナーの、モーリス1800だ。
ビニール張りの内装 速くなくてもスムーズで楽しい
アレンデンの1800は、レイランド・プリンセス&アンバサダー・エンスージャスト・クラブのメンバーによって、2014年から1年をかけてレストア済み。印象的なウェッジシェイプの容姿を、今に伝える好例といっていい。
1970年代のファミリーサルーンらしく、ニットで裏打ちされたビニールで内装は仕立てられている。新車価格は2117ポンド。時計や可動式アームレストは、その価格帯では望めない装備だった。シガーライターと、高さ調整できる運転席側シートは備わったが。
彼がこのモーリスを購入したきっかけは、子どもの頃の記憶にあった。「自分が小さかった頃、父がモーリス2.2 HLSに乗っていて、わたしも気に入っていたんです。この運転は楽しいですよ。速くはありませんが、とてもスムーズなんです」
「路上では、ドライバーや歩行者から、よく視線が向けられます。挨拶で、クラクションを鳴らしてくれる人もいますね。モーリスのエンブレムに、驚く人も多いです」
モーリス1800は、同時期のフォード・コンサル2000Lやヴォグゾール・ヴィクター2300などとは、だいぶ異なる見た目だったことを自分も思い出す。だいぶ斬新だった。
「ADO71のカタチは、スタイリッシュかどうかや、5分で時代遅れになるといった議論とは無縁だと思います」。オースチン・モーリス部門の技術部門トップ、チャールズ・グリフィン氏はそう語っている。
大臣の移動車両に選出 優れなかった品質
他方、ブラジルメタリック・ブラウンのADO71は、上級ブランドという位置付けだったウーズレーの2200。アンドリュー・マクアダム氏がオーナーだが、過去に23年間も放置されていたそうで、2022年にレストアを受けている。
若手弁護士でも似合うよう、エンジンは直列6気筒。ブラックのビニール・ルーフでコーディネートされ、ラジオにパワーステアリング、ティンテッドガラス、深い色味のカナレット・ウッドパネルなど豪華な装備を得つつ、価格は2999ポンドだった。
「運転手がいなくても、ビジネスに使えます。ブリティッシュ・レイランドの成し遂げた、最高の結果の1つでしょう」。とデイリー・テレグラフ紙は報じた。ジャガーXJ6以来となる、同社による最高傑作だと評価する自動車雑誌もあったほど。
英国政府は、大臣の移動用車両として、ウーズレー2200を20台発注。優れたイメージを、広げることへ貢献した。
ところが、品質の悪さも前後して知られていった。英国車に特化したARオンラインは、品質が非常に悪いと考えている整備士がいることを、隠すことなく伝えた。1975年が終わる頃には、徐々にフォード・ディーラーへ足を向ける人が増えていった。
マクアダムは、パンフレットでうたわれた以上の魅力があると考えている。「ウーズレーは装備が充実していて、デザインコンセプトは遥かに先取りしていたと思います」
「巧みなマーケティングと、理想的なモデル名が与えられていれば、ブランドにとってルネッサンスになったかもしれません」。と熱弁する。
この続きは、ウェッジシェイプのADO71(2)にて。
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みんなのコメント
この理不尽さはなんだ、と今でも思っている。誰もがミニやジャガーやロータスばかりが好きなわけではないのに。