現在位置: carview! > ニュース > スポーツ > F1分析|角田裕毅にとってはあまりにも不運だったVSCのタイミング。そして大きかった1周目のオーバーテイク

ここから本文です

F1分析|角田裕毅にとってはあまりにも不運だったVSCのタイミング。そして大きかった1周目のオーバーテイク

掲載 更新 3
F1分析|角田裕毅にとってはあまりにも不運だったVSCのタイミング。そして大きかった1周目のオーバーテイク

 F1マイアミGPで、角田裕毅は10位入賞を果たした。しかし、ピットストップのタイミングさえ前後に1周ずれていれば、もう少し上の順位でフィニッシュできたかもしれない。

 角田は、F1マイアミGPの決勝レースを10番グリッドからスタート。1周目に9番グリッドスタートのエステバン・オコン(ハース)を抜き、序盤は9番手を走行していた。

■レッドブル角田裕毅、F1マイアミGPでは10位入賞も「チーム全体としてペースがなかった」マシン理解度や自信は深まる

 この頃のレースは、状況判断が非常に難しかった。サーキット周辺には強い雨雲が広がっており、そのうちのいくつかは確実にサーキットに向かってきていた。雨が降るのは時間の問題で、いかにウエット系のタイヤに履き替えるタイミングを読むかというところに、各チームが集中していたように思える。

 しかし幸か不幸か、雨雲はことごとくサーキットを避けるように大西洋に流れていった。結局雨が振らないまま、各車はタイヤ交換のタイミングを迎えることになった。

 20周目頃から後方のマシンを皮切りにピットイン。この頃はまだギャンブル的なタイヤ交換かと思われていたが、雨が来ないという可能性が徐々に濃厚になっていくと、上位勢でもピットストップが始まった。

 角田のチームメイトであるマックス・フェルスタッペンは26周を走り終えた段階でピットイン。角田はその1周後、27周を走り切ったところでピットに入った。

 しかし角田にとって不幸だったのは、コースに戻った直後、すぐ前を走っていたオリバー・ベアマン(ハース)のマシンがエンジンブローし、コース脇にマシンを止めてしまったことでバーチャル・セーフティカー(VSC)が宣言されたことだ。

F1マイアミGPレースペース推移(中団)

 このグラフは、マイアミGP決勝中の中団グループのギャップ差の推移を折れ線で示したものだ。

 前述のVSCが宣言された際、角田の5秒ほど後方を走っていたフェラーリのルイス・ハミルトンがピットイン。コースに戻った時には、角田の3.5秒ほど前に立っているのが分かる。つまりハミルトンは、角田よりも1周ピットストップのタイミングを遅らせた”だけ”で、8.5秒も稼ぐことに成功したわけだ(グラフ1の赤丸の部分)。

 これに関しては、さすがにライバルのトラブルを予測するわけにはいかず、角田にとっては不運だったと言う他ない。

 ただこの不運を避けられた可能性がある方法がひとつある。それは、フェルスタッペンと同じ周にピットストップを行なうことであった。

 フェルスタッペンがピットストップする前の周、つまり25周目を終えた時点でフェルスタッペンと角田の差は13秒強というところであった。連続でピットストップさせても、問題なく作業をこなすことが出来たはずだ。

F1マイアミGPレースペース推移(フェルスタッペン&角田)

 こちらのグラフは、フェルスタッペンと角田のレースペースの推移を折れ線グラフで示したものだ。タイヤを交換することで、フェルスタッペンも角田も、レースペースが1~1.5秒上がっている(グラフ2の赤丸の部分)。

 フェルスタッペンと同じ周にピットストップしていれば、ハミルトンの2周前にピットストップできていたということになる。そうなれば角田はハミルトンの前を抑えるか、あるいは先行されたとしてももっと近い位置につけることができていたはずだ。

 とはいえこれは、いずれも「後から考えれば」ということである。これを全て事前に予測せよというのは、あまりにも酷なことかもしれない。

 さて、レースペースを見てふたつ気になることがある。

 ひとつはフェルスタッペンのペースに見て取れる。フェルスタッペンはレース序盤は先頭を走ったが、マクラーレン勢にオーバーテイクされると、一気にペースが落ちているのが分かる(グラフ2の青丸の部分)。そしてその後、徐々にペースを取り戻している。

 ここから推測できるのは、マクラーレンに対して防戦する際に、かなりタイヤに負荷をかけてしまっていたのだろうということである。おそらくタイヤがオーバーヒートし、パフォーマンスを発揮できなかったのだろう。

