1980年代のクルマといえば、ハイソカー、街道レーサー、そしてボーイズレーサーが人気を博していた。この連載では、ボーイズレーサーと呼ばれた高性能でコンパクトなハッチバックやクーペたちを紹介していこう。今回は「いすゞ ジェミニ ZZ ハンドリング by ロータス(JT190)」だ。
いすゞ ジェミニ ZZ ハンドリング by ロータス(JT190型・1988年3月発売)
1985年(昭和60年)5月、いすゞはジェミニを2代目にフルモデルチェンジするにあたり、駆動方式をFRからFFへと変更した。FFとなった2代目ジェミニは、パリ市街を縦横無尽に駆け回るテレビCMと「街の遊撃手」のコピーで強い印象を残した。だが、1980年代中盤は1.5Lはターボ、1.6LはDOHCが幅を利かせていた時代。ジェミニもハイパワー化は避けて通れない。
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そこで1986年5月(発売は6月)にターボ仕様を追加するが、単純にターボを付けただけで終わらないのがいすゞらしいところ。なんとサスペンションのチューニングを西ドイツ(当時)のイルムシャーに委託して本物感を訴求したのだ。足回りと内外装の演出を行い、ヨーロッパの雰囲気をうまくまとわせていた。
1987年2月にマイナーチェンジでフロントマスクを中心に変更され、翌1988年2月(発売は3月)には、いすゞの切り札ともいうべきモデルが登場する。パワーに対する欲求をとりあえずはターボで応えたいすゞだったが、本当の切り札として用意したのが、ここで紹介する「ZZ ハンドリング by ロータス」だった。力を誇示するのでなく、秘めたさりげなさを「粋」とす
る英国気質を好んだのは、往年の名車べレット以来いすゞ車の「味」でもあった。
搭載されたエンジンは、1.6Lの4バルブDOHC。もちろん無粋な過給機などは装着しない。運動部分重量の精密な均一化や徹底した摺動抵抗の低減を図り、許容回転を7700rpm以上に設定し、全域でトルクを得るための可変吸気システムやデュアル排気システムを採用したのも、すべてドライバーの意志に瞬時に反応するためだ。
サスペンションのセッティングは、本物のヨーロピアンテイストを追求するため英国のロータスに委託した。前後サスペンションの特性値を見直し、フロントに低圧ガス封入式/リアにド・カルボン(オイル+ガス封入)式のショックアブソーバーを装着して、フラットな乗り心地としなやかな操縦性を実現している。さらにドライバーが路面状況を把握できるフィードバック感は、国産車とは一味違うレベルに仕上がっていた。さすがロータス!の面目躍如と言えるだろう。
1988年5月には、同じエンジンを搭載したイルムシャーも追加され、ドイツと英国の雰囲気を使い分けていた。価格は、最も安い3ドアHBが155万1000円で、イルムシャーより5万5000円高かったが、それも納得できる価値のある1台だった。
いすゞ ジェミニZZ 3ドアHB ハンドリング by ロータス(1988年)主要諸元
●全長×全幅×全高:3995×1615×1370mm
●ホイールベース:2400mm
●重量:950kg
●エンジン型式・種類:4XE1型・直4 DOHC
●排気量:1588cc
●最高出力:135ps/7200rpm(ネット)
●最大トルク:14.3kgm/5600rpm
●トランスミッション:5速MT
●タイヤサイズ:185/60R14
●価格:155万1000円
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