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希少なエキゾティック・クーペ──新型レクサスLC500試乗記

レクサスのフラグシップクーペ「LC500」に田中誠司が試乗した。いまや貴重な自然吸気・大排気量車の魅力とは?

気づけはほとんどがターボかハイブリッド車へ……

高(好)バランスな大型バイク──新型ホンダ・レブル1100試乗記

6気筒以上のマルチシリンダー車で、自然吸気ガソリンエンジンの新車に試乗するのはいったいいつ以来なのだろう……と、自分のパソコンの履歴を探ってみると、数年前に自動車の記事を書く仕事に戻って以来、いちどもそうした機会がなかったことに気がついた。

エンジンの排気のエネルギーを利用してタービンをまわし、その圧力で空気を詰め込むターボチャージャーが、出力向上だけでなく、低燃費化にも効果を発揮するのが明白になったのはここ10年ほどだ。大雑把にいえば、おおくの量産車は6~8年程度で世代が変わるため、ある程度以上の価格帯のクルマはこの期間にほとんどがターボ車か、ないしは電気モーターが加勢するハイブリッド車になってしまった。

さまざまな技術革新によって、最近のターボ車は圧倒的にパワフルで低燃費になった。その反面、出力のさじ加減は空気と燃料を詰め込むコンピューターの制御次第になり、エンジンそのものが備える特徴が見えにくくなってしまったのは否めない。

どんな回転数や負荷でまわっているときにどんなアクセル操作をしたか、それによってどんな加速レスポンスやサウンドが得られるのかなど、かつて我々がエンジンの“表情”と言っていたものに、ターボ化はフィルターをかけてしまうのだ。

LFAを思い出した理由とは?

低燃費化には一貫してハイブリッド化で対応してきたトヨタ・グループの一員であるレクサスには、V型8気筒のUR型エンジンが自然吸気のまま残されてきた。

元来はレクサス「LS」やトヨタ「ランドクルーザー」のような高級車向けとして作られたこのエンジンをベースに、レクサス「Fシリーズ」へ搭載するため、高性能エンジンの技術で定評のあるヤマハ発動機がトヨタ自動車と共同で改良をくわえたのが、今回試乗する「LC500」にも搭載される「2UR-GSE」型5.0リッター・エンジンである。

LC500のエンジンには、吸気と排気の効率を高めるため、チタン合金製吸排気バルブ、デュアルエアクリーナーなどを採用。圧縮比を高め、クランクシャフトも強度に優れた鍛造とし、水冷オイルクーラーを導入することで、351kW(477ps)/7100rpm、540Nm/4800rpmという高出力を実現した。ベースとなった「LS460」(モデルチェンジ前)に比べると85ps/40Nmの増強が果たされている。

そのほかのことは後まわしにして、このV型8気筒エンジンに触れた印象を紹介してしまおう。LC500のコクピットに収まり、ゼロで下を向き9000が真右となる正面のタコメーターを躍らせると、その途端に甦ってきたのはレクサス「LFA」の記憶だった。筆者はかつて幸運にも、別の雑誌の詳細にわたるテストのため、500km以上にわたりLFAを走らせる機会に恵まれた。

LC500とおなじくヤマハ発動機と共同開発された560psのV型10気筒エンジンは、レブリミットを9000rpmに定め“天使の咆哮”と表現されるサウンドを放ち、「これはまるで走る吹奏楽器だ」と、思ったものだ。余計な機械ノイズを徹底的に排除しつつ、エンジンスピードに合わせて脳髄に飛び込むような甲高いエグゾーストノートと、優しくそれを裏打ちするような低音の響きが渾然一体となって操る人の心を揺すぶった。

LC500はV型10気筒ではなくV型8気筒エンジンなので、同じ回転数でまわっているときの爆発頻度は80%でしかない。最高回転数も9000から7500に絞られているから、さすがにLFAほど甲高い音を発するわけではないが、それでも“これがあのLS460のエンジンを改良したものなのか?”と、耳を疑う澄んだ鋭いサウンドが放たれる。この回転の盛り上がりかた、トップエンドの切れ味が、LFAのそれを目指して作り込まれたことは間違いないだろう。

その背景にあるのはLFAのサウンドデザインを継承する数多の工夫だ。前述した吸排気の改良により、エンジン自体のレスポンスがより鋭くなっているほか、吸気部には「サウンドジェネレーター」と呼ぶ装置を仕込んで室内に吸気音を導き、排気にもバルブシステムを設けて音色と音量をコントロールしている。さらには、スピーカーを通じて不快な低周波ノイズを打ち消す音を発するアクティブノイズコントロールも搭載し、気持ちいい音だけがコクピットに届くのである。

このエンジンに組み合わせられるトランスミッションは、乗用車で一般的なトルクコンバーターを持つ10段オートマチックであるが、LC500のためにとてもスポーティなチューニングが施されている。エンジンの素早いレスポンスを見逃さないようほとんどのシーンでロックアップを働かせているほか、切れ味鋭い変速動作を示し、現代のスポーツカーに主流のDCT(デュアル クラッチ トランスミッション)にまったく引けを取らないと思った。