 フェルスタッペンはレース後のプレスリリースで「少しでも前のマシンに接近したり、プッシュしようとすると、タイヤがオーバーヒートしてしまった」と語っており、おそらくそれがこのグラフに現れているのだろう。

 ただマクラーレンに先行を許したことでペースを落とすことができたためタイヤの温度が下がり、ペースが戻ったということだろう。

 もうひとつ気になるのは、角田のスティント序盤のペースだ。グラフ2をご覧いただいても分かる通り、フェルスタッペンは最初のスティント終盤よりも1.5秒ほどペースを上げているが、角田は1秒程度しか上げられていない(グラフ2の緑丸の部分)。

 現在のピレリタイヤは、使い始めを慎重に走ることが、デグラデーション(性能劣化)を抑えるのに最も効果的とされている。この慎重に使い始めるというのは角田の得意技とも言え、これまで度々好結果に繋げてきた。

 しかし今回は、フェルスタッペンだけではなく他のライバルと比較しても、第2スティント序盤のペースの上げ幅が小さいように見える。その後のペース自体には大差が無いのに……である。

 この傾向は、あまりにも慎重になりすぎているということなのか、あるいは”レッドブルRB21はこうしなければタイヤをすぐに痛めてしまう”ということなのか……それは気になる部分である。フェルスタッペンの言葉からすれば、どうも後者である可能性が高いが。

 もうひとつ言及しておきたいことがある。それは、角田がスタート直後に9番グリッドスタートのエステバン・オコンを抜いたのは実に大きかったということだ。オコンはペースはそれほどよくはなかったものの、抜きにくいマシンだったようで、実際フェラーリのハミルトンはオコンに長いこと抑え込まれた(グラフ1の緑丸の部分)。

 もし角田が1周目にオコンを攻略できていなかったならば、入賞を目指すのはかなり難しいことになった可能性がある。そういう意味では、かなり重要なオーバーテイクを成功させたという部分は賞賛されるべきだろう。

 2週間後のエミリア・ロマーニャGPでは、今回フェルスタッペンのマシンに投入された新型フロアが、角田のマシンにも取り付けられる予定だという。これにより、パフォーマンスが上がることを期待したい。

【キャンペーン】第2・4 金土日はお得に給油!車検月登録でガソリン・軽油7円/L引き!(要マイカー登録)

