■なぜドアノブは残り続けるのか?
クルマの快適機能は年々進化しています。そのなかで、スライドドアを採用している車種を見ると、ほぼヒンジドアと同じドアノブを採用しています。
しかし、最近ではスマートキーや足の出し入れの動きで開閉が可能になっていますが、なぜ大きなドアノブを採用し続けるのでしょうか。
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かつてのスライドドアは、主に商用バンの荷室に備え付けられた手動でスライドさせるものが大半でした。
その後、乗用バンとして展開された当初は手動式がほとんどでしたが、ミニバンジャンルが確立された頃には、一部高級モデルなどで電動スライドドア(パワースライドドア)が普及し始めます。
そして、最近では普通車規格のミニバン以外にもコンパクトトールワゴンや軽自動車のスーパーハイトワゴンなどにも電動スライドドアが採用されるなど、定番化した装備になりました。
また、最近ではボディ下部のセンサーにつま先を当てることで開閉するハンズフリースライドドアを各社が採用。
さらにホンダでは、2020年11月にマイナーチェンジした「オデッセイ」にて、ドアノブに触れることなく開閉が可能な「ジェスチャーコントロール・パワースライドドア」機能を日本国内で初採用するなど、ドアやドアノブに触れずにする機能が続々と登場しています。
そうしたなかで、デザイン上で目立つ存在のドアノブが残り続ける理由とは、どのようなものなのでしょうか。国産自動車メーカーの製品担当者は次のように話します。
「確かに最近のスライドドアは、電動で開閉するタイプがほとんどの車種に設定されています。
そのため、電動式の場合にドアノブが不要と考える人もいるかもしれません。
しかし、リアドアは万が一の際に乗員が乗り降り出来るようにしておかなければならないことを考えると、物理的にドアの施錠を解除するドアノブ部分は必要なのです」
※ ※ ※
一方で、電動スライドドアと同様にバックドア(テールゲート/リアハッチ)も電動化が進んでいます。
2020年10月に発売されたスバルの新型「レヴォーグ」では、スマートキーを携帯した状態でリアのエンブレムに身体の一部を近づけると自動で開く機能も採用されました。
スライドドアでは、前述の理由でドアノブが残りますが、バックドアでは完全な電動化が進む理由について、前述の担当者は「バックドアは荷物を載せるのが主なこともあり、物理的な開閉機構を持たない車種が増えています」と説明しています。
■クルマの鍵穴は必要ない存在になった?
電動スライドドアや電動バックドアの経緯は分かりましたが、前席ドアについてはどうなのでしょうか。
ドアノブの存在意義に関しては、スライドドアと同様の考えから残っていますが、最近ではこれまでドアノブで目立っていた鍵穴が見えづらい場所に配置されているといいます。
これは、前述のスマートキーが普及したことが大きな要因とされますが、スマートキーは電池で作動するため、電池残量が少ない場合などでは、施錠・解錠できないこともあります。
そのような場合には、スマートキーに内蔵されているエマージェンシーキーを取り出して、鍵穴に差し込んで使用するため、スマートキーが普及した現在でも多くの市販車にはドアノブ付近に鍵穴が存在するのです。
しかし、輸入車などでは以前から外から目立つ場所に鍵穴が存在しない車種が多く、そのほとんどはドアノブを引いた際の奥側に移設されています。
では、なぜ国産車でも鍵穴を目立たない場所に配置するようになったのでしょうか。
その要因について、マツダの担当者は、次のように話します。
「マツダでは、2019年から投入している新世代モデルの『マツダ3』と『CX-30』から目立たない場所に鍵穴を移設しています。
デザイン面からすると、洗練されたエクステリアデザインを作り上げる際にどうしてもボディ側面にある鍵穴が目立ってしまいます。
実際にエマージェンシーキーを使う機会は滅多にないこともあり、見えない場所に移設しました。
また、スマートキーの場合にはドアノブに設置されるゴムのボタン部分や触れると施錠・解錠されるセンサー部分もできる限り目立たないよう、細部まで作り込んでいます」
※ ※ ※
レクサスなども市販されるほとんどの車種で鍵穴を見えない位置に移設しています。
今後も、ドアの開閉はデザイン面や機能面において、よりスマートなものに変わっていくのかもしれません。
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