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ヒヨッコから僅か半年で最新ステルス戦闘機乗りへ 豪空軍のスーパー時短訓練とは? “卒業試験”は実戦と同じことまで

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ヒヨッコから僅か半年で最新ステルス戦闘機乗りへ 豪空軍のスーパー時短訓練とは? “卒業試験”は実戦と同じことまで

各国のF-35運用事情

 第5世代ステルス戦闘機F-35「ライトニングII」は、新型機というイメージが強いですが、すでに初飛行から20年近くが経っており、今や世界各国で1150機以上が配備されています。戦闘機としての運用が軌道に乗りつつあり、各国の空軍では配備数の増加だけでなく、継続した運用のために新しいパイロットの育成環境も整備されています。

【画像】これが空自史上初のカラー塗装されたステルス戦闘機です

 訓練方法や期間は各国で異なりますが、日本でF-35パイロットの育成を担っているのが、青森県の三沢基地に所在する航空自衛隊の第302飛行隊です。

 この部隊が機種転換訓練課程と呼ばれる訓練を実施しているのですが、そのためのパイロットは、赴任するまでF-4EJ改「ファントムII」やF-15J「イーグル」、F-2といった他の戦闘機での操縦・任務経験があるベテランだけとなっています。これはF-35がステルス性や高度なデータリンクといった、従来の戦闘機にない新しい技術が用いられているためで、それを使いこなすにはパイロットとしての一定の技量が必要となるからです。

 しかし、この方法では新しいF-35パイロットを大量に育成することが難しく、また現在も運用を続けるF-2やF-15の部隊の人材面にも影響を与えてしまいます。

 この問題は近い将来、見直しが必要になるでしょう。ただ、他国に目を転じると、基礎的な操縦訓練を終えたばかりの新人パイロットを、直ちに最新鋭のF-35を使った訓練に進ませている空軍がすでに存在します。

 その国はオーストラリアです。同国の空軍は、たった6か月、訓練部隊で教育を施しただけで、F-35パイロットにしています。

最終試験はガチの実戦形式

 2025年4月現在、オーストラリア空軍はF-35Aを75機保有しており、それらを3つの飛行隊と訓練部隊である2OCU(運用転換飛行隊)、計5つの部隊で運用しています。

 オーストラリア空軍では2018年よりF-35の運用が始まっており、当初はこの機体と入れ替わりで退役したF/A-18「ホーネット」のパイロットたちが、2OCUで機種転換訓練を受けることでF-35乗りになっていました。しかし、現在では訓練を受けるのは新人パイロットが中心です。

 2OCUの訓練は期間だけ見ると約6か月(個人の能力に応じて伸びる場合もあり)と短いものですが、その内容は非常に内容の濃いもので、訓練を受けるパイロットにとっても簡単なものではないようです。

 最初に4週間の学科とシミュレーター訓練を受け、6週間の基本飛行訓練を行います。その後、12週間の戦術飛行と統合運用訓練を実施。そして、最後に「ハイ・シエラ」と呼ばれる演習に参加します。

 この演習は単にF-35を飛ばすだけでなく、敵役や訓練支援でホーク127ジェット練習機を参加させるなどして、複雑かつ大規模な航空作戦の立案と実施まで行い、さらに攻撃手順を演練するために実弾を用いることもあります。

 また、F-35の特徴である高性能データリンクを活用し、他のプラットフォームと実戦形式で連携するために、オーストラリア空軍のE-7A早期警戒機やKC-30A空中給油機との共同運用も行われます。

「ハイ・シエラ」演習はただの操縦訓練ではなく、実戦を想定した状況で訓練の成果を試すものであり、F-35パイロットにとっては卒業試験に近しいものといえるでしょう。

 このように、2OCUにおける6か月間の訓練は非常に密度が高く、その内容も操縦方法だけでなく実戦での運用が学べるものになっています。ただし、F-35のすべての訓練がここでの6か月間で済むワケではありません。実は、新人隊員が空軍でパイロットとしての訓練を始めた時点から、その準備は始まっているのです。

空自の近代化はいつ? パイロット不足対策は必須

 オーストラリア空軍での新人パイロットの訓練は、3つの段階に分かれています。まず、PC-21と呼ばれるプロペラ駆動の練習機で12~18か月の初等飛行訓練を受け、次にホーク127ジェット練習機で12か月の高等飛行訓練へと進みます。

 さらにジェット機の操縦を習得した後に、ホーク127を用いた戦術前訓練で戦闘機としての運用方法を学ぶとともに、F-35パイロットとしての適性を2~3か月の期間で判定されます。これに合格することで2、ようやくOCUでの訓練へと進むことができるのです。

 また、PC-21とホーク127はアナログ計器ではなく、モニターを中心としたグラスコックピットが採用されており、電子機器の操作が伴うF-35やF/A-18F、EA-18Gといった現役戦闘機に似た操縦訓練も可能です。これによって戦闘機の前段階の訓練において、基本的な航空機の操縦方法だけでなく、後のF-35パイロットに必要とされるシステム操作や情報処理などの技術の基礎も同時に学ぶことができ、これが2OCUでの訓練の効率化と短縮化に繋がっているといえるでしょう。

 オーストラリア空軍では、F-35パイロットが最初の飛行訓練から、実際に飛行隊に配属されて任務に就けるまでの期間を3年半から4年と説明しています。

 現在、新人パイロットにF-35の操縦訓練を受けさせている国は少数派であり、多くの国が航空自衛隊のような既存の戦闘機からの機種転換という形を取っています。

 しかし、航空自衛隊の場合、F-35の今後の配備数増加や少子高齢化によるパイロット(自衛官)不足を考えると、より効率的な訓練体系の確立は必須でしょう。

 航空自衛隊では、長らく初等練習機T-7と中等練習機T-4、この2機種でパイロット育成を行ってきました。しかし、すでにT-7はアメリカ製のT-6「テキサンII」に更新されることが決まっており、T-4も老朽化に伴って後継機を検討中です。

 新しい練習機が導入された場合には、これまでのパイロットの教育課程も大きく見直されるかもしれません。

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みんなのコメント

10件
  • fum********
    一番は、言葉なんですよ。オーストラリアの場合言葉の問題ないですよね。マニュアルも英語は問題ないし。そこが一番のネック。
  • lau********
    シミュレーターの進化です。今やファーストソロという初めての単独飛行まで実機の飛行時間が一桁なんて場合もある。何でそんな事できるの?と教官に聞いたらシュミレーターがとてもリアルだからだという。当然シュミレーター時間はそれとしてカウントされる。
※コメントは個人の見解であり、記事提供社と関係はありません。

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