こんな記事も読まれています

三度マクラーレンワンツー! フェルスタッペン3番手で肉薄。僚友の角田裕毅は下位に沈む|F1エミリア・ロマーニャGP FP3
三度マクラーレンワンツー! フェルスタッペン3番手で肉薄。僚友の角田裕毅は下位に沈む|F1エミリア・ロマーニャGP FP3
motorsport.com 日本版
ピアストリが最速で初日締めくくる。レースでも強さ健在か? レッドブル角田裕毅8番手|F1エミリア・ロマーニャGP FP2
ピアストリが最速で初日締めくくる。レースでも強さ健在か? レッドブル角田裕毅8番手|F1エミリア・ロマーニャGP FP2
motorsport.com 日本版
ピアストリ最速! フェルスタッペン7番手&角田裕毅16番手とレッドブル低調な滑り出し|F1エミリア・ロマーニャGP FP1
ピアストリ最速! フェルスタッペン7番手&角田裕毅16番手とレッドブル低調な滑り出し|F1エミリア・ロマーニャGP FP1
motorsport.com 日本版
レッドブル角田裕毅、クラッシュで散る……! ピアストリが今季3度目のポールポジション獲得|F1エミリア・ロマーニャGP予選
レッドブル角田裕毅、クラッシュで散る……! ピアストリが今季3度目のポールポジション獲得|F1エミリア・ロマーニャGP予選
motorsport.com 日本版
角田裕毅、予選Q1の大クラッシュを謝罪「不必要だった……マシンを理解しないまま、あんなに攻める必要はなかったのに……」
角田裕毅、予選Q1の大クラッシュを謝罪「不必要だった……マシンを理解しないまま、あんなに攻める必要はなかったのに……」
motorsport.com 日本版
角田裕毅、エミリア・ロマーニャGP初日は「全体的にポジティブ」と評価。一方フェルスタッペンは「速さが足りない」と不満げ
角田裕毅、エミリア・ロマーニャGP初日は「全体的にポジティブ」と評価。一方フェルスタッペンは「速さが足りない」と不満げ
motorsport.com 日本版
F1エミリア・ロマーニャGP予選は序盤から大荒れ……角田裕毅に続きコラピントも大クラッシュ
F1エミリア・ロマーニャGP予選は序盤から大荒れ……角田裕毅に続きコラピントも大クラッシュ
motorsport.com 日本版
テストの好調で話題さらったThreeBond三宅、開幕後は低迷続く。その理由は……担当エンジニアに聞く
テストの好調で話題さらったThreeBond三宅、開幕後は低迷続く。その理由は……担当エンジニアに聞く
motorsport.com 日本版
【角田裕毅を海外F1解説者が斬る】フェルスタッペンのナンバー2を務めるのは楽じゃない
【角田裕毅を海外F1解説者が斬る】フェルスタッペンのナンバー2を務めるのは楽じゃない
AUTOSPORT web
RB21の予測不能な挙動は「単純な話ではない」僚友との差より走りに集中、対処方法の研究も続く【角田裕毅F1第7戦展望】
RB21の予測不能な挙動は「単純な話ではない」僚友との差より走りに集中、対処方法の研究も続く【角田裕毅F1第7戦展望】
AUTOSPORT web
レーシングブルズ移籍後も未だ無得点のローソン、チームメイトの新人ハジャーに惨敗……とも言い切れない? 過去4戦を考察
レーシングブルズ移籍後も未だ無得点のローソン、チームメイトの新人ハジャーに惨敗……とも言い切れない? 過去4戦を考察
motorsport.com 日本版
レッドブル角田裕毅、F1エミリア・ロマーニャGP予選Q1でマシンがひっくり返る大クラッシュ! セッションは赤旗中断
レッドブル角田裕毅、F1エミリア・ロマーニャGP予選Q1でマシンがひっくり返る大クラッシュ! セッションは赤旗中断
motorsport.com 日本版
ピアストリが今季3度目のPP獲得。角田裕毅は大クラッシュでタイムを残せず【予選レポート/F1第7戦】
ピアストリが今季3度目のPP獲得。角田裕毅は大クラッシュでタイムを残せず【予選レポート/F1第7戦】
AUTOSPORT web
角田裕毅、予選Q1で大クラッシュも怪我はなし「ばかげたミスを犯した。マシンのパフォーマンスが安定しないのは謎」
角田裕毅、予選Q1で大クラッシュも怪我はなし「ばかげたミスを犯した。マシンのパフォーマンスが安定しないのは謎」
AUTOSPORT web
レッドブル5戦目の角田裕毅、適応にはまだ「マッスル・メモリー」が足りず。本能的なドライブのために経験増量必須
レッドブル5戦目の角田裕毅、適応にはまだ「マッスル・メモリー」が足りず。本能的なドライブのために経験増量必須
motorsport.com 日本版
マクラーレンの強さは続くのか? ヨーロッパ3週連続開催がついに幕開け|DAZN F1エミリア・ロマーニャGP配信スケジュール
マクラーレンの強さは続くのか? ヨーロッパ3週連続開催がついに幕開け|DAZN F1エミリア・ロマーニャGP配信スケジュール
motorsport.com 日本版
“不運なダブルピット”に懸念挙がったスーパーフォーミュラ、現状シーズン中の規則変更の予定はなし。運営JRPは全ドライバーからヒアリング
“不運なダブルピット”に懸念挙がったスーパーフォーミュラ、現状シーズン中の規則変更の予定はなし。運営JRPは全ドライバーからヒアリング
motorsport.com 日本版
6戦目でラッセルを超えた18歳アントネッリ。その抜群のスピードセンスへの見解【中野信治のF1分析/第6戦】
6戦目でラッセルを超えた18歳アントネッリ。その抜群のスピードセンスへの見解【中野信治のF1分析/第6戦】
AUTOSPORT web

みんなのコメント

3件
  • sssss
    ピットアウトしたすぐ目の前でベアマンのエンジンが壊れるなんて不運としか言いようがない。
    あと一周してたら最高のタイミングだったんだけどね。
    あくまでもタラレバだが。
  • the********
    逆に幸運になることもある
    そのときは誰かが不安だったということ
※コメントは個人の見解であり、記事提供社と関係はありません。

査定を依頼する

メーカー
モデル
年式
走行距離

おすすめのニュース

愛車管理はマイカーページで!

登録してお得なクーポンを獲得しよう

マイカー登録をする

おすすめのニュース

おすすめをもっと見る

あなたにおすすめのサービス

メーカー
モデル
年式
走行距離

新車見積りサービス

店舗に行かずにお家でカンタン新車見積り。まずはネットで地域や希望車種を入力!

新車見積りサービス
都道府県
市区町村