日産初の量産PHEVとして2026年2月に北米市場へ投入された「ローグPHEV」。その正体は、想像以上に三菱「アウトランダーPHEV」でした。
なぜ日産はここまで大胆な割り切りを選んだのか。そこから見えてくる、電動化時代ならではのクルマづくりについて考えてみます。
【画像ギャラリー】想像以上に「アウトランダーPHEV」だった!! 日産初のPHEVとなる、日産新型「ローグPHEV」(22枚)
文:吉川賢一/写真:NISSAN、MITSUBISHI
ローグPHEVの正体は想像以上にアウトランダーPHEVだった
2026年2月に北米市場へ投入された日産初の量産プラグインハイブリッド「ローグPHEV」。発表当初から「アウトランダーPHEVのバッヂ違いではないか」と話題になっていましたが、スペックや取扱説明書を確認すると、その中身は想像以上に「アウトランダーPHEV」。
搭載されるのは2.4リッターガソリンエンジンと前後モーターを組み合わせたPHEVシステムで、バッテリー残量や走行不可に応じて、EV走行とハイブリッド走行を切り替えます。システム最高出力は248hp、最大トルクは322 lb-ft(約436Nm)で、駆動用バッテリー容量は20kWh、EV走行距離は38マイル(約61km)。これらの数値は、日本では2024年10月まで販売されていた現行型アウトランダーPHEVの前期型と一致しています。
また、電動四輪制御も、ローグPHEVでは、日産の「e-4ORCE」ではなく、三菱の車両運動制御技術である「AYC(アクティブ・ヨー・コントロール)」という名称を使っており、ドライブモードもNORMAL、ECO、POWER、TARMAC、GRAVEL、SNOW、MUDの7種類と、アウトランダーPHEVと同じ構成です。
制御システムの細かな味付けまで完全に共通なのかは不明ですが、日産独自の制御が盛り込まれているのであれば、何らかのかたちでアピールしていても不思議ではありません。やはりローグPHEVは、「日産バッジを付けたアウトランダーPHEV」と表現したほうが実態に近そうです。
「餅は餅屋」こそアライアンスの理想形か
ここまでいさぎよい割り切りを見せられると、「日産はそこまでしてPHEVが欲しかったのか」と感じてしまいますが、北米市場の状況を考えれば、その判断は十分理解できます。
北米市場における日産の電動化対応は、他メーカーに比べて明らかに遅れていました。トヨタは2019年に投入した5代目RAV4ハイブリッドで大きな成功を収め、ホンダも2022年にCR-Vハイブリッドを投入。電動SUVが販売を伸ばすなか、日産の主力SUVであるローグはガソリン車(VCターボ)のみで、ハイブリッドもPHEVもない状況。リーフで先行した日産にとって、北米で拡大するハイブリッド需要を十分に取り込めなかったことは大きな誤算でした。
他方、アライアンスを組む三菱は2009年のi-MiEV、2013年のアウトランダーPHEV以来、電動車開発を続けてきたメーカーであり、とくにPHEV分野では世界でも有数の実績を持っています。日産が短期間で競争力のあるPHEVを投入したいのであれば、アライアンス内にあるその技術を活用しない手はありませんでした。
北米におけるPHEVといえば、先代のRAV4 PHEVが高い人気を集めたものの、供給不足が続き、北米では「欲しくても買えない」状況がつづいていました。2026年に登場した新型RAV4 PHEVは生産体制の強化が進められているものの、需要の大きさを考えると、日産としては競合が十分に供給を拡大する前にPHEV市場へ参入したかったはずです。
もちろん日産だけにメリットがあるのではなく、米国に自車の生産拠点を持たない三菱は今後、日産の米国工場を活用してSUVを現地生産する旨を2025年5月の決算会見で明らかにしています。
三菱は近年、米国市場での販売を大きく伸ばしており、グローバル販売台数(約80万台)のうち2割を米国が占めるほどに成長しているものの、工場をもたないため、これまでは輸入に頼らざるを得ませんでした。日産に生産設備を融通してもらえれば、米国販売での効率化を図ることができます。三菱はPHEV技術(というか今回は車両そのもの)を提供し、日産は生産設備を提供する。両社の「協業」のメリットが存分に活かされた格好です。
ローグPHEVが最新のアウトランダーPHEVではなく、大幅改良前のモデルである点は、三菱が意地悪をしたというよりも日産が販売を急いだ結果でしょう。日本では2024年10月に切り替わっていますが、北米では2026年春(3月~5月)の販売開始です。実績のある既存システムを活用して一刻も早く市場へ投入することを選んだと思われます。
ローグPHEVは妥協か、それとも最適解か
もちろん、ファンとしては「もっと日産らしいPHEVが見たかった」と感じるところではあります。e-POWERやe-4ORCEなど、技術へのこだわりを大切にしてきた日産が、ここまで割り切ったモデルを投入したことに拍子抜けした人は少なくないと思いますが、競争が激化する市場において、完成度の高い三菱のPHEV技術を活用し、短期間で商品化できたことは日産にとって大きな意味を持ちます。
ローグPHEVは、日産と三菱が互いの強みを認め合い、弱みを補い合った結果であり、両者のアライアンスが新たな段階へ進んだことを示す象徴的なモデルといえます。かつての自動車メーカーは、自前主義こそが強さでしたが、BEVやPHEV、ソフトウェア開発に巨額の投資が必要となる現在は、すべてを自社で抱え込むことが必ずしも正解とは限りません。ローグPHEVは、そうした新しい時代のクルマづくりを象徴するモデルなのかもしれません。
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