エキゾティックな外装

高回転・高出力とレスポンスとフィーリングを大切にした、長くからある価値観に基づくパワーユニットを、クールでモダンなボディラインで包むという取り合わせの妙もLC500の魅力である。

左右のリアタイヤがすべての出力を受け止めることを強調するかのように、ボディラインは後部に向けてふくよかさを増す。レクサスのフラッグシップ・ファクトリーである元町工場のLC専用ラインで作られるというだけあって、精緻な作り込みも魅力のひとつだ。

オプション装着された21インチ・アルミホイールは鍛造で作られ、ポリッシュとブラック塗装が施された一種の工芸品で、これとグラマラスなフェンダーラインのコンビネーションはまるでコンセプトカーのよう。品質やデザインからも特別な印象を受けるのだが、そもそもこのタイヤ/ホイールはサイズじたいが実は大きい。

おなじ275/35R21サイズを履くクルマを探すと、メルセデスAMG「GT63」、アウデ「RS7」、ポルシェ「パナメーラ」、BMW「X3 M40i」、ベントレー「コンチネンタルGT」といった具合で、コンペティターとなりそうなBMW 「8シリーズ・クーペ」などは1インチ径が小さいのだ。この独自のバランス感がLC500のエキゾティックさを強調しているのは間違いない。

そのタイヤがランフラット式であるのは、試乗を終えて編集者から指摘があるまで気が付かなかった。急なパンクを防ぐため頑丈に作られているランフラット・タイヤは乗り心地の悪化を招くのが普通であるが、レクサスLC500に関してはまったくそれを意識させない。それほどボディが強固に作られているのだろう。ロードノイズの音量も低めで、室内は穏やかに保たれる。

都市高速を含む一般の交通環境で走らせる限り、LC500のハンドリングはとてもスムーズで、操舵に対してRWD(後輪駆動)車らしく素直な追従性を見せ、とても扱いやすい。

2018年にはステアリングフィールを向上させるため、ステアリングサポートのアルミダイキャスト化や、伸圧独立オリフィスを採用した可変ダンパーの採用、ブッシュ特性のチューニングなど細かな改良が施されたという。

サスペンションのモード切り替えはメーター横のダイアルでコンフォート、ノーマル、スポーツ、スポーツプラスから選ぶことができ、目地段差の多い首都高速などでは、むしろスポーツプラスを選んだほうがボディの動きが引き締まって心地よいが、デフォルトのノーマルモードを選んでおけば基本的に最善の減衰力調整をしてくれるようだ。

ほんとうに贅沢で稀有なスポーツカー

優秀な多段AT、カーボンはじめさまざまな素材を組み合わせて路面から遠い部分を優先的に軽量化した高剛性ボディ、減衰力調整式サスペンション、それに標準装備の4輪操舵システムが組み合わせられ、LC500ではそのエンジンの気持ちよさを存分に堪能する気持ち良いドライビングが楽しめる。ひととおり走らせたところでスペックシートを見て、車両重量が1980kgに達すると知り、驚いた。

その配分は、車検証によれば前が1080kg、後が900kg(前後重量配分55:45)と、思いのほかフロントヘビーである。これくらい前が重いと、FRとはいえ普段からアンダーステア傾向を意識させられるはずだが、ギア比可変ステアリング(VGRS)、電動パワーステアリング(EPS)、後輪の切れ角を制御するDRSを統合制御するLDH(レクサス・ダイナミック・ハンドリングシステム)は、自然で軽快な操縦性を作り出してみせる。

ここに、トヨタ/レクサスの電子制御技術のすごさと、量産コンポーネンツをベースにスポーツカーを作ることの限界、の両方を見る気がした。元来高級車向けに作られたUR型V型8気筒エンジンと、その直後に搭載される10段トルコンATの組み合わせは、やはりどうしたって軽量化に限界があるはず。本来なら、LFA(ちなみに1480kgで前後重量配分48:52)や日産「GT-R」、近年のフロントエンジン・フェラーリ各車のように、ギアボックスを後輪の間に置くトランスアクスル・レイアウトを採用したかったはずだ。

いまや貴重なすばらしいフィーリングをもたらす自然吸気V型8気筒エンジンを、ナチュラルなFR車らしいハンドリングやコンセプトカーのようなスタイリングとともに楽しめ、なおかつ非常に快適でもあるLC500は、ほんとうに贅沢で稀有なスポーツカーである。

BMW M850iクーペの、重い剣を振りまわすような問答無用さと、LC500の研ぎ澄まされた日本刀のようなフィーリングにも、やはり明確な個性の違いを感じて面白い。

いまどきはスポーツクーペといえど、ハイブリッドやディーゼルもあるなかで、経済性や優遇税制などには目もくれず、「おれはこのエンジンがいいのだ!」と、豪気に大枚を叩けるオーナーの生き様じたいにも、ぼくは憧れてしまう。

文・田中誠司 写真・安井宏充(Weekend.)

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