愛車を見せてもらえば、その人の人生が見えてくる。気になる人のクルマに隠されたエピソードをたずねるシリーズ第86回の後編。俳優の萩原聖人さんが、現在の愛車について語った。
今も昔もアメ車
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前編では、俳優の萩原聖人さんの最初の愛車であるシボレー カマロから、フォード マスタング コンバーチブルを経て、シボレー タホに至った経緯を語ってもらった。
愛車の履歴書バックナンバー
愛車の履歴書──Vol86 萩原聖人さん(前編)愛車を見せてもらえば、その人の人生が見えてくる。気になる人のクルマに隠されたエピソードをたずねるシリーズ第86回の前編。俳優の萩原聖人さんが、かつて乗っていたアメ車に触れた!タホも気に入っていたとのことだけれど、引っ越しにあたって、マンションの駐車場にはタホの巨体が収まらないことが明らかになったという。
「仲村トオルさんはすごく尊敬している俳優の先輩なんですが、あるときにジャガーをお買いになったんですね。ジャガーはすごく格好よくて、そのときにトオルさんがおっしゃっていたのが、クルマって人生の財産とかモチベーションになるということでした。僕はその考えにすごく共感して、やっぱり乗り換えるなら本当に気に入ったものにしたいと思ったんです。駐車場に収まるサイズ感で、心から好きだと思えたのがマスタングでした」
萩原さんが乗っているフォード マスタングは、2005年から2014年まで生産された5代目。
撮影用に用意した車両に近寄り、「僕のはボディが黒ですけれど、内装はまったく同じですね」と言いながら運転席に乗り込む。すると、それまで落ち着いた声音で話をしていた萩原さんが、「おおっ!」と声をあげた。
「このクルマ、電動でドアミラーを畳めるじゃないですか! 僕のマスタングはこれが付いていなくて、結構苦労しているんですよ」
声が少し裏返っていることからも、萩原さんが興奮していることが伝わってくる。
「最初はドアミラーが畳めなくても大した問題ではないと思っていたんですが、いろいろな場面でかなり不便で、これはすごくうらやましいなぁ……」
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「僕のマスタングはたぶんアタリの個体で、20年間ほとんど故障らしい故障はなかったんです。でも、ここにきて電気系統とかの細かいトラブルが続いて、あとはドアの内張りが剥がれるなどちょっと経年劣化している感じです。いい加減、新しいのに換えないとまずいかなとも思うんですが、直ると元気に走ってくれるので、なかなか踏ん切りがつきません」
今回の撮影車両がショップで売られている個体だと伝えると、「マジですか!?」と表情がパッと輝いた。そして、「すごく程度がいいので、これに乗り換えるという手もありますね」と真剣な表情で細部をチェックする。
「でもやっぱり、ボディは黒がいいんだよなぁ……」とつぶやく萩原さんに、フルラッピングや全塗装などで、ボディカラーを変えられる方法もあると伝えると、「その手もあるのか!」と膝を叩いた。
「ダッヂの『チャレンジャー』が気になっていたし、いつかは『ヴァイパー』に乗りたいという夢もあるんですが、コンディションがよくてミラーが畳めるマスタングの中古を探すという手もありますね。今日みたいなロケだと事務所のクルマがサポートしてくれますが、たとえばひとりでMリーグのスタジオに行くときは、自分でマスタングを運転しています。正直、そろそろ日本車でもいいかなと思うときもありますが、こうして改めて見ると、やっぱり格好いいアメ車に乗り続けたくなります」
初めての愛車であるシボレー カマロからフォード マスタング コンバーチブル、そしてシボレー タホから現在のフォード マスタング。萩原さん本人は「クルマには詳しくないし、たいしたこだわりもない」とおっしゃるけれど、この履歴からはこだわりが伝わってくる。
「うーん、どうなんでしょうねぇ……。若い時には見栄を張ったり、カッコつけまくっていたりしたこともありましたが、そういう感覚もほとんどなくなって、現場でもプライベートでも自然体で生きられるようになりました。でも、さきほどトオルさんの話をしましたが、そんななかでもここだけはカッコつけていたい、みたいなところはあるじゃないですか。たとえば服だったりクルマだったり、最後の意地みたいな」
マスタングの内装をチェックしながら、萩原さんは続ける。
「僕のなかではずっとアメ車の存在感が格好いいと思っていて、フェラーリに乗っている友だちもいるんですが、全然うらやましいとは思わない。チャレンジャーとか新しいアメ車に乗っている友だちのほうが圧倒的にうらやましくて、クルマに詳しい人に言わせたら、もっとカッコよさで上のクルマがあるのかもしれないけれど、やっぱりこれが好きなんですね」
萩原さんは、このままショップに行って商談を始めてしまうのではないかと思えるほど、真剣に撮影用のマスタングを吟味している。その表情からは、本人がおっしゃるところの“最後の意地”が伝わってきた。萩原さんにとってのクルマは単なる移動の道具ではなく、相棒のような存在なのだろう。
これまで乗り継いできた4台のアメ車のエピソードをうかがっていると、萩原聖人という俳優が流行に流されず、独自のポジションを築くことができた理由の一端が見えたような気がした。
萩原聖人(はぎわらまさと)
1971年生まれ、神奈川県出身。93年、映画『学校』、『月はどっちに出ている』、『教祖誕生』で日本アカデミー賞新人俳優賞、話題賞、95年『マークスの山』、97年『CURE』で同賞優秀助演男優賞他を受賞。近年の主な出演作に、ドラマ「神の子はつぶやく」(23)、「ゴールデンカムイ-北海道刺青囚人争奪編-」(24)、「恋は闇」(25)、「北方謙三 水滸伝」「横浜ネイバーズ Season2」(26)、映画『Fukushima 50』(20)、『島守の塔』(22)、『海の沈黙』(24)、『長崎—閃光の影で—』『栄光のバックホーム』(25)、『ハローマイフレンド』(26)など。待機作に『君が最後に遺した歌』(3月20日公開)、『2126年、海の星をさがして』(3月20日釧路にて先行上映)、主演を務める『月の犬』(4月24日公開)が控えている。3月29日より舞台「ケムリ研究室no.5『サボテンの微笑み』」(作・演出:ケラリーノ・サンドロヴィッチ)に出演。
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文・サトータケシ 写真・安井宏充(Weekend.) ヘア&メイク・小口あづさ 編集・稲垣邦康(GQ)
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