「技術の日産」の行方
2025年2月13日、日産自動車は2025年3月期第3四半期決算を発表した。通期の純損失が800億円に達する見込みを示した一方で、スリムで強靭な事業構造を実現するためのターンアラウンド(事業再生)の進捗も報告された。
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その核心は、2026年度までに固定費(3000億円以上)と変動費(1000億円以上)の合計4000億円の削減を行い、自動車事業の損益分岐点となる台数を310万台から250万台へ引き下げ、営業利益率4%の安定的な確保を目指すというものである。
かつて「技術の日産」と称され、独自の先進技術で世界市場をリードしてきた日産。ホンダとの経営統合が白紙となった現在、その名にふさわしい未来を描き続けることができるのだろうか。
本稿では、日産のターンアラウンド戦略を深掘りするとともに、今後の日産が目指すべき方向性としての「シン・技術の日産」について考察する。
生産縮小と市場選択が迫られる現実
日産はターンアラウンド戦略の一環として、グローバル生産能力の削減と3工場の閉鎖を発表した。世界的な需要低迷と競争環境の変化を受けて、日産は生産能力を500万台から400万台に縮小する方針を示している。すでに中国で50万台の削減が行われ、タイの工場(年産37万台)は2025年第1四半期に閉鎖される見込みだ。
さらに、アルゼンチン工場も閉鎖される可能性が高い。現地メディアは、ピックアップ「フロンティア」の生産中止やメキシコへの生産移転を報じており、アルゼンチン工場閉鎖の現実味が増している。また、メルセデスベンツと共同出資するメキシコのコンパス工場では、インフィニティQX55の生産が年内で終了予定で、閉鎖の可能性も浮上している。
タイとアルゼンチンの工場閉鎖によって、グローバル生産能力は400万台に達する見通しだ。このため、もうひとつ閉鎖される工場は、エンジンなどを生産する部品工場である可能性が高い。具体的には、米国のデカード工場が挙げられる。同工場は2025年1月に希望退職の募集や減産を実施しており、閉鎖が避けられない状況となっている。
また、4000億円のコスト削減を達成するためには、「選択と集中」が不可欠であり、「インフィニティ」ブランドの廃止も検討されるべきだろう。インフィニティは1989年に米国で設立され、トヨタ「レクサス」に対抗してきたが、現在では米国市場での販売が不振で、1台当たりのインセンティブ(値引き)が7000ドル(約105万円)を超えるなど、業界でも異常な水準にある。このような状況ではブランド価値の低下が避けられず、廃止することで効率的なコスト削減が可能となる。
日産は、中国と北米市場で事業縮小を迫られる一方で、日本と欧州市場での販売強化が求められる。競争が激化する新興市場から撤退し、収益性の高い市場にリソースをシフトすることが今後のカギとなる。再生を果たすために日産が注力すべき領域として、
・軽自動車
・電気自動車(EV)
・プラグインハイブリッド車(PHV)
が挙げられる。今後投入される新型車には、軽自動車や大型ミニバン、PHV、次世代リーフ、コンパクトEVなどが含まれており、中国市場では新エネルギー車(NEV)の導入も視野に入れている。テスラやBYDなどの競合が台頭するなか、日産がどのようにEV市場で巻き返しを図るかが、「シン・技術の日産」の実現に向けた大きなポイントとなる。
ハイブリッド技術の岐路
日産の再生戦略に対しては異論が多く、特に同社のハイブリッド技術「e-Power」に対する懐疑的な意見が目立つ。
日産は、第三世代「e-Power」の投入により、初代モデルと比べてコストを20%削減し、燃費を20%改善、さらに米国市場で課題となっている高速走行時の燃費も大幅に向上すると主張している。
しかし、短期的には「e-Power」は日本や東南アジア市場で有効なハイブリッド技術である一方、EVシフトが加速すれば、その価値は急速に薄れる可能性が高い。EVへの早期移行が望ましいとの意見も根強い。
また、軽自動車やPHVなどの技術開発に関しては、
「三菱自動車との協業に徹する方が効果的」
という意見もある。特に軽EVの開発では、低コストを実現することが重要であり、日産単独での開発は困難との見方も強い。日産がこれらの分野で独自開発にこだわるならば、長期的に競争力が著しく低下する可能性がある。
目指すべき「スリム化」「選択と集中」
日産が目指すべき方向は、「スリム化」と「選択と集中」の徹底である。最適な解決策は、スバルのような特化型ブランドへの転換だろう。
スバルは、日本と米国を中心に事業を展開し、水平対向エンジンを搭載したシンメトリカルAWDやアイサイトによる先進運転支援システムで他社との差別化を図っている。米国市場では、BMWを超える高い利益率を記録しているともいわれる。
日産も全方位的なグローバルブランドを目指すのではなく、スバルを手本に独自技術を活かし、特定市場に絞り込むことで経営資源を集中させることが、今後の成長のカギとなる。
かつての「技術の日産」を取り戻すためには、こうした方向性をどこまで真剣に追求し、実現できるかが重要だ。日産の再生は、まさに正念場を迎えており、「シン・技術の日産」がどのように変貌していくのか、今後の動向を注視していきたい。
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