56車種から45車種へ削減! 日産はなぜラインナップを絞るのか?
日産自動車が2026年春に公開した次期型「スカイライン」のティザー映像。伝統の丸型テールランプを核とする印象的なエクステリアデザインを披露し、次世代モデルの登場を予告したことに、多くのクルマ好きは胸を熱くしました。
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しかし、このティザー公開と同じタイミングで日産が発表した新たな中長期商品戦略に目を向けると、ある大きな疑問が浮かび上がってきます。日産は現在、グローバルで展開している商品ラインナップを56車種から45車種へと最適化し、ポートフォリオを大胆に再編・削減していく方針を明らかにしたのです。
この車種削減の背景にあるのは、徹底した収益性重視と開発リソースの集中です。日産は収益性の低いモデルから撤退する一方、残されたモデルに対してはパワートレインの選択肢を拡充し、1モデル当たりの販売規模と商品力を高める戦略を掲げています。さらに、開発リソースを主要な3つの“商品ファミリー”へ集中させることで、グローバル販売の80%以上を効率的にカバーする構想を明らかにしています。
市場環境が激変し、電動化や知能化への巨額な投資が求められる現在の自動車業界において、多くの車種を広く浅く展開し続けることは容易ではありません。今回の日産の決断は、単なる規模の縮小ではなく、“多くの車種を展開する”戦略から“明確な役割を持つ車種へ投資を集中させる”戦略への構造的な転換を意味しています。
そんな限られたリソースをどの車種に注ぐべきか、という厳しい選別の中で、日産はなぜ「スカイライン」を次世代へ残す判断を下したのでしょうか? その答えは、日産が新たに導入したモデルの“分類基準”にあります。
●なぜ「スカイライン」は“ハートビートモデル”なのか?
日産は新たな商品戦略において、各モデルの存在理由を以下の4つのカテゴリーに分類しました。
1=ハートビートモデル:日産らしさ、情緒的価値、歴史、革新性を体現する象徴的なモデル
2=コアモデル:グローバルで規模と安定性を生み出し、事業基盤を支えるモデル
3=成長モデル:新たな市場や需要の拡大を牽引するモデル
4=パートナーモデル:アライアンスや他社との協業によって効率的に市場をカバーするモデル
この枠組みの中で、「スカイライン」は日本市場におけるハートビートモデルに位置づけられました。日産は次期型「スカイライン」について、ドライバー中心、高性能、意のままの走りを実現するモデルになると説明しています。
ここから読み取れるのは、次期型「スカイライン」に求められている役割が、「ノート」や「エクストレイル」といったコアモデルとは根本的に異なるという点です。コアモデルは販売台数を稼ぎ、事業の屋台骨を支える実務的な役割を担うのに対し、「スカイライン」は販売台数そのものを最優先の指標として追求するモデルではないということです。
もちろん“ハートビートモデル=売れなくてもいいクルマ”という意味ではありません。「スカイライン」の真の使命は、日産というブランドが培ってきた技術力や走りのこだわりを、最も分かりやすくエモーショナルな形で世に示すこと。いわば「日産とはどのようなクルマをつくる会社なのか」をアピールし、ブランド全体の魅力を底上げする求心力としての役割を託されたわけです。
1957年から受け継がれてきた「スカイライン」の役割とは?
今回、明確化された「スカイライン」が担う象徴的な役割は、決して今回の新戦略のために後づけされたものではありません。その原点は、1957年に登場した初代モデルにまでさかのぼることができます。
1957年に登場した初代「プリンス スカイライン」は、当時の国産車としては高性能なプレミアムセダンでした。最高速度は125km/hに達し、リアには先進的なド・ディオン式サスペンションを採用するなど、技術面でも際立った存在でした。
以降の歴代モデルにも、「スカイライン」の根底にある思想は一貫して継承。ツーリングカーレースを始めとするモータースポーツへの果敢な挑戦、「GT-R」に象徴される圧倒的な走行パフォーマンス、4輪操舵技術“HICAS”に代表される最先端のシャシー制御技術、そして、高性能エンジンとFRレイアウトを軸としたハンドリングの追求など、「スカイライン」は長年、その時代の日産の走りと先進技術を象徴するモデルのひとつであり続けてきました。
つまり「スカイライン」は、約70年にわたって高性能な走りと先進技術を体現する“ショーケース”として機能してきたのです。
日産は2025年に打ち出した「Re:Nissan」以降、ブランドの鼓動を具現するモデルをハートビートモデルと位置づけています。しかし、そこで定義された情緒的価値や革新性という役割は、実は「スカイライン」が1957年の誕生以来、果たし続けてきた役割そのものでもあるのです。今回の長期ビジョンでは、「スカイライン」が担ってきたその役割をハートビートモデルという枠組みの中で改めて明確にしたといえるでしょう。
●次期型「スカイライン」に日産が求めるものとは?
現時点で、パワートレインの詳細や駆動方式、スペック、具体的な発売時期などは公式に明かされていない次期型「スカイライン」ですが、2026年春に公開されたティザー映像では、伝統の丸型テールランプを想起させるデザインエレメントが披露され、ファンの期待を大いに高めたことは記憶に新しいところ。
しかし、併せて発表された新しい商品戦略では、そうしたスペックの予想以上に、日産自身が次期型「スカイライン」に対し、ドライバー中心、高性能、意のままの走りという明確なキャラクターを公式に定義している点が興味深いところです。
日産は日本市場において、象徴的なモデルと独自の先進技術にリソースを集中させ、ブランド価値を一段と高めていく方針を示しています。その中核を担うモデルとして次期型「スカイライン」が予告されたことは、日産が電動化や知能化の時代においても“走りの日産”というアイデンティティを手放さないという決意表明にほかなりません。
次期型「スカイライン」は、単に歴史ある車名を維持するためにつくられるモデルではなく、最新のテクノロジーを採用しながらドライバーが操る楽しさを現代の技術で再定義する役割を担うわけです。
* * *
日産が商品ラインナップを56車種から45車種へと絞り込む中で、次期型「スカイライン」を残す決断を下した理由は、「スカイライン」が過去の栄光に守られた例外的な存在だからではありません。
車種を減らすということは、ラインナップに残す1台1台に、これまで以上に明確で研ぎ澄まされた存在理由が求められることを意味します。売れるクルマだけに画一化するのではなく、ブランドの個性を際立たせるために何を残すべきか? を突き詰めた結果、次期型「スカイライン」は日産らしさの核心を担う“ハートビートモデル”に選ばれたのです。
1957年の誕生以来、「スカイライン」が受け継いできた“高性能な走りと先進技術を通じて、クルマづくりへの情熱を伝える”という役割。選択と集中が進むこれからの時代だからこそ、かつてないほど大きな存在意義を持つモデルとなりそうです。(VAGUE編集部)
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みんなのコメント
全部捨ててしまってなーんにも残ってないんだもの、スカイラインとフェアレディZはとにかく守るしかないよね。