この記事をまとめると
■ジャパンモビリティショーで初の「日の丸BEVバス」である「いすゞエルガ EV」が登場
商用車のEV普及はすぐそこ! ジャパンモビリティショーに出展した働くクルマは夢じゃなく現実感満点
■海外製のBEV路線バスは、フルフラットと言いながらも不都合な点が目立っていた
■「エルガ EV」は利便性や動線を考えた、フルフラットな車内を実現したのが大きな特徴だ
「日の丸BEVバス」はいままでの海外製BEV路線バスとは違う!
「出るぞ、出るぞ」とバス愛好家から注目されていた、老舗バスメーカー初の「日の丸BEV(バッテリー電気自動車)バス」となる「いすゞエルガ EV」が、先日閉幕したジャパンモビリティショーで初披露された。
運転席まわりは「ICE(内燃機関)となるエルガからの流用品も目立つ」というと、ネガティブに捉えてしまう人もいるだろうが、バス愛好家から見ると、「ICE同様に温かみを感じる」として、筆者が聞いた範囲ではおおむね好評であった。筆者は海外出張のときには時間が許せば、滞在都市の路線バスに「乗りバス」して楽しんでいる。しかし、新興国も含め、とくに路線バスでは公共輸送機関車両としての割り切りが目立ち、どこか「冷たさ」を感じている。
一方で、日系ブランドのバスメーカーやバス関連用品メーカーの人たちに接すると、自らバス愛好家という人も多く、その熱い想いを車両から感じとることができる。たとえば冷房などの空調吹き出し口では、海外ブランド車ではただ穴が開いて風が出てくるだけだが、日系ブランド車ではルーバータイプとなり、風の向きやルーバーを閉じて風を遮断することもできるようになっている。オーダーメイド方式で日系メーカーが製造するのに対し、吊るし方式となる海外ブランドとの違いも大きいようだ。
エルガEVには、日本メーカー製の運賃箱が違和感なく設置されていたのも、日系メーカーらしいところの現れとして非常に好感が持てた。
エルガEVは単にBEVになっただけでなく、その特性を活かしフルフラット化されたことも大きな特徴。2018年に東京都交通局は、日本で初めてフルフラットバスの運行を開始した(ICE車だけど)。車両は北欧ブランドであるスカニア製シャシーに、オーストラリアのボルグレン製ボディを架装したものとなっている(以下スカニア車両)。
一般的な路線バスでは、中扉から後ろへ向かうと段差が存在する。スカニア車両ではほぼ床面がフルフラットになっているのだが、その分、中扉から後ろのホイールハウス部の座席に座るときにはかなりの段差があるので、座るのにかなり苦戦し、車内転倒事故を誘発しやすいものとなっている。また、最後部席はかなり密室的な雰囲気となっており、犯罪などを誘発しやすいのではないかとの声もある。結果的に、バス愛好家からは「これでフルフラットと言っていいのか?」という声も少なからずある。
国産EVバスは配慮の塊だった!
一方、エルガEVでは見事にフルフラット化が実現されている。「オタ席」などとも呼ばれる、扉側最前列や運転席真後ろのフロントホイールハウス上の座席や、リヤホイールハウス上の座席は用意されていない。これについては、車内安全のためにフルフラット化を実現しても、ホイールハウス上に座席があれば、そこに座るときには登り降りしなければならず、実際いままでも車内転倒事故の原因となることが多かったそうで、あえて座席を用意しなかったとのことであった。バス愛好家の筆者としては、オタ席がないのはおおいに不満を覚えるのだが、そのような理由があるのなら素直に受け入れるしかないだろう。
最後列席はその前の席との対面式となっているが、こちらは最後列席と対面になる座席下の床に突起部分があり、フルフラット実現にこだわり対面式としているが、鉄道車両の対面シートよりもスペースは広く取っているとのことであった。
また、とくに中扉乗車、前扉降車のケースでは、バス停での乗降時に車内で降車する人と乗車しようとする人が交錯するといった導線の悪さが指摘されることもあったが、フルフラット化により、中扉を廃止して後ろ扉を設置という良好な導線確保の実現も可能にできるし、その可能性をすでに検証しているとの情報もある。
BEVの特性を活かし、徹底したフルフラットで安全な車内を実現しているあたりは、日系メーカーらしいきめ細かさを感じ、ここだけは外資ブランドとの大きな差だなと感じた。
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