現在位置: carview! > ニュース > 業界ニュース > 【日本車黄金時代】「1990日産プリメーラ(HP10/P10型)」はR32型GT-Rとともに日本車の新たな走りと姿を提示した

ここから本文です

【日本車黄金時代】「1990日産プリメーラ(HP10/P10型)」はR32型GT-Rとともに日本車の新たな走りと姿を提示した

掲載 34
【日本車黄金時代】「1990日産プリメーラ(HP10/P10型)」はR32型GT-Rとともに日本車の新たな走りと姿を提示した

真摯なクルマ作りで欧州のライバルを見事に凌駕した

 最初にボクなりの「近未来のミドルクラス・サルーン」の理想像を紹介しておこう。まず「4+1」の快適なキャビンと十分なトランクスペースを備え、それをできるだけコンパクトな、しかも長持ちするスタイリングのボディで包むクルマである。

【時代の証言_日本車黄金時代】1989年日産スカイラインGT-R(R32型)、ニュルブルクリンク・チャレンジの興奮 by岡崎宏司

 そのスタイリングは、一般的なデザインの魅力のほかに、さらにアクティブセーフティの核になる視界の面で、高度な要素を内包することが欠かせない。大げさな空力付加物をつけずに、可能な限り優れた空力性能の実現も求めたい。

 動質もより高度になってほしい。速く静かで快適でありながら、その中に「走るここちよさ、安全な走りに結びつくような、疲労感のない覚醒効果(あるいは高揚といってもいい)」といった要素を、しっかりと盛り込む必要がある。

 安全性はもちろん大切である。といりわけ一次安全性……優れたスタビリティと制動性能を、その中心に据えたい。スタビリティとしては、そのクルマの最高速度でパニック的な緊急回避を行なっても大丈夫、といった性能が必須だ。

 とにかく、豊かな時代のユーザーが長く満足してつきあっていける内面的な充実度の高さを満たしたうえで、時代を超えて魅力を語れるような美しさ(単純なカッコよさではない)を持っているクルマなら、まさに理想的である。

 現在のサルーンは、この理想像に対してどの程度の水準にまで到達しているのか、プリメーラをテキストにして検証していこう。ボクには、このヨーロッパ戦略車は、理想のミドルクラス・サルーンを目指してように感じる。

塊感を強調したスタイリングは自己を強く主張する

 プリメーラは、どこから見ても「実力派」だ。スタイリングにしても、日本流のディテールにこだわった造形ではない。塊としての主張の強さ、美しさを追求している。こういったデザイン思想のクルマは、これまでの日本にはなかった。だから、マジョリティ層はプリメーラに違和感を抱くことが大いに考えられる。ヨーロッパ車のマネという意見も出るに違いない。確かに、一面ではそうした考え方もうなずける。が、それだけで言葉が終わるようなことはしたくない。

 以前からボクは、日本車のデザインはディテールにこだわりすぎていると感じていた。その結果として、離れて遠くから眺めると印象が弱くなり、存在感が薄くなるクルマが多かった。日本車がアメリカやヨーロッパで強い自己主張を打ち出し、存在感を放つには、ディテールよりも「塊そのものの美しさや強さ」を追いかけるべきである。

 ヨーロッパやアメリカには強い背景がいくらでもある。クルマは走る環境、背景との対比で印象が変わる。100年、200年という長い時間に鍛え抜かれた石造りの建築物は、その前にある物はなんでも、クルマでさえも力のない存在に変えてしまう。それは広大な大地に真っ直ぐに、あるいはゆったりとうねりながら延びているドイツのアウトバーンやアメリカのフリーウェイなどの力感も同様である。走るクルマを、ともすると弱々しい存在に見せる。

 さらにいえば、欧米人は体格や顔立ちも日本人より大ぶりだし、アクセントの強いメリハチのある骨格をしている。明らかに日本人より存在感が強い。そんな人間を見慣れた目で、日本のクルマを見ると、やはり弱さが際立ってしまう。ボクはそう感じている。

 プリメーラは、日欧米の3市場で売る国際車だ。英国工場で生産することを含め、とりわけヨーロッパ市場の価値観を重視している。つまり、強い姿のクルマでなければならない、ということが最初からコンプセプトの核になっていたはずだ。同時に機能性の高さ、効率性の高さ、質の高さ……といった点が、デザイナーの課題になったはずである。プリメーラを眺めていると、直観的に姿の強さと同時に機能の優れたクルマというイメージが伝わってくる。

