トヨタの新型SUV「カローラ・クロス」の開発者に、小川フミオがインタビュー。気になる点を訊いた!
いかに気持ちよく走れるか?
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カローラ・シリーズに新しくくわわったコンパクトSUVの「カローラ・クロス」が話題を呼んでいる。「RAV4」より都会的な印象で、「ハリアー」ほどのけれん味はない。けっこう絶妙なコンセプト・メーキングなのだ。
さらに、「空飛ぶじゅうたんってこうなんだろうか?」と思わせるソフトな乗り心地を持つ。
9月14日に発売されたカローラ・クロスは、大きく分けて、ガソリン・エンジン搭載モデルと、それにモーターを組み合わせたハイブリッド・モデルの2種から成る。前者の原動機は1.8リッター直列4気筒で、最高出力は140ps/6200rpm、最大トルクは170Nm/3900rpm。CVTを介して前輪を駆動する。
後者、ハイブリッド機種の原動機は2種類ある。ひとつは1.8リッター直列4気筒(最高出力98ps/5200rpm、最大トルク142Nm/3600rpm)に、フロントモーター(53kW/163Nm)のみを組み合わせたもので、このパワー・ユニットを積んだクルマは前輪駆動だ。もうひとつは、フロントにくわえリアにもモーター(5.3kW/55Nm)を追加搭載した4WDモデルで、これは「E-Four」と呼称される。トランスミッションは、どちらも電気式無段変速機である。
いままでのトヨタ車とはひと味ちがう新型カローラ・クロスにはどんな開発背景があったのか、トヨタ自動車の開発陣にインタビューした。
取材に応じてくれたのは、トヨタコンパクトカーカンパニーTC製品企画の面々。チーフエンジニアの上田泰史氏をはじめ、主査の福島徹氏、それに、山田寛之氏と、井辻隆志氏という2人の主幹だ。ちょっと申し訳ないけれど、煩雑になるのを避けるため、回答者はトヨタ自動車の開発陣としてまとめさせていただいた。
Q1「なぜカローラ・クロスは世に出たのでしょうか?」
トヨタ自動車開発陣 これまでカローラ・シリーズには、「カローラ・ツーリング」や「カローラ・スポーツ」などのライフスタイル系のプロダクトが設定されていました。
おなじ「GA-C」というプラットフォームを使ってSUV的なモデルを……という計画が立ち上がったため、カローラ・ツーリングや同スポーツ、さらにサイズの近い「C-HR」などとは一線を画したクルマにすべき、と考えたのです。
その結果、いかに気持ちよく走れるか? を、念頭においたクルマを作ろう、との目標が設定されました。
Q2「開発にあたって特定のクルマをベンチマークとして設定しましたか?」
トヨタ自動車開発陣 どれか1台の自動車というより、走りや乗り心地の面で、欧州車とも競合できるクルマにしよう、と、考えていました。マーケットではいわゆるCセグメントに入るモデルなので、フォルクスワーゲン「ゴルフ」も競合対象になるだろう、ということは、開発スタッフのあいだでの検討でも話題になりました。
乗り心地の面では、ホンダの先代「ヴェゼル」も参考になりました。
カローラ・クロスを体験した小川様(筆者)は、シトロエン「C5エアクロス」の乗り心地を引き合いに出されましたが、じつは私たちは乗っていないんです(ちょっと笑)。
Q3「独特のソフトな乗り心地は意図してのことでしょうか?」
トヨタ自動車開発陣 乗り心地をよくしたのが、開発陣のこだわりです。運転しているひとだけでなく、同乗者全員がいかに気持ちよく乗っていられるか……それを重視しました。もうひとつはドライバーが、安心して意のままに走れるクルマであることを目指しました。
Q4「どうやって、ほかに類がない良好な乗り心地を実現したのですか?」
トヨタ自動車開発陣 走行中の路面からの入力をどのようにして抑えるか、ということに心を砕きました。路面からのショックが乗員に伝わってこない乗り心地を実現しようとしたのです。そのために採用した技術が、ガソリンとハイブリッドの前輪駆動モデルにマウントした新設計のトーションビーム式リア・サスペンションです。
サスペンションの構造や取り付け角度、位置変化などを徹底的にファインチューニングし、さらに、大容量のゴムブッシュを使っています。競合他社も、乗り心地の向上に余念がないですから、この形式のサスペンションでトップをとるつもりで開発しました。
いっぽう、ハイブリッドの4WDの仕様ではリア・サスペンションは、トーションビームではなくダブルウィッシュボーンです。ダブルウィッシュボーン式サスのモデルでは、リアのグリップ力をさらに上げ、ステアリングへの追従性を高めました。
タイヤは、「G」と「S」の17インチがブリヂストン製、上級グレード「Z」には18インチのミシュラン製が装着されています。
Q5「乗り心地のほかにも、とくに重視した性能はなんでしょうか?」
トヨタ自動車開発陣 とくに強調したいのは、視界の確保です。360度にわたって、クルマの周囲を見やすくしようと考えました。
たんにウィンドウの面積を拡大すれば視界がよくなるというわけではありません。後席用ドアのウィンドウ面積をできるだけ大きく確保するとか、ピラーの形状が視界を遮らないようにするとか、そういうことも、ボディ設計の段階から検討してきました。おかげで、“見にくいなぁ”と感じる部分がなくなったと自信を持っています。安心して運転できるクルマになりました。
文・小川フミオ 写真・小塚大樹
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空飛ぶじゅうたん? 足回りフニャフニャなの?