ハンナ・シュミッツは、F1パドックで最も有名な女性のひとりと言っても過言ではない。レッドブル・レーシングの戦略担当主任を務める彼女は、グランプリのピットウォールにいる数少ない、時には唯一の女性として、定期的にカメラがその姿を捉えている。
ただでさえプレッシャーのかかる仕事に、このような注目はかなりの重荷になる。しかしシュミッツは、それを受け入れることを選んだ。
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現在39歳となったシュミッツだが、彼女がF1を目指していた頃、パドックには先輩エンジニアとなる女性のロールモデルはいなかった。しかし今は、自ら未来の女性エンジニアが目指すポジションまで上り詰めた。
F1パドックにいる女性と同様、シュミッツも自身の性別を強調するつもりはなかったと言うが、スポーツの多様性や包括性の改善スピードが予想以上に遅いことから、姿勢を変えたという。
「最初の頃は、女性だと思われたくありませんでした。男性らしく振る舞おうとしたわけでもありませんでしたが、性別は仕事をする上で影響しません」
国際女性デーを前に、レッドブルのファクトリーにあるMK7カーミュージアムでシュミッツはそう語った。
「私の性別は、仕事している時に必要な要素ではありません。しかしそれで多様性が改善されているような気がしていました。ただ、この業界では少し時間がかかるだけなんだと思っていました」
「ただ、実際にはそうなるとは限らないということに気がつきました。だから私たちはロールモデルとなり、この仕事がいかに素晴らしいか声を上げる必要があるのです」
「私は自分の仕事が大好きですし、いかにこの仕事が素晴らしいか、どうすればこういうことができるのか……中流階級の白人男性でなくても、この仕事はできるんです」
シュミッツは、レッドブル内のイニシアチブを推進することを自らの使命としている。
レッドブル・レーシングにはジェンダー・インクルージョン・ネットワークが3年前に設置され、シュミッツは人事部の女性同僚と共同議長を務めている。このネットワークは、多様性や包括性に関するあらゆることを話し合う場であり、レッドブルの従業員の12%を占める女性だけで構成されているわけではない。シュミッツは、チーム内の男性、特に娘を持つ男性もグループの一員であると指摘した。
またシュミッツは、F1でのキャリアチャンスを女性に伝えるため、国際女性デーの前に誰でも参加可能な社外ウェビナーを開催し、チーム内で働いている5人の女性から話を聞いた。
シュミッツは確かに刺激的な人物だ。ケンブリッジ大学で機械工学の学位を取得し、常々みんなが予想もしないような仕事をしたいと考えていたという。
現在、ふたりの幼い子どもの母親であるシュミッツは、F1カレンダーの半分で世界を飛び回り、残る半分はレッドブルのファクトリーがあるイギリスのミルトンキーンズに戻って仕事をしている。
そしてシュミッツのメールの受信箱は、F1に入るにはどうしたらいいかという若い女性からのメッセージで常にいっぱいになっている。そのリクエストの多さに手に負えなくなったことを認めつつも、シュミッツは可能な限りメモを送っている。
「私たちが講演会などをする時、キャリアのアドバイスのほとんどは、最初の挑戦で諦めないようにと言うことだと思います」とシュミッツは言う。
「つまり『自分はダメなんだ。だから受からなかった』と思わないことです。人脈を作ったり、人の名前を聞き出そうとしたり、そういう余計なことをする人材が求められます」
「『採用担当者に電話をかけて、私の履歴書を見ましたか?』みたいな感じです。この業界に入った人たちは、そういうことをよく聞きます。ちょっとした特別な励ましを受けたり、たどり着くためにあと1マイル走ったりするようなことです。もちろん、本来その必要はありませんが、そういうことが必要に思えます」
「ただ、お手本となるような人はまだそれほど多くありません」
シュミッツは最初こそ、自身が目指すロールモデルがいなかったが、家庭を持つようになってからは、娘を出産した直後に東京オリンピック2020へ出場した金メダリスト、アリソン・フェリックスなど、ロールモデルができたという。
「家庭を持つことを決めた時、仕事に復帰する人たちのロールモデルができたと思います。そうなると、かなりのプレッシャーになったり、『まだ仕事を続けるつもりなの?』『本当にやるの?』と話題になったりしますからね」
「そういうことは、女性ほど男性には起こらないと思います。だから大きな問題になるんです」
「その後、現役に戻ってきた女性のロールモデルが何人も現れました。私としては、アリソン・フェリックスは本当に偉大な人物のひとりです。本当に素晴らしい人物です」
「そういう話を聞いて、『そうか、私にもまだできるんだ』と思いました。私にロールモデルのような存在が現れたのはその時です。妊娠していた時、そのことが強く心に響きました」
シュミッツによれば、レッドブルには現在子どもを持つ親のための制度がある。彼女が最初の子どもを出産した時にはまだ不十分だったものの、時を経てサポート体制も整いつつある。
この制度は母親だけのモノではない。子どもを持つ親は1日フライトを遅らせることができ、チームはエンジニアがかつての木曜日ではなく金曜日入りできるよう計画を立てている。
もちろん、役職によっては不可能なこともある。しかしシュミッツの場合は、家族と過ごす大切な1日を考慮して、開幕戦の地オーストラリアに向けて火曜日に出発する。
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