ひと際目立つ赤いSM
先日、岐阜県高山市で開催されたオーナー向けイベント、『シトロエニスト・ランデブー・オーナーズフェスティバル2025』の会場には歴代シトロエンが展示され、その中にひと際目立つ赤い『SM』があった。オーナーは36年もこのSMを所有するシトロエニストだ。
【画像】平成元年から赤いシトロエンSMを所有!「右に行けと念じれば右に行く」ほど一心同体 全30枚
このSMのオーナーは辻下克彦さん。最近まで名古屋にあったシトロエンのディーラー、渡辺自動車で平成元年に購入。1975年式で正規輸入されたクルマだ。初めて辻下さんがシトロエンを購入したのは『BX』で、そこからシトロエンの世界に入ったという。
「多分1986年くらいですね。それまでずっとスバルを乗り継いでいたんですが(いまも1300Gを所有)、CXに興味があって渡辺自動車に見に行ったんです。そこで『BXとCXは機能面では一緒だよ』とBXの新車を勧められて。それにCXは(トラブルなどで)脅されていて一抹の不安があったので、新車のBXを選びました」
しかし、結局『CX』もファミリアールを2台乗り継ぐことになる。
「7人乗りが欲しかったんです。当時、フォード・トーラスなども一緒に検討したのですが、CXの中古車が出て来たんですね。シリーズ1の2500で、いま思えばとても貴重なクルマでしたね。18万キロぐらい走っているの購入したのですが、大したトラブルもなく、調子のいいクルマでした」
そしていよいよSMを購入することになる。
辻下さんは、「こんな華やかさのあるシトロエンは珍しかったので、いつかは購入しようと思っていました」と話す。その華やかさとは、「当時はアメ車などが幅を利かせていたんです。ですが、SMはシトロエンなのにそういうイメージがあって興味が沸きました」。
速さ、希少性、中身の複雑さ
こうしてシトロエンを乗り継いだ辻下さんは、実際に手にしたSMの魅力について、「やっぱり速いですよね。それと希少性と中身の複雑さも。いま少し苦労していますけど、メカニカルな面も本当に興味深いです」と話す。
また、「高速での高い安定性ですね。昨夜は雨の中、名古屋から高山まで走って来ましたが、ステアリングに軽く手を添えているだけでどんどん走ってくれるんです。右に行けと念じれば右に行きます(笑)」というから、まさに一心同体だ。SMのセルフセンタリングシステムとクイックなステアリング特性のたまものといえよう。
さらに「もうひとつ」と辻下さん。「人脈製造機なんですよね。このクルマが縁で本当にたくさんの人たちと知り合いました」と続ける。
ここまで気に入っているSMだが、気になるところはないのだろうか。
「特に不満ないですよね」と笑う辻下さん。しかし、「強いて言えば赤いボディカラーかな」と話す。購入時に渡辺自動車でメンテナンスを受けていたクルマの中で、調子のいい個体は黒、白、赤があったそうで、偶々その中の赤が売りに出た。
従って、「赤だけどなぁと思って購入したクルマなんですよ」というが、赤いSMと辻下さんのイメージはぴったりだ。
使い倒せるSM
SMだけでなくCXやBXにも乗っていたということは、DSも候補に挙がりそうだが、辻下さんは「DSはいまひとつ体に合わないんですよ。あの柔らかさがやっぱりね」と否定する。
また、辻下さんは常に複数台所有されていて、一時はランチア・テーマ8.32もお持ちだった。大人しい外観ながらフェラーリ・エンジンを搭載しているということで手に入れたが、「高速での安定性や、ブレーキとボディ剛性の低さなどが気になりましたね」と手放してしまったそう。やはり辻下さんにとってSMこそが、乗り心地を含めてぴったりなクルマのようだ。
辻下さんは普段使いも含めてSMをアシにするとともに、クラシックカーイベントにも積極的に参加している。筆者は以前、真夏の名古屋で一度ステアリングを預けてもらったのだが、しっかりとクーラーが利き、快適に街中から高速まで走り回れることに驚いたものだ。
辻下さんはさも当然のように「これが普通ですよ」と言うが、日頃からメンテナンスを欠かさず、いざとなったら自ら手を汚して整備も行うこともいとわないからこそ、ここまで完調に維持できているのだろう。
ただ、辻下さんは大らかな性格のようで、細かいことには気にせずSMを使い倒している。そのあたりのギャップが、SMとのいい関係を結んでいるように感じた。
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