2020年1月10日、ゼロ・エミッション走行も可能な新型ロンドン・タクシーの日本発売が発表された。LEVC (London Electric Vehicle Company)が2018年から製造している最新プラグイン・ハイブリッド・モデルで、車両価格1120万円の高級車だけれど、東京都で緑ナンバー登録した場合、各種補助金の総額が364万円となって、756万円で購入できるという。
「TX」と呼ぶ新型タクシー、特筆すべきは、車イスのアクセスがものすごくよい点だ。発表時、会場の明治記念館まで車イスの青年がTXを見学するために来ていた。なんと青森から来たという。それも日帰りで!
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【主要諸元】全長×全幅×全高:4855×1874×1880mm、ホイールベース2985mm、車両重量2330kg、乗車定員6名、エンジン1477cc直列3気筒DOHCターボ(82ps/4000rpm、255Nm/1200~4000rpm)+モーター(120kW/255Nm)、トランスミッション電気式無段変速機、駆動方式RWD、タイヤサイズ215/65R17、価格1120万円(OP含まず)。彼の車イスは電動で、それゆえ背の高いタイプだったけれど、TXの車イス用スライド式スロープを使えば、介護の人の手を借りなくても、ほぼひとりで乗り込めるのを彼はみずから実践して確かめ、大いに喜んでいた。日本のタクシーでは絶対無理だし、ミニバン・タイプでもこう簡単にはいかない、ということを青年は語った。
軽量で、250kgの重量に耐えるこのスロープ、全幅714mmで長さが1280mmあり、ふだんはTXのフロアに格納されていて、片手で簡単に出し入れできる。おりしも、東京オリンピック・パラリンピック2020の年である。こういうものが世界にはあるのを日本国民が知るだけでも大いに意味があるのではあるまいか。
スロープは全幅714mm、長さ1280mm。TXのスロープは車イス利用者がひとりでも乗り込めるよう設計されている。広大な室内TXがものすごくでっかいことは確かだ。全長×全幅×全高は4855×2036×1880mm、ホイールベースは2985mmある。日本で使うにはデカすぎるかもしれない。でも、そのデカさを目一杯生かして室内が広い。
運転席が1列目だとすると、その1列目には助手席がなくて、荷物置きになっている。2列目は、ロンドン・タクシーの伝統にのっとり、後ろ向きに座る、折りたたみ式シートで、3席ある。3列目はリア・アクスルの真上あたりに3席並んでいる。最大6人が向かい合って乗れる。
インテリアには、ボルボと共通パーツも多数ある。3列目は3人がけ。2列目未使用時、3列目のレッグスペースはかなり広い。3列目に座ってみると、レッグ・ルームは畳が敷けそうなぐらいある。畳は江戸間でも1畳88×176cmなので、実際には敷けないのですが、斜めにしたら入るかもしれない……。
ということはともかく、TXはでっかくて広くて、しかもロンドン・タクシーの伝統にのっとり、驚異的に小まわりが利く。回転半径が4mちょっとしかない。前輪が90度近くまで切れる。だから、ロンドンで使えるのだろう。東京で使えないことがあるだろうか。
最小回転半径は4012mm。TXの機構的な特徴は、タクシー用に開発されたアルミのフレームを持っている点である。スチールでつくるより30%軽いというそのフレームは接着剤でくっつけられていて、そのフレームに樹脂製のボディ・パネルを貼っている。もし、ぶつけた場合は、パネルごと交換する。そのほうが修理時間を短縮できるからだ。
ホイールベースの前半分のフロアにはリチウム・イオン電池が敷き詰められている。こんなにでっかくて、バッテリーをいっぱい積んでいるのに車重が2330kgと、絶対的にはともかく、比較的に軽量に仕上がっているのはアルミ・フレームのおかげだろう。
ボルボ製エンジンを搭載フロントのボンネットの下にはボルボの1.5リッター直列3気筒ガソリンターボ・エンジンを積んでいて、最高出力67kW(82ps)/4000rpm、最大トルク255Nm /1200~4000rpmを発揮する。ただし、エンジンはあくまで発電用で、直接駆動はしない。後輪を駆動するのはリアに置かれた電気モーターで、ピュアEVとして最大130km走行できる。燃料タンクは36リッターで、発電しながら500kmの距離をカバーできるので、合せて630km の航続距離をもっている。
搭載する発電用エンジンは1.5リッター直列3気筒ガソリンターボ。静止状態から100km/hまでに要する時間は13.2秒。最高速度は128km/h。給電口はフロントグリル近くにある。充電は国内基準のチャデモが使えるようになっており、80%までの急速充電なら30分程度、フツウの充電だと約8時間かかる。
来日したヨーグ・ホフマンCEOによると、2018 年1月から生産が始まったTXは、すでに3800台以上が路上を走っている。のべ9500万マイル(約1億5295万km)走行し、従来のモデルに較べて燃料消費を1750万リットル削減したとのこと。
英国のTXドライバーは燃料コストを1週間あたり100ポンド(約1万4200 円)、生産されたTX全体で1700万ポンド(約241億4000万円)削減したという。さらに従来モデル比、これまでで3万トンのCO2削減を達成した、と胸を張った。
ロンドン・タクシーの電動化メリットを述べるヨーグ・ホフマンCEO。LEVCは、ロンドン・タクシーを製造していたLTC(London Taxi Company)を中国のジーリーが2013年に買収したことに始まる。ジーリーからの投資を得たLTCは、次世代EVタクシーの開発を発表してイギリス政府からの投資を引き出し、コヴェントリー市の協力を得て、2017年3月にイギリス中部のこの工業都市に新工場を構えた。社名をLTCからLEVCに変更したのはおなじ年の7月である。EVの文字を入れてEVカンパニーであることを打ち出すと同時に、タクシーのみならず、商用車をつくる計画も公表した。
タクシーのTXの生産開始が2018年、TXベースの電気商用バン、LCV(Light Commercial Vehicle)の発表が2019年で、2020年から納車を開始する。LCVの日本導入は未発表ながら、eコマースの隆盛により、1トン積み商用バン、わけても環境にやさしいEVのそれの需要が今後伸びていくのは、ここ極東でも容易に予想できる。
LECVはロンドン・タクシーの製造会社として70年の伝統を持つと同時に、生まれたての若いEVカンパニーでもある。2019年のTXの販売台数は2507台で、史上最高を記録した。コヴェントリー新工場は年産2万台の能力がある。それゆえ、2019年、10%だった輸出を2022年には60%にまで増やす計画で、そのためにEUはもちろん、中東、そして日本を含む世界13カ国で販売する。
日本国内にはタクシーが19万台も走っている。そのうち5万台が東京にある。TXを輸入・販売するLEVC JAPAN(代表取締役:小原学)は、この5万台のうちの5000台を占めるプレミアム・セグメントの20%を獲得したいと考えている。初年度の目標販売台数は100台。メルセデスのSクラスやBMW7シリーズ、あるいはレクサスLSなどのハイヤーがライバルで、送迎需要を狙うという。
納車は2020年6月から開始となる。バッテリーは水冷式で耐久性が高いそうで、5年&走行距離無制限の保証がつく。
ホフマンCEOによると、ロンドン、パリを走るタクシーは2万台にすぎない。5万台の東京はビッグ・マーケットだという。なんでその東京から、こういうのが出てこないのかなぁ。というのは筆者のつぶやきです。ひとに優しく、ってことが新しいビジネス・チャンスになっているのに。
文・今尾直樹
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