 キャビンは、4名の大人がくつろいで長距離を走り抜くことができる広さをしっかりと確保している。トランクも4名分の荷物が十分に積み込める。これならヨーロッパのサマーバケーションでも立派に使えそうだ。しかも空力的な高水準は誰の目にも疑いないし、走りがよさそう……というイメージもしっかり伝わってくる。

 つまり、小型サルーンに求めたい機能、効率、性能を、外観から判断しやすいのである。それを典型的に示しているのが、プリメーラのパッケージングの基本である「ショートノーズ&ロングキャビン&キャビンフォワード」だ。キャビンフォワードは、スペースとエアロダイナミクスの高い融合に大いに役立っている。

 実質機能を重視し、切り捨てるところは切り捨てるコンセプトが、プリメーラの姿を説得力のあるものにしているのは間違いない。このあたりの割り切りは、長くヨーロッパの小型車が得意としてきた。プリメーラはそこにズバッと踏み込んでいる。

 誤解しないでほしいが、プリメーラは、機能、効率ばかりを追った無味無臭なクルマではない。ノーズに収まったツインカム16Vユニットは、十分以上にパワフルであり、最強モデルの実力は220km/hにも達する。220km/hを支える足もまた強力そのものである。高いスタビリティを中心としてパフォーマンスは、世界の同クラス車の頂点に立つレベルに達している。プリメーラは、切り捨てるところは切り捨て、奢るところは徹底的に奢ったクルマである。それがデザイン面での押し出しの強さと相まって、見る者にいままでの日本のサルーンにはなかった、強い印象を与える要因になっている 。

R32型GT-Rとともに性能を追求、とくにスタビリティは世界一を達成

 プリメーラの走りは「硬質であり、かつ高質である」。走りの性能でとくに注目すべきは。なんといっても足回りの能力である。
 キミたちは日産の「901プロジェクト」つまり1990年代に世界一の走りのクルマを作ろう、という活動はすでに知っているはずだ。たぶんGT-Rを通じて知ったに違いない。そう、R32型GT-Rは901プロジェクトの見事な結晶であり、ボクたちを驚かせた。GT-Rはただ並外れて速いというというだけではない。その速さを支えるシャシーの性能も、ケタハズレの素晴らしいレベルである。

 GT-Rの陰に隠れがちだが、実はプリメーラもまた、901プロジェクトの一方の主役だ。別名「FF901」と呼ばれているプリメーラは、1990年代のFF車で世界一の走りを目指して開発されたクルマである、むろん見事に目標を達成している。走りの実力は確かなものだ。FF901を誇るにふさわしいハイレベルのクルマである。

 プリメーラもGT-Rと同様、目標としたのは圧倒的なスタビリティだった。プリメーラはリミッターのないヨーロッパ仕様車では220km/hのトップスピードをマークする。文句なしに超一級品のこのスピードを、シャシーは危なげなく支え切る実力を備えている。

 アウトバーンを全開で飛んでいく。4速か5速をホールドしたまま、全開でコーナーをクリアしていく……そんなハードな走りを、プリメーラはケロリとやってのける。こういう走りでの優位性は、これまではヨーロッパ車の独壇場であり、とくにドイツ車が圧倒していた。

 日本車の性能も最近は向上していたが、ドイツの優秀なライバルに追いつくまでにはまだまだ時間が掛かると、誰もが考えていた。ところが、GT-Rはその厚い壁をあっさりとブチ破った。続いてプリメーラも飛び越えてしまったのだから、あっぱれである。

 日本車を操ってアウトバーンやアウトストラーダを駆けるのは、つい5~6年前まではかなり疲れる仕事だった。行く手に遠く、トンネルの黒い入り口が見えると、思わず、あのトンネルに無事に入っていけるだろうか、なんて考えたことさえあった。それほど日本車の高速スタビリティは悪かった。

「スピードの出るクルマ」と「スピードの出せるクルマ」は、まったく別物である。日本車は、スピードは出るが、スタビリティが伴わないクルマが大半だった。だがGT-Rとプリメーラは明らかに違う。こうしたクルマの出現が、日本はもちろん世界のメーカーに刺激を与え、日本車のレベルを一気に引き上げる可能性は大いにある。

