恒例となったゴールデンウイークの富士スピードウェイ決戦。今季2024年の第2戦は決勝が"3時間"というタイムレースのフォーマットが予定されている。レース距離で言えば昨季の450kmを上回ることが想定されるため、昨季以上に決勝でのレースペース、そしてトラック上での"抜きやすさ"が重要視される。2024年車両の開発について、ニッサンZの開発スタッフに聞いた。
その点、全長1475mという世界有数の長さを誇るホームストレートの最高速で、GT500随一の優位性を保ってきたのが2022年デビューのNissan Z GT500だ。この「エンドでのトップスピード」は、ライバルに対しオーバーテイクを仕掛ける際の武器になることはもちろん、ディフェンスの面でも速度的な優位に加え、相手に対しマージンがあるぶんだけ"最後にスロットルをリフトしやすく"なる場面も生み出し、各ドライバーに「燃費を稼ぐドライビング」を助ける効果も与える。
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そんな特性を踏まえつつ、今季に向けベースモデルを『Z NISMO』に切り換えたニッサン/NMC(日産モータースポーツ&カスタマイズ)陣営は、全長や全幅が変化(4380→4410mm/1845→1870mm)したことに伴い再度のスケーリングを実施した2024年型Z NISMO GT500でも、開幕前の富士公式テストで最高速トップを記録するなど、依然としてライバルを圧倒するトップスピードを誇ってきた。
「2022年にZをデビューさせたときには、ドラッグを減らして最高速をライバル並み……さらにライバル以上に確保するという目標を掲げました。それが比較的に上手く行ったのかなと。今回、クルマもZからZ NISMOになったこともあって、その良さは活かしつつ、少し課題だったところを潰し込んで来ました」と語るのは、NMCのモータースポーツ車両開発部主管を務める坂本昌平氏だ。
「エアロ面で行くと、従来は姿勢変化に対して若干ナーバスなところがありました。(2021年までの)GT-Rのときも課題だったのですが、それがまだ少し残っていて払拭できていないところもあったので、今回の2024年車両の開発ではシチュエーションごとの姿勢変化のなかでも、安定してダウンフォースが出せるような開発をしてきました。そのなかでも『最高速は速かったよね』というのがいろいろな面でメリットとしてあったので、そこは活かしながら」と続けた坂本氏。
現行のRZ34型の"初代(2022~23年)"に対し、今回の"2代目"Z NISMOで確認できる外観上の進化点としては、ベース車由来の造形として窪むように湾曲していたヘッドライト下端がフラットになり、天地が薄くなったフロントグリルからは左右独立の開口部が消え、ボンネット中央部にはNACAダクトが増設された。
この部分も先の富士公式テスト最終日で新規アイテムを投入し"カーボンボンネット"の2台が最終セッションを1-2で締め括るなど、3月末にホモロゲーション登録の申請〆切を迎える最後の最後まで形状の微調整が続いた。
「例えばその富士公式テストでも、最高速を含めて我々もエアロの仕様決定を粘ってはいたんですが、他車の様子を見つつ特性を微調整しました。(ボンネットに関しても)その調整のひとつです」
空力開発が解禁された新規ホモロゲ登録の可能なオフシーズンだったのに加え、陣営内では4台中2台がミシュランからブリヂストンへと使用タイヤ銘柄を変更。さらに『2024年安全性向上策』との名目で、スキッドブロックを嵩上げすることで実質的に"車高5mmアップ"とされた影響が、例年以上にギリギリまで空力の仕様を微調整する流れを作ったようにも見受けられる。
そのため、中央部の膨らみが消えた代わりに車体アウト側のエッジに峰を新設していたフロントバンパーコーナーの『フリックボックス』も、開幕戦岡山に姿を現した"最終仕様"では、ほぼフラットな造形へと改められていた。
「詳しくはお話しできませんが、そういう細かいところの形状で他社の状況を見ながら、我々は『どのへんにいるべきかな』というのを見て調整したモノです。また最後の最後までエアロで悩んだというのは、5mmアップの影響もあります。タイヤの銘柄が変わったというより、少しクルマのナーバスなところは全チームから意見が出ていたので、今回の開発ではひとつの大きなテーマとして対処しました」
そのタイヤ銘柄変更に際しても、オフの期間では「ドライでの走行時間が本当に足りなかった」としつつ、開幕の予選Q1ではトップタイムを記録し、決勝でも良好なレースペースを披露した23号車MOTUL AUTECH Zの中島健監督も「ユーズドがどういう振る舞いをするのかっていうのがイマイチよくわからないままレースに突入してしまった」点を反省しつつ、第2戦以降に向けた手応えも口にする。
「開幕では基本的なクルマの速さはあったし、レースペースも悪くなかったし、その点では充分、勉強させてもらった。すごくシンプルに言うと、セットアップとか、ドライビングスタイルとか、大きく変える必要は『思っていたよりもなかった』というのがたぶん、答えになるかな」と続けた中島監督。
「ただタイヤの温め方だったり、ピークに向けてどういう風に持っていくか……というところの違いはあります。ここと(第3戦)鈴鹿の"3時間2連戦"はしっかりとポイント重ねて行きたいなと思っているので。その準備は出来たつもりでいるし、大丈夫でしょう」
同じく前出の坂本氏も「我々としては、どちらかというと富士と鈴鹿を重視して開発をしてきているので、今大会については自信はあります」と、その意見に同調する。
「最高速に関しては、ウチのクルマは若干のアドバンテージあるかな、とは思いますので。そこに対してあとはダウンフォースをどこまで……車高が1回上がったことで減った部分を、どこまで回復できたかっていうところかなと。富士テストでもまずまずの結果でしたので、予選ではまだ少し苦労するかもしれませんけど、レースではきちんと上がってくると思っています」
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