マツダのSUVというと、現在は乗用車ベースのクロスオーバーというイメージだけれど、そのマツダが2019年師走、自社の最新SUV3台を用意してオフロード試乗会を開いた。場所は、山梨県河口湖町にある「富士ヶ嶺オフロード」。試乗車両は、おなじ年の秋に発表した「CX-30」と、小改良を加えた「CX-5」、それに「CX-8」の全部で3モデル。
なぜウチの子のCX-3は入っていないのかしら? と、さみしい思いをされているかたがいらっしゃるかもしれない。マツダはロードスター以外のすべてのモデルにAWDを設定している。でも、今回の試乗会の目玉である「オフロード・トラクション・アシスト」なる新しい4WDの機能は、最低地上高が175mm以上のSUV、つまり上記3モデルに与えられたものなのだ。都会派SUVのCX-3は160mmで、15mm足りなかった……。
ここではまず、筆者にとっても初試乗となるCX-30について紹介する。
【主要諸元(XD PROACTIVE Touring Selection 4WD)】全長×全幅×全高:4395mm×1795mm×1540mm、ホイールベース:2655mm、車両重量:1530kg、乗車定員:5名、エンジン:1756cc直列4気筒DOHCディーゼルターボ(116ps/4000rpm、270Nm/1600~2600rpm)、トランスミッション:6AT、駆動方式:FWD、タイヤサイズ:215/55 R18、価格:324万5000円(OP含まず)。CX-30は2019年秋に発表されたマツダの新世代商品第2弾である。第1弾は「マツダ3」。そのマツダ3のプラットフォームを使ってSUVに仕立てた。興味深いことに、ホイールベースをマツダ3の 2725mmから70mm縮めて2655mm としている。4395mmの全長はマツダ3より65mm短く、1540mmの全高はちょうど100mm高い。最低地上高は175mmで、マツダ3は140mm。つまり、最低地上高を上げた分よりも天井を高くして、乗員をアップライトに座らせ、居住空間と荷室空間を確保している。巨匠ジウジアーロによる初代フォルクスワーゲン「ゴルフ」と同じ手法だ。
ボディをコンパクトにしたおかげで、車重がマツダ3比で50kgしか増加していない。CX-30には2.0ガソリンと1.8ディーゼル、それに2.0マイルド・ハイブリッドの「スカイアクティブX」、と3種類のエンジン設定がある。ギアボックスは6ATのほか、ガソリン・エンジンは6MTを選べる。駆動方式はFWDとAWD、両方あるけれど、今回はオフロード試乗会なので、FWDの出番はない。
ボディカラーはポリメタルグレーメタリック。で、われわれの試乗車、「XD PROACTIVE Touring Selection」は、1.8ディーゼルの真ん中のモデルで、真ん中といってもこれより上のL Packageはシートがレザーになるぐらいで、主要装備に違いはない。車両価格は324万5000円。ちなみにレザー・シートはあと6万ほどがんばると手に入る。
フツーのコンパクトカーのように走るCX-30のみ、富士ヶ嶺オフロードの施設内だけでなく、一般道をチョコっと走る時間があった。タイヤはトーヨー・プロクセスR56というCX-30用に開発されたオンロード用のサマー・タイヤで、215/55R18と、マツダ3の215/45R18より穏健な仕様になっている。
WLTCモード燃費は18.4km/L。駆動方式はFWD(前輪駆動)と4WD。搭載するエンジンは1756cc直列4気筒DOHCディーゼルターボ(116ps/4000rpm、270Nm/1600~2600rpm)。重心が高い分、ロール角はマツダ3より大きい。それを抑えつけるのではなくて、ごくナチュラルにロールさせている。最低地上高がマツダ3より35mm高い分をしなやかに動くサスペンションのストローク量に当てている、というような印象で、マツダ3が低重心のスポーツカーだとすれば、こちらはグッとファミリー・カーっぽい仕立てなのだ。
スカイアクティブD 1.8は、116psと最高出力はたいしたことないけれど、270Nmもある最大トルクを1600~2600rpmの低回転域で発生する。たいへん力強いトルクで、しかも5500rpmまで滑らかに回る。ディーゼルなのに上まで回してもトルクが落ちる感がない。6速オートマチックはいまどき6段しかギアがないわけだけれど、トルクがあるから気にならない。
ディーゼル・エンジンのトランスミッションは6ATのみ。ガソリン・エンジンは6ATおよび6MT。まるでフツーのコンパクト・カーのように素直に曲がるのは、「G-ベクタリング コントロール プラス」と「i-ACTIV AWD」なる4WDシステムとの連携による電子制御の賜物であるらしい。
前者はコーナー進入時、ステアリングを切りはじめるとエンジンのトルクをわずかに絞り、前荷重にして曲がりやすくし、脱出時、ステアリングを戻すときにフロントの外輪のブレーキをわずかに効かせて安定性を向上させる。後者のi-ACTIV AWDは前後トルクを状況に応じて最適に配分する電子制御の4WDシステムで、このふたつを協調制御することで、ドライバーの意のままのコントロール性を向上させているというのだ。といっても目に見えるわけでなし。不思議にハンドリングがいい、というのが筆者の印象である。
インテリア・カラーはブルーも選べる。シートカラーはベージュとブラックの2色。運転席パワーシートは一部グレードに標準。ガイシャと思えば高くない一般道をチョロっと走ったあと、富士ヶ嶺オフロードに戻り、施設内の林道コースを走った。最低地上高175mm以上のマツダのSUVのなかで、CX-30はギリギリの175mm。210mmのCX-5と200mm確保しているCX-8とでは、おのずと能力に差がある。なので、オフロードのメニューとしては1番イージーで、最低地上高がある程度あれば、FWDでもいけるかも、という感じのコース設定だった。
サスペンションはフロントがマクファーソンストラット、リアがトーションビーム。悪路走破性を高める「オフロード・トラクション・アシスト」のスウィッチはメーター横にある。マツダが証明したかったのは、キャンプ場の未舗装路程度だったら、CX-30のAWDはラクラク、ということである。
SUV用ではなくて、フツウのオンロード用サマー・タイヤであるにもかかわらず、175mmの最低地上高と現代の電子制御システムがなんとかしてくれる。オフロードの、ちょっとした上り降りでは、ディーゼルの力強い低速トルクはたいへん頼もしい。
最小回転半径は5.3m。全車速追従機能付きACC(アダプティブ・クルーズ・コントロール)や操舵支援機能は標準。電動テールゲートは標準。マツダCX-30は、デザインもマツダ3とおなじぐらいカッコイイし、穴がない、と筆者は思う。もしあるとしたら、試乗車のXD PROACTIVE Touring Selection(4WD)で324万5000円という価格だろうけれど、マツダは広島に本拠を置くガイシャと思えば、むしろお値打ちに感じられるかもしれない。マツダ3のおなじグレードの314万8241円より10万円高いだけ、なのだから。
マツダが最低地上高175mm以上のSUV用に開発した新デバイス「オフロード・トラクション・アシスト」については、別稿のCX-5 & CX-8篇でお伝えしたい。
文・今尾直樹 写真・安井宏充(Weekend.)
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みんなのコメント
自然と調和のとれた良い色ですね。