 実際、他メーカーの技術者の話の中にでも、この2車の話題がよく出てくる、大きく拍手/賛辞を送りながら、熱い対抗意識を燃やす人が多い。ライバルメーカーの技術者たちの、そんな意欲的な態度に接していると、ボクは本当にうれしくなる。きっと近い将来、日本車の走りのレベルは質的にグンと向上すると、期待が膨らむのだ。

 それにしても欧米のライバル、とくに欧州のメーカーは、プリメーラに果たしてどんな評価を下すだろうか。GT-RはグループAレーシングカーのベースモデルだ。つまり特殊なカテゴリーのクルマといった事情で、まだ気持ちに余裕があると思う。しかしプリメーラは、オペルやフォードと同じ価格帯で大量に売る、文字どおりの大衆車である。それだけに身近なライバルとして脅威を感じるだろう。

 プリメーラに接した欧州のライバルメーカーは「これは大変だ」と思っているのは間違いない。プリメーラは日本だけでなく。欧米のメーカーに必ず「新たな進化への一石」を投じる、プリメーラ効果があるとボクは信じている。

 プリメーラは日本だけでなく、世界的なマーケットを含めて「1990年代サルーンの方向性」を示した、エポックメイクなブランニューカーなのである。いままでの日本の価値観から脱却し、世界的な視野で骨太な骨格を構築した意義は大きい。日本での、販売セールスも好調に推移している。日本のマーケットもいよいよ本物を正当に評価する目を持ったようだ。
※CD誌/1990年8月10日号掲載

文:カー・アンド・ドライバー 岡崎宏司
【キャンペーン】お得に給油!第1・3金土日はガソリン・軽油7円/L引き!(要マイカー登録&特定情報の入力)

こんな記事も読まれています

勢い繋げられずホンダ勢は低迷。マリーニ「改善するために一晩かけて対策をする必要がある」/第17戦インドネシアGP
勢い繋げられずホンダ勢は低迷。マリーニ「改善するために一晩かけて対策をする必要がある」/第17戦インドネシアGP
AUTOSPORT web
F1シンガポールGPのスプリント予選でまたもソフトウェアにトラブル。人的ミスが原因で、一時オーバーテイクモード無効「一部の車両に影響を与えた」
F1シンガポールGPのスプリント予選でまたもソフトウェアにトラブル。人的ミスが原因で、一時オーバーテイクモード無効「一部の車両に影響を与えた」
motorsport.com 日本版
FIAが人的ミスを認める。SQ1再開後にオーバーテイクモードが使用できず、一部の車両に影響
FIAが人的ミスを認める。SQ1再開後にオーバーテイクモードが使用できず、一部の車両に影響
AUTOSPORT web
レクサス「LX」一部改良を発表 スポーティな「F SPORT」はどんな仕様か?
レクサス「LX」一部改良を発表 スポーティな「F SPORT」はどんな仕様か?
くるまのニュース
フェルスタッペンが今回も速い! 過去未勝利の”鬼門”で最速。大逆転目指すラッセル意地の2番手。アロンソ15番手|F1シンガポールGPスプリント予選
フェルスタッペンが今回も速い! 過去未勝利の”鬼門”で最速。大逆転目指すラッセル意地の2番手。アロンソ15番手|F1シンガポールGPスプリント予選
motorsport.com 日本版
F1シンガポールGPスプリント予選速報|フェルスタッペン驚速でスプリントPP獲得! ラッセルが2番手。アロンソはSQ1突破も15番手
F1シンガポールGPスプリント予選速報|フェルスタッペン驚速でスプリントPP獲得! ラッセルが2番手。アロンソはSQ1突破も15番手
motorsport.com 日本版
「これ、ただの工具箱じゃない!」バイク乗りの物欲を強烈に刺激する、鉄の質感が生む最高のマッチング
「これ、ただの工具箱じゃない!」バイク乗りの物欲を強烈に刺激する、鉄の質感が生む最高のマッチング
WEBヤングマシン
奥まった場所に手が届く! デイトナから作業性バツグンの救援メカ「エクステンションクランプツール」登場
奥まった場所に手が届く! デイトナから作業性バツグンの救援メカ「エクステンションクランプツール」登場
WEBヤングマシン
クルマへの積みやすさを徹底追及! プロツールズの1800W発電機が便利すぎる!
クルマへの積みやすさを徹底追及! プロツールズの1800W発電機が便利すぎる!
ベストカーWeb
性能をバランスよく兼ね備えたウルトラカーボンヘルメット〜デイトナからNOLANの最高峰フルフェイス『X-904 ULTRA CARBON』が登場!
性能をバランスよく兼ね備えたウルトラカーボンヘルメット〜デイトナからNOLANの最高峰フルフェイス『X-904 ULTRA CARBON』が登場!
WEBヤングマシン
LEDウインカーカスタムの必需品!「LED対応ウインカーリレー」に2024年以降のHONDA ESS採用車に対応する10ピンタイプが登場
LEDウインカーカスタムの必需品!「LED対応ウインカーリレー」に2024年以降のHONDA ESS採用車に対応する10ピンタイプが登場
WEBヤングマシン
代役出走の卜部和久、FP2で16番手と上々のSFデビューも「もっとやれる。浮かれすぎないように」
代役出走の卜部和久、FP2で16番手と上々のSFデビューも「もっとやれる。浮かれすぎないように」
motorsport.com 日本版
【デイトナ2026 AW】ウインターアパレルを一挙攻勢! 防寒・機能・走りのリアルを極めた新時代ライディングギア誕生!
【デイトナ2026 AW】ウインターアパレルを一挙攻勢! 防寒・機能・走りのリアルを極めた新時代ライディングギア誕生!
WEBヤングマシン
マイナス60度どう耐えた? 秋田で眠る南極点5180km走破のコマツ製“真っ黒雪上車”、そのスゴい発想とは
マイナス60度どう耐えた? 秋田で眠る南極点5180km走破のコマツ製“真っ黒雪上車”、そのスゴい発想とは
乗りものニュース
ファーストクラス気分の贅沢を身近に! ドライバーだけでなく同乗者にも“快適な移動時間”を提供する国産「上級ミニバン」3選
ファーストクラス気分の贅沢を身近に! ドライバーだけでなく同乗者にも“快適な移動時間”を提供する国産「上級ミニバン」3選
VAGUE
メルセデスAMG「G 63 MANUFAKTUR Edition」発売 V8エンジン搭載&ダーククローム仕立ての特別仕様車
メルセデスAMG「G 63 MANUFAKTUR Edition」発売 V8エンジン搭載&ダーククローム仕立ての特別仕様車
くるまのニュース
虫除けスプレーで黄ばみが綺麗に消える。意外な日用品とケミカルで仕立てる外装磨きの裏ワザ
虫除けスプレーで黄ばみが綺麗に消える。意外な日用品とケミカルで仕立てる外装磨きの裏ワザ
Auto Messe Web
通勤・通学ライダー待望の「四角いGIVI」に、ついに本命カラーが降臨だ!
通勤・通学ライダー待望の「四角いGIVI」に、ついに本命カラーが降臨だ!
WEBヤングマシン

みんなのコメント

34件
  • atsu0622
    爆発的に速いわけでもないけど、気持ちよく加速して素直なハンドリングでよく曲がる、運転してて気持ちいい車でしたね。
  • picotan
    当時仕事でレンタカー借りて、やってきたのがこのプリメーラだった。ハンドリングはクイックで、足回りも適度にしっかりしていて日本車離れしててビックリした。自分では60セリカに乗ってたんだけど、差を感じさせられてショックだった。
※コメントは個人の見解であり、記事提供社と関係はありません。

この記事に出てきたクルマ

新車価格(税込)

194 . 0万円 ~ 255 . 2万円

新車見積りスタート

中古車本体価格

49 . 8万円 ~ 398 . 0万円

中古車を検索
日産 プリメーラの買取価格・査定相場を調べる

査定を依頼する

メーカー
モデル
年式
走行距離

おすすめのニュース

愛車管理はマイカーページで!

登録してお得なクーポンを獲得しよう

マイカー登録をする

おすすめのニュース

おすすめをもっと見る

この記事に出てきたクルマ

新車価格(税込)

194 . 0万円 ~ 255 . 2万円

新車見積りスタート

中古車本体価格

49 . 8万円 ~ 398 . 0万円

中古車を検索

あなたにおすすめのサービス

メーカー
モデル
年式
走行距離

新車見積りサービス

店舗に行かずにお家でカンタン新車見積り。まずはネットで地域や希望車種を入力!

新車見積りサービス
都道府県
市区町村